その4 ミッション・スルメを入手せよ!!
あ、お久しぶりだね〜。
ネコの翔太だよ。
え、なんで久しぶりなんだって?
ああ実は、あの野良犬事件から今日で3日経つんだ。
例の野良犬たちはよほど怖い目にあったみたいで、次の日にはみんないなくなってたなぁ。
まぁ、フーちゃんの逆鱗に触れたのに消滅しなかっただけ、運が良かったってことだよ。
さて今日は土曜日。
土曜日は、僕が一番嫌いな曜日なんだ。
なぜかというと・・・
「翔太〜!!どこにいるんだ〜!?」
この家にいる人間が、歩く騒音公害発生器、智貴だけになっちゃうから。
英恵さんは土曜日も仕事だし、智奈ちゃんもクラブとかいうのをやりに学校へ行ってしまうんだよね。
『ほんまにいつもうるさいやっちゃなぁ。』
ちなみに今、タママ君が遊びに来てるよ。
『せっかく翔太ん家にスルメもらいに来たっちゅうに、こんなんやったら出ていけへんがな。』
そう、今日はタママ君といっしょに、僕秘蔵の絶品スルメを食べる予定だったのに・・・
なんで今日に限って智貴は僕を探してるの?
多分、見つかったら今日一日は逃げられないんだろうね。
なんであんな場所にスルメ隠しておいたの?
台所の冷蔵庫の上なんてところに。
とにかく、このままじゃこの屋根裏部屋から出れないよ〜。
「翔太どこにいるんだろ?
翔太探しにも飽きたし、ゲームでもしようかな〜?」
『いちいちそんなこと大声で言う必要あれへんやろ。』
『智貴っていうのは黙ってると生きていけないいけない生き物なんだ。』
『どんな生き物やねん。』
でもとりあえず、これでスルメが取って来れるよ。
タママ君といっしょに、音をたてないように二階へおりる。
まだ智貴が諦めきったとは限らないもんね。
ちなみにこの家には、玄関の方にしか階段がないんだ。
気配を消して、玄関へ下り・・・
ピンポーン!
ジャストタイミングで玄関のチャイムが鳴った。
「ん?誰だろ。」
まずい、智貴がこっちに来るよ!
タママ君といっしょに階段を駆け上がる。
ピンポーン!ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!!
『誰やねん、鳴らし過ぎやろ!』
二階へ上がりきったタママ君が思わず叫ぶ。
でもあのチャイムのおかげで智貴に気づかれずにすんだよ。
そしで、やって来た智貴が玄関の戸を開けた。
すると・・・
「あなたも○×△教に入信しません・・・」
「俺はそういう変なものは信じない主義なんで。」
バタン!!
「ふぅ、危ない危ない。あやうく怪しい宗教勧誘に引っかかるところだった。」
『瞬速で断ったがな!!』
うん、引っかかる気配なんて微塵も無かったよね。
あといくつか気になるところがあったけど、あえてスルーしておくよ。
さてと、気を取り直して・・・
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!!!
「ん?次は誰だろ。」
『いや、だから鳴らしすぎやって。』
ガチャ
「あなたも○×△教に・・・」
バタン!!
「しつこすぎだ!!」
『しつこすぎやろっっ!!』
『しつこすぎるよっ!!』
・・・タママ君はともかく、智貴とハモってしまうとは・・・不覚。
「あれ?今ネコの鳴き声が聞こえたような・・・」
『あ゛、やってもうた。』
あらら、思いっきり叫んだから、智貴に聞こえちゃったみたいだね。
「翔太〜!どこだ〜!いるなら出てこ〜い!!」
まずい、智貴が階段を上ってくる!
『タママ君、屋根裏部屋に避難するよっ!』
『あーもー、いつになったらスルメが食べれんねん!!』
『どっちにしても、見つかったら絶対食べられないからね!』
タママ君と屋根裏部屋へ逃げ込む。
はぁ、今日は運が悪すぎだよ、ホント。
「お〜い、翔太〜!」