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虚構の世界に介入して登場人物を全員幸せにするまでの物語、パーフェクト・バージョン!  作者: 秋乃晃
13回目の偽アカシックレコードの世界=虚構の世界編
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「あなたは16歳、わたしは23歳」

 23歳、高校2年生。

 2学期の始まり。

 これから初登校!


「コスプレですか?」


 たーちゃんからの視線が痛い。

 警察の人呼ぶよ!

 あ、たーちゃんが警察だった。


「今日からわたしは高校2年生がお仕事になってしまったワケ。これが正装」


 袖を通すまでは辞表叩きつけようか悩んでいたケド、全身見てみると悪くはない。

 サイズも大きすぎず小さすぎずでぴったりだし。

 ティーシャツ見ただけでここまで仕立てられるの、やっぱすげぇや。

 クリスさんが“最強”と言われるのもわかる気がする。


「大変なお仕事ですね……頑張ってください」

「同情するならメシをくれ」

「じゃ、カツ丼でも」

「重たいなぁ。あんぱんでいいよ」

「張り込み?」

「栗の入ってるやつがいいな」


 今日はまだ2学期の始業式だから昼までで終わりだけど、明日から弁当だよ弁当。

 テキトーにコンビニで買って行ったらダメかなぁ。

 学校に購買部がないか、着いたら確認しておこう。


「ま! 初日から遅刻はダサいんで! 行ってきまーす」


 学校は実家の近くだけどこの家からは遠いの。

 サボり警察とのんきに立ち話してる場合じゃないの。

 腕時計(してないけど)を見るフリをしてレッツゴー。


「白いタクシーで送りましょうか?」

「いいの?」


 たーちゃんが指差す先。

 パトカーじゃねぇか。


「悪目立ちじゃない?」

「冗談ですよ冗談。いってらっしゃい」


 んもう。

 わたしはたぶん犯罪から最も縁遠いところにいる人種なんで。

 善良な一市民なんで。

 仕事関連ぐらいでしか、たーちゃんにお世話になるコトはないでしょう。

 もちろんパトカーに乗せられるなんてそんなまさか。


(マスクしとこ。地元の知り合いに見つかったら気まずいし)


 神佑大学附属高校。

 住所を調べたら本当にわたしの実家の近くだった。

 わたしの顔見知りがその辺をうろうろしている可能性大。

 事情があるとはいえ、噂されたらめんどくさい。

 いちいち説明してもいられないし。

 説明したところで理解してもらえるかわからないし。


「おいっす!」


 あらやだわ!

 秋月さん家の娘さん、制服着てましたわ!

 うー、ヤダヤダ。

 おかあさんには迷惑かけたくないのに。

 待てよ。

 パトカー通学もありよりのありなのカモ。

 いや、なしだな。

 なしよりのなし。

 パトカーに乗っている姿を見られたほうがオオゴトになっちゃう。


「もしもーし、編入生のちなっちゃーん?」


 とりあえず、学校に着いたら一通り探索。

 組織から貸し出された“能力者発見装置”で炙り出す。

 ……あー、肩凝ってきた。

 氷見野博士が初号機を開発してから何年も経ってるんだから、いい加減小型化すればいいのに。

 あー。

 そういや、能力者に関する研究を引き継いでいる人がいないんだっけか。

 研究室大爆発したもんなぁ。

 あの時めっちゃニュースになったし。

 陰謀論すごかったし。


「わっ!」

「わっ!?」


 人が考えゴトしながら歩いている時に、女の子が目の前に飛び出してきた。

 校門をくぐってからのエンカウント。

 この秋月千夏もそりゃあ驚く。


「ガン無視はひどいひどすぎる。訴えたら勝てるレベル」


 おんなじ制服の女子高生だぁ。

 うわぁ。

 ホンモノの女子高生だぁ。


「ちょい失礼」


 ワイシャツにピンク色のカーディガンで、指定のリボンがゆるっゆる。

 スカート丈が短すぎてパンツ見えそう。

 というか、ワイシャツのボタン開けすぎ。

 かがんだらおっぱい見えちゃうからボタン閉めとくね。


「ヨシ!」


 第3ボタンまで開けちゃうのはよくない。

 気になりすぎて会話が頭に入ってこなくなっちゃう。

 で、なんだって?


「ちなっちゃん、ひょっとして案外真面目ちゃん?」

「クラスメイトが露出狂なのはチョットやだな」

「は?」


 主にクラスの男子が目のやり場に困っちゃうので。

 で、なんだって?

 教室まで案内してくれるの?

 それはとっても助かる。

 ついでに購買部の場所も教えてちょ。

 時間がなければあとでもイイよ。


「おはようミクさん」

「おいっす!」


 お。

 下駄箱で仲間が増えた。

 こっちはミクちゃんとは正反対できっちり第1ボタンまで閉めてる。

 えらいぞ。

 苦しかったら1個開けてもいいんだぞ。


「この子が例の編入生?」

「例の編入生は秋月千夏と申す。ミクさんがちなっちゃんって呼んだから新キャラもちなっちゃんって呼んで」

「え、ええ。そうします。私は野口ニコ。よろしくねちなっちゃん」


 若干引かれたのはなんで?

