コバの村2 83
「えき、とは?」
「な、なにが起きたのでしょう」
遅れてきたラウムとフロンス、エボスも困惑した様子だった。まぁ、ちょうど良いので全員を連れて移動する。
地下鉄の駅は小型である。上りと下りの二面四線と書いてあるが、その辺りは良く分からない。タブレットの画面には斜めから見下ろすような形でイラストが描かれているだけなのだ。電力の消費が大きく増加する為、風力発電機も追加で設置しておいた。
「こ、これは……?」
「不思議な、空間ですな」
「ち、地下道でしょうか? しかし、歩き難そうで……」
線路が敷かれた道を見て、リリー達は不思議そうな顔をした。エボスはまだ混乱の極みの中にいるが、もう一度耐えてもらいたい。
そんなことを思っていると、駅の中に風が吹き出した。どうやら、稼働したらしい。
「お、動き出した。それじゃ、一、二時間くらいかかるだろうから、その間に住民登録をしようかな」
そう呟き、タブレットを操作する。
「あ、エボスさん」
「は、はい!?」
エボスに声を掛けると飛び上がって驚かれた。そんな状態のエボスに申し訳ない気持ちになりつつ、タブレットの画面に指を置く。
「地下街と地下鉄駅の管理者にエボスさんを設定しておきます。もし可能なら、後二、三人は登録しておきたいので、後で誰か紹介してくださいね」
「は、はい……? えっと、私が、何ですかな?」
眉根を寄せて情けない顔をするエボスに苦笑しつつ、フロンスに顔を向けた。
「あと、城塞都市バシムの地下鉄駅の管理者はセーレさんとフロンスさんにしてるので」
「は?」
フロンスが首を傾げるが、苦笑して手を振っておいた。どう説明して良いか分からないのだ。実際に見てもらった方が良いだろう。
「それじゃあ、待つ間に村の状況を教えてもらおうかな」
そう口にして、気持ちを切り替えてエボスから村の状況を聞き出す。どうやら、この村はバシム以上に食料なども切迫しているらしい。一部の村人はバシムや王都に向かって旅立ってしまったようだ。
このままでは、いずれ飢え死にだ。村人たちはそんな厳しい環境で生活を続けていたようだ。それは大変だ。食料を早く持って来よう。
リリー達とエボスの会話を聞きつつ待っていると、やがて微細な振動が感じられた。お、おう到着か。
そう思っていると、徐々にリリー達も異変に気が付き始める。
「な、何か来ますぞ……っ!」
「うむ!」
ラウムとフロンスが剣を構えながら線路の奥を睨む。
「あ、危ないから、白線までお下がりくださーい」
「は、はくせん?」
「この、線のことですか?」
注意すると、ラウムとフロンスはこちらへ後退った。リリーや俺たちを守るように立ち、剣を構えている。
そして、駅に電車は到着した。ブレーキ音と線路を走る電車の音。丸みのあるデザインの電車がホームに到着し、停車する。車両の数は二が最安値だが、八両にしておいた。ちなみに、車両を増やしたり、発着する電車の台数を増やすと、その分CPとは別の予算という項目から費用が削られていく。
八両の電車の扉が同時に開く。その光景を目を見開いて見ているリリー達。いや、ミドとカラビアも同様だ。
「よし、運行できたね。電力もぎりぎり足りそうだ」
ホッとしつつそう告げると、リリー達が電車を指差しながら振り返った。
「な、ななな、なんですかコレは?」
「ま、魔獣には見えませんが……」
「まさか、ソータ様の作ったゴーレムでは!?」
皆から一斉に質問が相次ぐが、まあ、乗れば分かるだろう。
「電車という乗り物だよ。ほら、皆で乗って移動しよう。待ってたらまた行っちゃうから」
時間がないので、無理やりリリー達を電車の中に詰め込む。ゲームでは住民達は即座に満員まで乗って移動していたので、どれくらいホームに滞在してくれるのか分からない。
とりあえず、急いでおけば間違いないだろう。
そう思って、リリー達や護衛の騎士まで電車に乗せたのだが、全員が乗り終わるのを見計らったかのようにドアが閉まった。
そして、電車は元来た道を戻る。
「うわぁ!?」
「う、動いたぞ!?」
騎士達も慌てている。
「地下鉄だから、外の景色は見えないからね。皆さん椅子に座ってゆっくりしましょう」
そう言って、出入口近くの座席を一番乗りでゲットした。普通の電車であれば特等席である。その隣にミドとカラビアも座る。
「そ、ソータ様。これはいったい……」
リリー達は対面に座り、そう質問をしてきた。その隣にはフォルとラウム、フロンス、エボスの順番だ。
騎士達は周りを警戒するようにして立っていた。
「これは電車という乗り物だね。大量の人や荷物を高速で運んでくれるんだ。これなら、例え帝国が攻めてきても、地下を移動して逃げることができるでしょ?」
そう告げると、リリー達はポカンとした顔になり、電車の中を見回した。
「真っ暗ですが、確かに、すごい速さで動いている感覚があります」
「これは、まさか王都に向かっているのですか?」
「ゆ、揺れが気持ち悪く……」
皆の反応は意外と悪いものではなかった。いや、騎士の一人が乗り物酔いを発症してしまったようだが、城塞都市バシムに到着すれば大丈夫だろう。
そう思って待っていると、すぐにバシムに到着した。なんと、所要時間一時間弱だ。
「ど、どこかに到着したようです!」
「あれは、同じちかてつえきというものでしょうか!?」
フォルとラウムが叫ぶ。それに頷き、片手を挙げて皆に手のひらを見せる格好で口を開く。
「このまま待機して。動かなければ、すぐに扉が閉まると思うから」
そう口にすると、一分ほどで扉は締まり、再び電車が動き出した。
うむ。カーブの少ない道だったから、電車は殆どの区間を最高スピードで駆け抜けたのだろう。物凄く速い。
「今さっき停まった場所が城塞都市バシムで、今は死の森に向かっているんだ」
そう答えると、リリー達は目を丸く見開いて固まった。
「死の森、ですか? もしかして、家に?」
「あ、マルサス兄様に会いに戻る?」
ミドとカラビアがそう聞いてきたので、それぞれに答える。
「一先ずは死の森の入り口。マルサスさんが待つ地下駐車場の傍だね。反対側に駅を作ったから、地下道を抜ければマルサスさんの家に行けるよ」
「会いたい」
「良いね。一緒に行こうか」
無邪気なカラビアがマルサスに会えることを喜ぶ。しかし、ミドは神妙な顔で電車を見回した。
「……これは、間違いなく帝国に狙われます。あまりにも有用過ぎますよ」




