ようやく大公様とご対面なのだが、なかなか人生と言うのは上手くいかないらしい。その壱
前回までのあらすじ、
幼なじみの黒魔術に付き合って女にさせられた挙げ句、異世界に飛ばされてしまってから約1年の月日が過ぎた。そんなある日、忍がデブったことで女王様をぶっ倒すことを思い出した俺は王城で王族のお姫様を軽くイジめて、本格的にイジめることに決めたので東方に来た。
「宿泊費の方ですが、100万ダラーになります」
ま、マジで100万ダラーにしやがった……。
なぜ20万のはずがその5倍の100万を支払うように言われているのかと言うと、おそらく昨夜の晩飯で寿司を追加して作らせるように頼んだ時に勢いで『よし!たとえ100万でも構わんから5人前作らせろ!』と言ってしまったからだろう。
だがしかし、こんなボッタクリを言われて『しょうがないにゃ~……』と言うこのミコト様ではない。むしろこう言ってやるさ。
「ふっざけんじゃねぇよ!!そんなに払えるわけないだろ!!責任者を出せ!!」
「いえ……あの……」
ちなみに俺が怒鳴りつけたのは今、この宿屋を手伝っているパティである。
全く、少し油断するとすぐこれだ。
金銭感覚がオカシイ。いったいどんな教育を受けたのだろうか?
親の顔が見てみたい。
忍の両親には会ったことがあるが、あれは酷かった。
忍みたいな子になるわけだ、と納得してしまうくらいに酷かった。
「マスター、ここは大人しく100万ダラーを払う方が良いかと」
「ほぅ?そりゃなぜ?」
「金などいくらでもルーティトリルディ大公から搾取すれば良いだけの話。それにここで器の大きさをアピールすることで世間評価を上げることになるかもしれません」
「一理あるが、通常の5倍だぞ?」
「発想の逆転です、通常の5倍も払うような御方なのだと」
……確かに理に適っているのかもしれない。
ここで通常の5倍を払えば噂になるのかも。
『ハワカワ男爵は羽振りが良い』だの『ハヤカワ男爵は御捻りをはずむ』だの。
そうなれば俺の信頼も上がる。つまりこの国の侵略の達成率も徐々に上がると言うわけである。
うむ、悪くない展開だ。
取らぬ狸の皮算用な気もするが。
「仕方ない、今回は特別だからな?」
「はい、以後気をつけさせてもらいます」
こうして軍資金1000万は900万になった。
移動費?すでに考慮されてるだろ?
たぶん、きっと、絶対。
▽
というわけでチェックアウトしてルーティトリルディ大公の屋敷に向かった。
この辺境のような町では大公様のご立派な屋敷と言うのは有名で、わざわざ丘のような局地的に高い場所に建てられていた。バカと煙は高いところが好きと昔の人が言ったらしいが、これはつまり高いところが好きな奴はバカと言って良いのだろう。
あ、でもこれを胸はって主張したら登山家に殴られそうだな。訂正して……でも登山家ってバカそう、ステレオグラフだけど。
「失礼、こちらはルーティトリルディ大公の屋敷ですか?」
俺はこのパーティを代表して屋敷の門番に質問する。
「肯定です」
事務的な返事をする門番、どうやらこの手の質問には慣れている様である。
「こちらで格闘勝負で賭博をやっていると聞いたのですが本当ですか?」
「肯定です。しかし、賭博をしたいのならば……」
「いや、そうじゃない。そういう目的ではない。実は私は男爵、アポイント無しですが大公殿に話がしたいのですが?」
「大公様に?少々お待ちください」
門番が屋敷内に入っていった。この対応をすると言うことは大公様はご在宅のようである。都合が良い。
待つこと十数分。
「お待たせしました、男爵様。こちらへどうぞ」
先ほどの門番が屋敷内に招く。うむ、順調である。
豪華絢爛な内装の屋敷を俺と忍はコンクリートジャングルに初めてやって来た田舎者のような場違い感を全身から垂れ流しながら歩いた。マナー教室にでも言っておけば良かったな、少なくとも数学よりは役に立ちそうだ。因数分解とかって人生の何処で役に立てれば良いのだろうか?
巨大な廊下を歩くこと数分(ていうか数分歩かないといけないって構造ミスじゃね?日常生活がトレーニングじゃね?)客間に通される。
「しばしこちらでお待ちください、大公様はもう少し時間がかか……」
「お待たせしました、男爵殿。ところでどちら様で?」
低身長の小太りなオッサンが綺麗な礼装を纏って客間にやってきた。どうやらこのオッサンがルーティトリルディ大公のようである。
「どうもはじめまして、私は早川ミコト、爵位は男爵でございます」
「これはこれは、あなたがハヤカワ男爵ですか。噂にたがわぬ美人でございますね」
気持ち悪いんだよ!!
オッサンにそんなこと言われても嬉しくないんだよ!!
「それで?今日はどのような用件で?」
アポ無しで屋敷にやって来た無礼を詫びるべきだろうか?
まぁいいや、そんな細かいことは。本題だけ言おう。
「実は私の従者を格闘勝負に参加させてもらいたいのですが?」
「……構いませんよ、ではその方の記章を拝見させてもらってもよろしいですか?」
…………は?
「なにか問題が?」
問題しかない、記章と言うのは貴族の身分証明書みたいなものだったはず。
それを持っているのは俺以外には居ない、忍はもちろん参戦させるつもりだったダナーは言い方は間違っているかもしれないが遺跡に住んでいたわけである、記章を持っている訳がない。
パティが持っている可能性もあるのだが、こいつは戦力外である。そしてミシェルだがミシェルに闘わせるなんて論外である。
「……わ、私は異世界人なので記章の存在は先日知り、身内も記章を持っていないのですが……」
「そうですか、ただ女王陛下に忠告されているのです。『ハヤカワミコトには注意しろ』と」
あのババァ!!俺の計画の邪魔しかしないのか!!
やはり最後に極限の(精神的)苦痛を味あわせてやらなければなるまい。
楽には死なせん!!
例え懺悔をしてもただでは殺さんからな!!!!




