王都で 85
一言告げて、空き地に三階建ての家を設置すると、目玉が飛び出そうなほど驚いていた。何故か、リリーやフォル達もである。
「な、なんと!」
「このような家が……っ」
真四角のビル型の住居は珍しかったのか。皆が驚きの声をあげていた。
「一階がリビングやトイレ、二階が水回りと寝室、三階も寝室、書斎、ウォークインクローゼット。後は、屋上も使えるくらいかな」
家の中を案内しながら説明をすると、皆は目を白黒させながら屋内を見て回りつつ、返事をする。
「み、見たこともない様式ですし、すごい厨房まで……」
「こ、この冷える箱は氷の魔術具ですか? まさか、常に魔力を流し続けている、と?」
エボスとフロンスが大騒ぎしながら室内を見てそんなことを言っていた。それらに簡単に答えつつ、部屋の割り振りを決めて就寝となった。
トイレは二つあるが、浴槽は一つだ。部活の合宿のように、風呂の時間割を作って入浴をした。どうやら、皆は電気を魔力と考え、家電のことを魔術具という魔力で動かす道具だと理解したようだが、説明も面倒なのでそのままにしておく。
「今日は結構疲れたねー」
ベッドに腰かけそう口にすると、ミドが頷く。
「はい。色々ありました……私は疲れただけですが、ソータ様は大丈夫ですか? その、あんなにすごい乗り物や、地下の町まで作って……」
「ん? ああ、大丈夫だよ。まだまだ余裕がありそうだから」
そう答えつつ、タブレットに表示されているCPを確認する。やはり、長距離の地下線路がかなりのCPを消費しているようだ。残量は十八万八千ポイント程度にまで減っている。地下鉄駅は安いものを設置しているし、地下街の設置消費ポイントもそこまでではない。
だが、地下道と線路を伸ばしていった為、合計で一万四千ポイント以上も使ってしまったようだ。あ、人口が少し増えてる。もしかしたら、人口突破ボーナスとエリア拡大ボーナスには足りなかったが、コバの村も俺の町扱いになっているのか。
「……王都までの距離次第だね。とりあえず、今日は眠ろうか」
そう口にして、ミドとカラビアを見る。すると、カラビアはもうベッドで横になって寝息を立てていた。
「すみません……私も、疲れていたみたいです」
「うん、おやすみ」
目を擦りながら謝るミドに笑いつつ、就寝の挨拶をして横になった。すぐにミドの寝息も聞こえてくる。何となく、二人が一緒にいるということで落ち着ける気がした。
気が付けば、起床のアラームが鳴り、目を開ける。いつ寝たのかも気が付かなかった。
「あ、おはようございます!」
上半身を起こすと、ミドから元気よく挨拶をされた。周りを見ると、もうカラビアの姿もないではないか。
「おはよう。二人とも今日は早いね」
返事をしつつ、洗顔に向かう。顔を洗って身だしなみを整え、キッチンに顔を出してみる。すると、既にミドとカラビアが朝の食事を作ってくれていた。
俺が教えた卵焼きと肉の薄切りである。本当はベーコンを食べたいが、それは家で実験中の為、ここには無い。とはいえ、美味しいお肉と卵焼きは嬉しい。
「ありがとう。美味しそうだね」
そう言ってダイニングテーブルの前に座ると、ミドが水まで注いできてくれた。しかし、そこまでしてくれなくても、という気持ちもある。
「ありがとう。俺のことは気にせず、先に食べててよかったのに」
「いえ、ソータさんこそお疲れでしょうから、ゆっくりしていてください」
「ぼ、僕も、料理できるようになった」
「そうだね。ミドもカラビアも、ありがとう」
仲良く三人で食事を始める。その時、扉を開ける音がした。
「あ、皆様。もう起きられていたのですね」
現れたのはフォルだった。その顔を見て、気が付く。
「そういえば、今日はリリーさん達と一緒の家で寝たんだった」
そう呟くと、フォルが何故か物凄く慌てる。
「そ、ソータ様!? そ、その、本当に申し訳ないことですが、お、王女であるリリー様と同じ建物で過ごしたという言い方は……」
フォルがそんなことを言っていると、後ろからリリーが顔を出した。
「フォル。良いのです」
「り、リリー様!? し、しかし……」
慌てふためくフォル。対して、リリーは少しだけ頬を染めて、こちらを上目遣いに見た。
「わ、私は、誤解されても、構いませんし……」
リリーがそう口にすると、フォルは口を大きく開けて愕然とした。面白い顔である。
「まぁ、良く分からないけど、とりあえず朝食を食べていく? ミドとカラビアが美味しい朝食を作ってくれたんだよ」
そう告げると、リリーは目を瞬かせた後、困ったように笑いながら頷いた。
「おお、美味いですな!」
「うむ、優しい味わいですぞ」
「美味しいです」
ラウムとフォル、リリーからも良い感想をもらい、ミドとカラビアが顔を見合わせて微笑みあった。ミドは美少年、カラビアは美女である。そんな仕草も絵になる二人だ。
皆で食事を楽しみ、家から出てエボスの下へ向かった。フロンスは既に村の外に騎士団を集めており、準備を整えている。
「リリー王女。賢者様。此度は本当にありがとうございました。ウイルクへの旅路もお気を付けてくだされ」
エボスにそう言われ、リリーは笑顔で頷く。
「我らにはソータ様が付いております。ご安心を。それでは、また」
エボスもリリーもとても簡単な会話だけで別れの挨拶とした。まぁ、地下鉄を知ったから、すぐにまた会えると理解できているのだろう。
そんなこんなで、リリー達にフロンス、部下の騎士達を連れて、ウイルクの町、そしてゼンドの町を経由して王都へと向かった。
それぞれの町で地下街を設置し、地下鉄駅を線路で繋ぐ。予定通り、ウイルクの町まで一週間。途中で六つの地下住居を作りながら移動し、次のゼンドの町にも六日間の旅路となった。その間に、マルサスは張り切って魔獣を狩ってくれたので、食料は余るほど用意されていた。
それらを全ての町、村に配りつつ、王都へと到着する。




