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Thief  作者: がねちん
8/20

第八話 九十九%

本作品は実体験をもとに構成していますが、プライバシー保護および演出のため、登場人物名・設定・一部の内容を変更したフィクションです。

車での張り込みを終えた頃、空が白み始めていた。


今日は休みだ。尋志は、そのまま昼間のパトロールに出ることにした。昼のパトロールは、これが初めてだった。


犯罪者は夜に動く――そう思い込んでいた。


だが、その裏にこそ答えがあると、これまでの経験が教えていた。


シーフが現れる方向と、帰っていく方向。これまでの記録を辿ると、必ず使う方角があった。


北と西――長澤家から見て、その二方向だ。


このエリアが怪しい。まずはここを、ローラー作戦で潰していく。


家の前の通りを西へ進み、突き当たりまで行く。

そこから北側の道路に移動し、また戻ってくる。

それを繰り返せば、この一帯はすべて確認できるはずだった。

チェックする対象は、あの自転車。


その後の調べで、高校生に人気のブランドには、あの特徴と一致するものは無かった。つまり、あの自転車は“珍しい個体”だ。


見つけさえすれば、シーフに一気に近づく。

西へ歩きながら、ふと頭をよぎる。

あのハイブリッドカーの男のアパートも、この方角にあった。


そこにあった自転車も、只者ではない雰囲気を漂わせていた。

だが最終的には、別の車体だと判断している。

しばらく進むと、大きな工事現場に出た。本来ならこのまま突き当たりまで行きたいところだが、ここは後回しにする。


手前の道を右へ曲がった。

その道は、大人になってから初めて通る道だった。

尋志は、十歳までこの町に住んでいた。

子供の頃、このあたりで遊んでいた記憶はある。

だが当時は、一面が田畑だったはずだ。


それが今では、見慣れない建物が並んでいる。

パトロールとはいえ、人の敷地に無断で入るわけにはいかない。マンションやアパートも同じだ。


だが――自転車置き場は違う。


多くの場合、外から見える位置に設置されている。そして、自転車が集中している場所でもある。

木を隠すなら森――その可能性もある。


工事現場を迂回した先に、アパートやマンションが三棟並んでいた。

ここも、かつては田んぼだった場所だ。

街の変化に一瞬だけ驚きながら、尋志は視線を滑らせる。

自転車置き場は、三つとも見やすい位置にあった。


一つ目――違う。二つ目――

……あった。


シーフが乗ってきた自転車に、酷似した一台が置かれている。

尋志は、息を殺して観察した。

テールライト――ある。

サドル――反射材が使われている。

そして――タイヤ。

ホイールではない、タイヤの側面に、反射材が貼られている。

あの時、光っていたのはこれか。

さらに目を凝らす。


……反射材が、一部剥がれている。

だから、光が途切れて見えたのか。

間違いない。


この自転車は――シーフのものだ。

気づけば、夢中になって見入っていた。


その時――


上の階から、人が降りてきた。

はっとして、尋志は視線を外す。


今日の尋志の服装は、フード付きの黒い厚手のジャージ上下。

客観的に見れば、不審者はどちらかわからない。

自転車から距離を取り、電柱に寄りかかる。スマホをいじるふりをして、やり過ごすことにした。


ふと、視界に入る。

降りてきたのは、男女二人。


……あの男。


尋志の中で、何かが引っかかった。


「……あの男、シーフに特徴が似ている」


そう思った瞬間――

男と、目が合った。


「……あの目……」


防犯カメラ越しに、何度も見た目と同じだった。

男女は、車のカバーを外していた。

こんな海も無い場所でカバーをかけているということは、相当大事にしている車なのだろう。


だが、そんなことはどうでもいい。


男は、何度もこちらを見ている。

女は、一度だけ。

明らかに――警戒している。


尋志は、スマホに視線を落としたまま、観察を続けた。


髪型、髪色――一致。

身長も、ほぼ同じ。

服装はアウトドア系。

ブランドは違うが、系統は同じだ。


そして――ピアス。左耳に、大きめのボディピアス。

ここまで揃えば、限りなく黒に近い。


あとは――


白いサンダル。 


それさえ確認できれば、ほぼ確定だ。

やがて男は、部屋へ戻ろうとした。


その瞬間――


尋志は、足元に目をやった。

……

白いサンダル。


心臓が、強く跳ねた。

この事件の中で――間違いなく、今が一番心拍数が上がっていた。


ほぼ間違いない。

あの男が――シーフだ。


尋志はすぐに、家族へ連絡を入れた。

里美は、驚いた声で問いかけてくる。


「前回の男は、可能性半々だよね?」

「今回の男は、どのくらいの可能性?」


尋志は、迷わず答えた。

「今回は――」


一拍、置く。


「……九十九%だ」


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