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虚構の世界に介入して登場人物を全員幸せにするまでの物語、パーフェクト・バージョン!  作者: 秋乃晃
14回目の偽アカシックレコードの世界=修正された虚構の世界編
89/100

Chapter7


 たーちゃんから真剣な顔をして「話があるので、帰りに交番に寄ってもらえませんか?」なんて言われちゃったもんだからニコちゃんからの部活の勧誘もミクちゃんからの「帰り、クレープ食べない?」のお誘いも「先約があるから! また後日!」って平謝りして下校!

 何かな何かな?


「来たよー」


 制服姿で交番に入っていくわたし。

 声に気付いたたーちゃんは「早かったですね」とちょっと驚いている。

 わたしとたーちゃんとの付き合いじゃないの。

 学校の友だち付き合いより優先するの。


「こっちで話をするので、奥までどうぞ」

「はいはいっと」

「宮城さんは一緒じゃないんですか?」


 宮城さん?

 ああ、創のコト?


「連れてきたほうがよかったの?」

「いえ」


 なになに?

 たーちゃんまでわたしと創が一緒に暮らしてるのを気にしちゃうの?

 感覚が女子高生と同じかよぉ。


「創は『せっかくの学生生活だから色んな部活をやってみないとね』ってあちこちの部活を掛け持ちしてるの。今日はバレー部に行ったの」


 昨日はサッカー部、一昨日は野球部だった。

 ちなみにニコちゃんは吹奏楽部。

 もちろん創のコトも誘って、創は創でチャレンジ精神の塊だから乗り気で参加しに行ったケド、その時にティンパニだかを力一杯叩いて壊したらしい。

 本人曰く「こんな簡単に壊れるとは思ってなかったね」とのこと。


「秋月さんはどこにも入らないんですか?」


 聞かれると思った。

 わたしは「集団行動とかみんなで一つの目標に向かって力を合わせるのとか、嫌いじゃないケドめんどくさいじゃない?」と持論を展開する。

 人がいっぱい集まるところには何かしらの問題が起こりがち。

 女の子同士の派閥争いみたいなのめんどくさいし。

 クラスではニコちゃんとミクちゃんと3人で仲良くやってるからそれでいいし。


 帰宅部でいいよもう。

 おうち好きだし。

 さっさと帰ってお酒飲みたいし。


「今日呼んだのって個人面談がしたかったの?」

「俺なりに心配してるんですよ。秋月さんが高校生活に馴染めているかどうか」

「マジ? 見にくる?」

「機会があれば」


 そんなにわたしって非コミュに見えるかなぁ?

 心配ご無用なの。

 大学入試の時に死ぬ気で勉強しまくったおかげで高校2年生の範囲はバッチリ。

 成績優秀文句なし!


「それに、秋月さんのお友達について気になる点が出てきまして。今日はその話がしたくて寄っていただきました」


 わたしのお友達?

 誰のコトだろう。

 たーちゃんは机の上にまるでカルタを並べるかのように書類を広げていく。


「警察の方から“組織”に協力を仰ぐケースってぼちぼちありますよね」


 わたしとたーちゃんとで解決した事件もあるぐらいだし。

 珍しいものではない。

 能力者には能力者で対抗するしかないし。

 何してくるかわかったもんじゃないし?


「これが連続殺人事件の被害者の名簿です」

「見せちゃっていいの?」

「……ダメかもしれないので、オフレコでお願いします」


 オッケー。

 わたしは人差し指と親指で丸を作って、たーちゃんの指差した書類を手に取る。

 えーっと、なになに?


「類似する手口による犯行が1ヶ月に1度か2度。犯行の場所は異なるものの、すべて満月の夜であった。警察としては複数犯の線も睨んでいましたが、犯人の逮捕後に犯行がパッタリとなくなったことから単独犯と断定」


 名簿の中に“野口ニコ”の名前を見つける。


 マジ?

 え、さっき殺人事件って言ったよね?

 ニコちゃんも死んでるの?

