蛇足その八、『あくまで裏設定』
「私って天才なのかしら?」
数日後、白さんがそんな事を言いだした。
「まだ乗り始めたばかりなのに自転車を手足のように操れるわ。ウィリーも壁走りもOKよ」
「すげぇ! ウィリーはともかく壁走りはすげぇ!」
そもそも壁走りにチャレンジしようとする姿勢が凄い。この娘、只者ではないですよ。
「あのね、あのね! 壁走りは壁に対して三十度くらいを維持しつつ、後輪が重力で下がるのを利用して登っていくような気持ちで走るのが良いみたいよ。あくまで私の感覚なんだけど」
ボクが驚嘆したことに気分を良くして、詳しく語り始める彼女が微笑ましい。
でも、まるで親に褒めて欲しい幼子のようで……彼女の家庭環境を聞いたボクとしては、なんか深読みしちゃいそうで困る。困るから――
「……ま、まあ、この街は天才と変態とキチガイしかいないって言うから……白さんは天才だったってことで良かったね」
話題を変えさせていただきます。
「なにそれ?」
「えっと、この街は龍脈の集まる特殊な土地で、住民はその影響で、天才か変態かキチガイになっちゃうらしいんだよ」
そのおかげか、魔法少女がいたりしても住民はあんまり驚かない。常識はずれが多すぎて、非常識に対する受け入れ容量が半端無いのですよ……それって良い事なんだろうか?
「私、二年前に引っ越してきた転校生なのだけど」
「えっと、たしか一年も住めば、影響を受けるって言ってたと思ったけど……」
「誰が言ってるのよ、そんなファンタジー設定?」
「一人称が俺様のラブコメバカ」
「……あの人がいうなら、本当なのね」
「え!? なんで! 普通、アイツが言ったら疑わない!?」
「あの人は……信じられるわ」
彼女は本気でそんな戯言を言っているようでした。
――……いったい白さんとバカの間に何があった!?
でもヘタに聞いたら嫉妬してるように思われそうで……知りたいけど、聞けませんでした。




