その7 天は翔太に1.5物ぐらいは与えちゃった。
こんばんは。
夜分遅くに翔太です。
何だか今夜は月がきれいに見えるよ。
『なにぼけーっとしてんの。早くしないと置いて行くよ?』
月を見上げていたら、横を歩いていたフーちゃんにせっつかれた。
今僕は、フーちゃんとペロ君(覚えてる?野良犬事件の時の黒猫だよ)といっしょに夜の住宅地を歩いている。
どこへ向かっているのかというと・・・
『あっ、翔太さん、待ってましたよ♪』
『フーとペロもおるみたいやな。これで全員揃ったで。』
前者は初登場、薄茶色の毛並みのモモちゃん。
後者はおなじみのタママ君。
トラ吉は、今日は用事があるとかでここには来ていない。
今日は、月に二、三回あるネコの縄張り集会なんだ。
それで、マンション裏の空き地に来たってわけ。
『はぁ、集会って嫌だなぁ。』
『はいはい、ここまで来てぐちぐち言わない!サッサと行きましょうね〜。』
フーちゃんに背中を押されて、空き地の真ん中にある台によじ登った。
え、なんでそんなに嫌がるんだ、って?
いや別に、集会そのものは嫌じゃないんだよね。
ただ・・・周りからの視線が・・・。
今この空き地には、五、六十匹のネコが集まっている。
僕、人前って、すんごく苦手なんだ。
あ゛〜、緊張する〜。
モモ『今から今月二回目の集会を始めま〜す♪』
ペロ『まずは、翔太さんからの連絡です。』
僕『・・・・・・』
だ、だめだ、恥ずかしくてとても喋れないや。
フー『こら翔ちゃん、なに固まってんの!』
僕『う、うん。え、えーと、こ、こ、こ、この前の・・・』
タママ『毎回これや。まるでラジオのノイズかなんかやな。』
フー『はぁ、これさえ無ければ、翔ちゃんって最高のリーダーなのに』
タママ『天は人に二物を与えず。あれでこそ翔太やで。』
フー『まぁ確かに、翔ちゃんらしいといえばらしいよね。』
二匹とも、勝手なこと言ってないで代わってよ〜。
・・・十五分後・・・
なんとかかんとか、始めの挨拶みたいなものが終わった。
もうやだ、次こそはサボってやる。
『翔ちゃん、次こそはサボってやる、なんて考えて無いよね?』
フーちゃん、心を読まないで。
『さてと、今からは自由行動や。』
挨拶が終わった後は、自由に喋ったり遊んだりするんだ。
『翔太さん、あっち行きましょ〜♪』
あれ、なんかモモちゃんに引っ張られた。
『え、うん、分かっ・・・』
ガッ!
『ねぇ翔ちゃん、あっち行かない?』
なんでフーちゃんまで引っ張るの?
体が裂けそうなんだけど。
『翔太、モテ・・・』
ズガッ!!ズゴッ!!
フーちゃんとモモちゃんのダブルアタックがタママ君に炸裂した。
『や、やぶ蛇や・・・』
ガクッ・・・
タママ君は力尽きた。
なにがなんだかよく分からないけど、二匹が離してくれたから逃げられるよ。
タママ君ありがとう、君の尊い犠牲は決して忘れない。
タママ君を簡単に弔って、僕は持てる最高の速度でそこから逃げ出した。
また夜道を歩いている。
もう二匹とも追いかけて来ないみたい。
あぁ疲れた。
なんだか最近疲れてばっかりのような気がする。
・・・・・・
やっぱり今日は月がきれいだよ。
帰ったら煮干しでも持ち出してお月見しようかな〜。