 書類の一番上にも“狼男による連続殺人事件の被害者名簿”って書いてあるし。


「ところで秋月さんは“狼男”ってわかります?」

「本で読んだり映画で観たりしたぐらい」


 ニコちゃんは当時高校2年生。

 フルネームと当時の年齢と性別とがつらつらと並んでいる。

 10代から30代までの女性ばかり。


「犯人は“満月の日限定で狼男に変身してしまう能力”の能力者だったんです。被害者には全員噛みつかれたり引っ掻かれた痕がありました」


 たーちゃんが別の資料を渡してくる。

 犯人についてまとめたものらしい。

 名前は香春隆文。

 年齢はわたしの1個上。

 写真もある。


「あらイケメン」


 たーちゃんがわたしの正気を疑うような声色で「こういう感じがタイプなんですか? 猟奇殺人犯ですよ?」と言ってくるので、咳払いしてごまかす。


「この人がその……狼男への【変身】の能力? で暴れてたってワケ?」

「そうです。逮捕する際にも暴れに暴れて捜査員に大けがを負わせています」

「ヤバいじゃん」


 能力者保護法によれば“能力”は現代科学で説明できないありえんパワーだから、人間から狼に姿を変えるのは骨格的にも無理な話なので【変身】の能力に分類されるんだろう。

 しかし暴れちゃうのは困っちゃうなぁ。


「特別に用意した銃弾でしかダメージを与えられなかったらしくて。通常のマグナム弾で受けた傷はすぐに治ったとか」

「ヤバすぎる」


 能力は人によって様々だし。

 選べるものではないケド。

 他人に危害を加えるような“能力”はよくないと思う。

 どんどん捕まえて更生させていくべき。


「“組織”側から協力してくださったのは霜降伊代さんです」

「あー、霜降パイセンかー」


 わたしは入ったばかりの時に挨拶したぐらいの付き合いな【必中】の能力者。

 高めのポニーテールがチャームポイントな180cm超えの長身の美人さんが霜降伊代パイセン。

 お近づきになりたいとは常々思っている。


「両腕両足の、いや、前足と後ろ足の関節部分を撃ち抜いて逃げられないようにしたところを機動隊が取り押さえて確保したと」

「さすが【必中】。カッコイイー!」


 というか、わたしって“組織”で働いてたはずなの。


 今は何でだかわからないケド高校生やらされてる。

 そういや、いつから高校生やっているんだろう?

 制服も持ってなかったケド9月からの転入生ではないらしいし?


「ここからが大問題でして」

「捕まえたのに?」

「ここまでも大問題を起こしていましたけど……取り調べで『知らない』だの『やってない』だの喚き散らかして、しまいには泣き出してしまったそうで。これが実際に担当した方が残したやりとりの記録です」


 いくつか残されている。

 どれも似たり寄ったり。

 現場の写真を見せたら吐いたとか、頭部に装置をつけて「本当のことを言っているのか」を調べたとか。

 収穫なし成果もなし。

 それっぽい供述もなし……。


 たぶんだけど【変身】している間の記憶がどっかに消えちゃっているタイプじゃないの?

 そういう二重人格っぽい能力者もいるらしいし。

 そうだとしたら本人に反省をうながしても混乱させるダケ。


「というわけで、原理はわかりませんが秋月さんのお友達は“一度殺されていて、生き返っている”ようです」


 ニコちゃんも宗治くんや雅人くんと同じってコト?

 ひょっとしてクラスメイト全員そういう感じ?


「んまあ、わたしも死んじゃっているらしいし」

「……秋月さんがですか?」


 たーちゃんがごくりと唾を飲む。

 わたしはちょっと前に創から教えてもらったコトをたーちゃんに説明した。


 能力者のみんなはいろいろあって死んじゃっていて。

 みんなはこの“小さな世界”っていうか本の登場人物で。

 8月25日になると記憶がリセットされて。

 今は14回目の世界で。

 前回の13回目の世界でわたしが偽の“アカシックレコード”っていう本を手に入れて。

 なんかうまいことみんながハッピーになるように世界を書き換えた。

 めでたしめでたし。


「そんな話を信じるんですか?」


 たーちゃんの反応が思ってたんと違う。

 わたしの説明がわかりにくかったかなぁ。


「俺はまず、生き返っているっていうのが意味わからなくて」

「意味はわからなくとも生き返っているのは事実なの」

「本当にその“野口ニコ”は“野口ニコ”なんですか?」


 ニコちゃんはニコちゃんじゃない?

 カルタみたいに並べた書類に貼ってある当時のニコちゃんの写真と、さっきまでお話ししていたニコちゃんはそっくりさんだし。

 同姓同名の別人ってコトはないと思うし。


「死者がそんなに簡単に、その偽“アカシックレコード”だとかいう本の力で生き返るんだったとしたら、頑張る意味ないじゃないですか」


 どういうコト?

 わたしがキョトンとしていると、たーちゃんは「俺、秋月さんより頭悪いんで、俺の思っていることがちゃんと伝わってくれるかわかりません」と付け加えた。


「みんな生きていたほうが楽しいじゃない?」


 その、なんて言えばいいんだろう。

 なんかよくわからない能力者に酷い目に遭わされて殺されちゃったのなら。

 虚構の世界の中ででも、幸せになれたほうがいいじゃない?









【死人の学び舎】


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