 わたしってばフレンドリーなのに。


「教室は3階で、エレベーターは基本的には使うのNG」

「毎日強制的にもも上げ運動じゃん」


 やばい。

 痩せてしまうかもしれない。

 え、これ、2階の音楽室とか1階の校庭とかに行くときも階段でしょ?

 痩せてしまうかもしれない。


「私たちは2年A組なので、教室はこの並びの1番奥」

「あ、A組だったんだ」


 現役時代はB組だったなぁ。

 間違えないようにしないと。

 教室間違えた時の気まずさったらない。


「ちなっちゃんの席は、窓側のあの空いてるとこ」


 ミクちゃんは教室の入り口から対角線上にある空席を指定した。

 隣の席の男の子は、その前の席の男の子に話しかけている。

 話すのに夢中でこちらには気付いていない。


「宿題終わってないんだけどさ、今からでもやるべきか、腹をくくって怒られるべきか、どっちがいいと思う?」


 話しかけられているほうのメガネの男の子はこちらを見ている。

 話聞いてやれ。

 宿題やれ。

 ってか、何時間目の授業の話してるの?


「なあ、まさひと。これは究極の選択だぞ」


 まさひと?

 目をこすってからまじまじと見る。

 いや、ここから頑張って眺める必要ないやん。

 自分の席の斜め前なんだから。


『編入生か』


 電子メモパッドに文字を書いて、自分の席に座ったわたしに見せてくるメガネの男の子。

 わたしは初対面だし、写真でしかその顔を見たコトないけど。

 わたしは彼の名前を知っている。


「氷見野雅人……?」


 この世界における“能力”の研究の第一人者。

 能力を“魂の病”とし、患者の特定手段と発症の原因の特定と治療薬の開発にその生涯を捧げた男。

 いやいやいやいや。

 待て待て。

 氷見野博士は事故に巻き込まれて亡くなっているし、こんなところで高校生してるワケないじゃん!


「どうも編入生ちゃん! どこ中出身? ラインやってる?」


 横から割り込んでくる宿題忘れ男。

 うるせー!

 声でけー!


「ちなっちゃんって名前? かわいいね!」

「そ・う・だ・よ!」


 わたしは“能力者保護法”で卒論を書いたし。

 当時の首相・風車宗治の逸話は(組織のトップに就任する前は首相の秘書だった)作倉部長から耳にタコさんができるほど聞いたし。

 政治家として、近年稀に見る善政の人だったというし。

 まあ、風車首相が自宅の風呂場で足を滑らせて死んだっていうニュースを見た当時14歳のわたしは「ダッサ!」って思っちゃったけど。

 最期はともかく、憧憬の念を抱いていた。


「あ。怒らせちゃった? ごめんごめん。オレが悪かった」


 この法律はまず“能力”を定義するコトから始まっているから、氷見野博士についてもかなり調べた。

 彼には重度の発話障害があって、コミュニケーションを取るときはスケッチブックに文字を書いたり、パソコンに打ち込んだ文字を読み上げさせたりしていたという。

 氷見野博士の同姓同名のそっくりさんだとして、そこまでパクるのはやりすぎじゃない?

 悪趣味だと思うの。

 いますぐやめた方がいいと思うの。


「怖い顔するなって。……まさひと、編入生に何かした?」

『何も』

「とりあえず謝っとけ! な!」

『なんで』


 普通に喋れ。

 隣のコイツもなんでこのそっくりさんを庇うの。

 喋らせろ。


「よし! わかった! オレが代わりに謝る!」

「ちょっとちなっちゃん!」

「ねえねえ、いいんちょー。編入生がこわーい」


 ミクちゃんがあいだに入ってきた。

 ギャルっぽいけどクラスの委員長なのね。

 ニコちゃんの方がそれっぽい。


「宗治くんが挨拶がてらにライン交換しようとするのがバッドコミュニケーション」

「宗治くん!?」


 ガッターン!

 ものすごい勢いで立ち上がったらイスが倒れちゃった。

 周りもびっくりだろうけどわたし自身が1番びっくりしてる。


「あんたが風車宗治!?」


 隣のアホは「え、まあ、そうだけど」と答えてきた。

 えーっと……マジで?

 時空おかしくなりすぎなの?



【A cat may look at a king】





ぼくも仲良くなれそうな白菊ミクちゃんと、ぼくみたいにしおらしいニコちゃんと。

死んだはずの風車宗治と氷見野雅人と、新キャラ盛りだくさんな話だったね。

次回は3話「徐々におかしな日々」

奇妙な冒険の始まりかもね。


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