裸の傭兵と薄汚れた水色
思いつくままに始めてしまいました。
こちらの小説は資料集め(名称、文化、世界観の参考)及び誤字脱字チェックにAIを利用しております。
ご注意ください。
それでは少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
快晴。
日の高いうちから森に1人、のん気に温泉につかり、ため息をついた。
「こんなんで良くなるんだか……」
湯の中に投げ出していた足を上げる。
鍛え上げられた脚だが、足首には痛々しい傷跡が残っていた。
「どうしたもんかな」
傷を負ったのは1か月ほど前。傭兵として魔物の討伐依頼を受け、討伐した後だった。
魔物の討伐は予定通り完了できたのだが、運悪く帰還の途中で嵐にあってしまったのだ。
雨でぬかるんだ獣道、山頂から吹き下ろすような横風、もともと不安定な道。
討伐した魔物を積んだ荷馬車は、いとも簡単にバランスを崩し、山肌を転げ落ちる。
後ろから荷馬車を押していた俺もろとも。
命に別状はなかったが、討伐後であったことが災いした。
治癒術を使える傭兵団の仲間、ルデクの魔力が尽きており、緊急用のポーションで治療するしかなかった。出血は止めることができたが、きちんと治らなかったのだ。
「そろそろ、動くようになってくれませんかね」
足首を伸ばそうとしても、曲げようとしても、わずかにしか動かない。
体重をかけても痛みはしないが、かつてのように剣を振るって戦うのは難しい。
「ダメか」
山を下り、宿に戻って改めて傷跡を見せた時のルデクの顔が忘れられない。
あの、申し訳なさそうで悔しそうな表情。
治る見込みは限りなく0に近いのだと、実感させられた。
そこからわずかな望みをかけ、ここ、フォンディーにやってきたのだ。
この街にはいくつもの温泉があり、さまざまな治療効果があるとされる。
その中に効く温泉があるのではないか、とグラド団長の勧めでここに来たのだ。
「そううまくはいかないか」
これで21種類目の温泉だ。
効果はわからないが、何かいいことが起こるかもしれないと、なんとも取ってつけたような効能を謳われている。
立地は最悪で、街から1時間、今の俺では2時間かかる距離にある。
周囲には無人の小屋があるだけで、特に管理もされていない森の中にある秘湯とも呼べる温泉だ。
獣道から転げ落ちて脚を負傷したのに、治すために獣道を歩くとは思わなかった。
当然、人気もない。
「そろそろ上がるか、ん?」
足を下ろし、立ち上がろうとしたところで、森の奥から何やら近づいてくる音がした。
「……人か?」
いるわけがない、とは思いつつも、近づいてくる音は獣や魔物の類ではない。
明らかに人の足音だ。
「時間はないか」
人がいないのをいいことに、反対側まで泳いでやろうなんて、やるんじゃなかった。
この脚では、脱衣所に置いてある剣を取りに行く前に、背中から攻撃される。
音のする方向に半身で構え、左手を突き出して魔力を溜める。
ガサリ。
藪を突き切るように出てきたのは、仕立てのいい衣服に身を包んだ女性が2人と、その後を追うように駆けてくる、革製の軽鎧を身にまとった男が3人。
「……っ! 助けてください!」
「引き受けた」
おおかた、やんごとなきお方のお家騒動だろう。
それも、荒事にあまり従事しない系統の。
「貴様! 邪魔立てするなら、もろとも切り伏せる!」
「やってみな」
先頭の男が、駆けてきた勢いをそのままに剣を向けて突撃してくる。
「丸腰で何ができる!」
「魔術」
「っ!!」
ボン。
剣の間合いに入る前、あと3歩はかかりそうな距離で爆発を起こした。
『フレアボム』
よく使う魔術の1つだ。
「対人戦で魔術を警戒しないってのは、いただけねえな」
後ろから追従していた男たちが、爆発に驚いて足を止める。
「こいつ、魔術師だ!」
「うかつに近づくな!」
それは悪手だろ。
口には出さず、距離を取ってくれている残りの2人にも火を浴びせる。
それぞれの頭上から、火の玉が複数降り注いだ。
『ファイアシャワー』
これもよく使う、味方を巻き込むことが少ない魔術だ。
聞くに堪えない苦悶の声。
転げまわり火を消そうとしているが、そんな程度で消えるもんじゃない。
2人の火だるまは、ほどなくして動かなくなった。
「こんなところか」
温泉のほとりに、焼け焦げた死体が2体。
まるで水を求めて逃げてきたようにも見える。
その手前に爆散した何かが散らばっていなければ、だが。
「さて、助けたわけだが。対価には何をくれるんだ」
戦っている最中に脱衣所まで退避していた女性2人に、改めて振り返る。
「もちろん見合ったお礼は差し上げます! ですから、まずは服を着てください!」
戦闘に夢中になって、うっかりしていた。
「おっと、こいつは失礼。その小屋に置いてあるから、少し後ろを向いていてもらえるか」
土汚れがついているが、それでもわかるほど鮮やかな水色の髪色の女性が無言で後ろを向くのに対し、金髪の女性は警戒するようにこちらを見据える。
「そう警戒しなさんな。どのみち俺にお前らをどうこうすることはできねえよ」
「先ほどの魔術を見せておいて、警戒するなというのは無理があるのでは」
どこか初々しい反応を返す水色とは異なり、この金色は落ち着いている。
「それなら仕方ねえ」
軽口をはさみながら脱衣所へ向かう。
できれば金色にも後ろを向いてほしかったが、この様子じゃ無理そうだ。
文字通り重い脚を引きずって、脱衣所へ向かった。




