第十二幕 業務に追われる最強魔術師
武光から提示された3つのクエストは割合簡単なクエストに思えた。しかし、面倒といえば面倒だ。
「1つ目のクエストは、異世界デイカオスでカタストロフィを起こしてほしいという依頼だ。ただ、その前に魔王カオスデキオンのカウンセリングをしてやってくれ。
どうも人間にいじめられてまいってしまっているらしい」
「カタストロフィに使うための魔族は動員済みか?」
「そうだ。だからすぐに向かってくれ。これは緊急のクエストだ」
そんな雑用をなぜ自分がやらなければならないとマドーは思ったが、せっかく武光が話をまとめてきてくれたのだから、あまりわがままも言えなかった。
「残り2つのクエストは?」
「最近、エーテリアスで人間狩り教による生誕因子狩りが横行している。さすがの神々をこれを看破できなくなってきているらしい」
「ふーむ?」
マドーは武光の言葉に疑問を感じた。
「なんだ?まさかマドーも差別主義者なのか?」
狩られているのが、生誕因子なら問題ないのではないかとマドーは考えているのかと武光は聞いている。
「いやそんなことはないが、神々がそんなことを気にするか?」
「ちっ!まあそうだがな!問題は依代因子も狩られたってことだ。これは神々にとって死活問題。よってこれも緊急クエストに当たる」
「なに?依代因子が狩られた?人間狩り教にはそれほどの猛者がいるのか」
「どうやって狩ったかは分からない。だが猛者という意味でいえばマドーに肩を並べる魔術師であるデマロンデ・エーテルハントが関わっていることはほぼ確定だ。
だから、これはマドーが出向くのが最適であるという神々の判断だな」
「それは分かったが、緊急クエストが2つか」
「残り1つは、異世界ルドオンの調整だ」
そういって、武光はにやりと笑った。
「ルドオンの調整?それはお前たち自由の翼に与えられているクエストじゃなかったか?」
「まあそうだがよ。正式にマドーにも申請が来ているぜ。これで神々も公認だな!ま、ちょっとぐらい俺たちを手伝ってもばち当たらないと思うぜ」
「神々も味方につけるとは、恐れ入る。しかし、それら3つのクエストをこなすとしても世界の核の代わりになるとはとても思えないが?」
と、マドーは武光に疑いの眼差しを向けた。どう考えても、神々と内々な交渉をしているに違いないと看破したのだ。
「へっ。俺を疑っているのか?俺がマドーを裏切ると思うか?」
「・・・」
二人は暫くにらみ合ったまま黙り込む。やがてマドーはにやりと笑って口を開いた。
「いいだろう。俺は何からやればいい?」
結局、マドーは何も聞かなかった。武光ほどの猛者が自分に反逆するならそれはそれでおいしいと思ったからだ。もちろん、武光はそんなマドーの思考を熟知している。
「まずは、デイカオスに行ってくれ。人間狩り教の方は俺たちに任せてくれ。奴らに最も因縁があるのは俺たちだからな。だが、さすがにデマロンデの相手は厳しい。
これはマドーが担当してくれ。機が来れば呼ぶ」
「分かった。ルドオンの調整は?」
「そっちは、自由の翼が引き続きクエストを進行させている。ま、こっちはあまり気にしなくていいぜ。実質クエストは2つだと考えていい」
「分かった」
話がまとまったところで、きるりが話しかけた。
「マドー君。クエストもいいけど新魔界の設置場所を探して、集めた世界の核を使って新魔界創造の土台を作らないと」
「そうだな。どこか見当はついているか?」
「魔導ビルのどっかでいいんじゃない?」
「そうしよう。魔導ギルドのギルドマスターにも話をつけておかないとな。きるりちゃんはとりあえず設置場所を探してくれるか?」
「分かったよ~♪」
やることがたくさんあるなとマドーは思った。
「あと、勇者の魂候補も見つかったよ」
「なに?勇者の魂候補がついに見つかったのか?」
「うん。異世界ヴァルディスに強い魂の因子が見つかった♪」
「くっ。そうか」
マドーとしてはそっちに行きたかった。世界の核が新魔界の土台ならば、勇者の魂は、新魔界の生命そのものといえる。いわば新魔界創造を行う上で最も重要な材料と言えた。
「おい!マドー!仕事優先だろ!俺が頑張って話をまとめたんだぞ!」
と、武光が叱責する。
「分かってるよ」
マドーはしぶしぶつまらない仕事に励むことにした。




