ハーフダークエルフの存在 62
「ミド。一緒に行きたいって人達が来てるんだけど、一緒に行動して良いかい?」
マルサスが去ったのを確認して、ミドにも確認をしてみる。マルサスが配慮してくれたとしても、ミドが嫌がれば連れて行くという選択肢はないのだ。奴隷になっていた記憶があるのだから、断られる可能性の方が高い。そう思ったが、ミドはすぐに俺の言葉に頷いた。
「……困っている方々だと聞きました。その、ソータさんが大丈夫だと思える人達なら、きっと大丈夫なんだと思います」
ミドは少しだけ不安そうにそう言うと、こちらの目を真っすぐに見た。その信頼に、思わず笑みがこぼれる。
「そうか」
「はい」
それだけのやり取りをして、すぐにリリー達に振り返る。
「皆さーん。こっちにどうぞー」
笑顔で手を振り、三人に声を掛けた。すると、三人はすぐにこちらに向かってきて、リリーの姿を見て驚く。
「え? ダークエルフ、ですか?」
「なんと、珍しい……」
「私は初めて見ました」
三人はミドの姿を見て、驚き、立ち止まる。その姿を見て、ミドは傷ついたような表情になった。いや、恐がっているのだろうか。
「俺の家族なんだ。ミド・ラーシャル。宜しくお願いします」
動けないでいるミドの代わりにそう言うと、ミドは慌てて頭を下げた。その姿を見て、リリー達は一度顔を見合わせ、すぐにミドのそばに歩み寄る。
そして、姿勢を低くして声を掛けた。
「初めまして、ミド様。私はリリー・アン・セルディカと申します」
「私はフォル・カロルと申します。ミド様、宜しくお願いいたします」
「ラウム・オティスである。リリー様の護衛をしておる」
三人が礼儀正しく挨拶をすると、ミドは驚いて背筋を伸ばし、再び一礼した。
「み、み、ミド・ラーシャルです。宜しくお願いします」
ミドがそう挨拶をすると、リリー達は優しく微笑んだ。
「……やはり、エルフの方は美しいですね」
「えぇ、これは絶世の美女になるでしょうとも」
「うむうむ」
と、三人がそんなことを口にしているので、思わず笑ってしまう。
「ははは。ミドは男の子ですよ」
そう告げると、三人は目を丸くして振り向き、すぐにミドへ視線を戻した。
「そ、そうなのですか」
「これは、将来は恐るべき美青年に……」
「うむうむ」
驚く三人の反応が面白い。もう少し様子を見ていようかと思っていたが、この感じであれば大丈夫だろう。もしかしたら、セルディカ神聖王国はダークエルフへの差別などはないのかもしれない。しかし、一応、ミドがハーフダークエルフであることは伏せておこう。
そう決めてから、早速森の奥を指差した。
「それじゃあ、急いで奥へ行こうかな。皆さんは、本当に森の奥へ付いてきますか?」
確認すると、リリー達は真剣な顔で頷く。
「はい。ソータ様のご協力を得なくては、我々は帰れません。どこまでもお供します」
「その通りです」
「どこまでも付いて行きますぞ!」
三人が揃って揺るぎない決意をにじませるので、ならばと頷き、森の中へと一歩を踏み出した。マルサスが近づく魔獣だけでなく、周辺の警戒もしてくれているなら、歩く速度はゆっくりで問題ないだろう。森の中を先頭を切って進んでいくと、後ろでミドが小さく声を掛けてきた。
「あ、あの……マルサスさんは?」
その言葉に、笑って答える。
「先に行って、魔獣を討伐してくれているみたい。でも、一応周りの警戒もしていてね」
「わ、分かりました」
そう返事をしつつ、ミドは嬉しそうにしていた。マルサスの不器用な優しさが感じられて嬉しかったのだろう。それに、マルサスが道の先にある脅威を取り除いてくれたのなら、余程でなければ安全になっているはずだ。
だから、俺とミドは安心して進んでいけた。ただし、リリー達は違う。
「し、死の森と呼ばれる場所にしては、静かですね……」
「ま、魔獣の気配も、まったく……」
「……もしや、これは賢者様の御力では?」
三人は不安そうに周囲を見回しつつ、後を付いてくる。ここでネタばらしをすると、必然的にマルサスという人物は何者かという話になってしまうので、あえて何も明かさずに付いてきてもらうことにした。
山あり谷ありだけでなく、崖あり、クライミングポイントありの過酷な森の中の道だ。個人的には魔獣がいなくても十分きつい環境だが、他の人たちにとっては魔獣だけが気になるポイントらしい。というか、王女さまであるリリーも難なく付いてきているのが悔しい。
結果、五人での移動だが、前回以上のペースで森の中を進めている。本当ならもう少し進めそうだが、途中、前回も休憩に使った水辺があったので、今回はそこで一泊することにした。
「今日はここで一夜を過ごして、明日の早朝に移動を再開します」
そう告げると、ラウムが背負っていた大量の荷物を下ろし、大きく頷く。
「承知しました! それでは、野営の準備を……」
そう言って色々と準備しようとするラウムに、待ったをかける。
「ああ、いや、今回は地下に家を作るから……ちょっと待っててね」
それだけ告げて、タブレットを指で操作する。木々を撤去し、最低限の道路を設置。そして、その道路に併設して地下型の住居を建てた。地響きが鳴り、瞬く間に住居が完成する。森の外の家まで送電線と上下水道を敷設してあったので、その接続は殆どCPは掛からなかった。
「よし、家が出来たし、休もうかな」
皆を振り返ってそう言ってみたが、リリー達は唖然としたまま固まっていた。もう慣れているミドだけが苦笑しながら頷いたのだった。




