14話 樹木の檻
『そうさ!僕たちはダンジョン探索者!ダンジョンに巣食う怪異を退治しに来たんだ!』
:うわあシャベッター!!
:小動物が喋るとか、ますます魔法少女
画面のコメントの流れが高速化して見とれなくなる。鴉は拳をわなわなと震わせて怒鳴った。
「おい!お前のところのラプスは何を考えている!?」
「あはは……。何を考えてるのかなぁ、ラプス?」
画面に向かってキメポーズをしているラプスに問い掛けるましろ。
『もう誤魔化しようがないなら、開き直るまでさ』
腕を組むましろの肩の上に登るラプスは、ましろに耳打ちをする。
『大丈夫。今回の件で僕のアップデートが入るから、記憶を回収出来る筈さ』
「画面越しの人間の記憶も?それは無理なんじゃないかな?」
『組織の力を舐めてもらっちゃ困るよ。ーーでも、そうだね。確かに全てをもとに戻すことは出来ない。例えば近衛のチャンネルの登録者数とか』
「それは……。ラッキーだね近衛さんは」
カメラに向かって画面に流れるコメントの質問に受け答えをしている近衛を、ましろは静かに見守っている。
「……どうしますの、ましろさん。この方も一緒に連れて行きますの?」
来夢はましろの制服の袖を引っ張った。ましろは顎に手を当て考え込む。
「近衛さん、ボク達と一緒に最深部まで行きますか?それともここで一度引き返します?」
「決まってるって!一緒についていくさ!」
近衛は力強くスマホ画面を握り締め、高らかに声を上げる。
「……オレはどうなっても知らんぞ。勝手にしろ」
鴉はそう言うとロングソードを腰の鞘に収めた。
◇◇◇
「ほえほえー……」
「どうやらココで行き止まりみたいだね」
ドアに覆い被さる樹木の束。その根は硬く、鵜久森のツインソードでは切れないほどだ。
「向こうがアタリだったってこと?」
「かもしれませんし、私たちと同じく行き止まりだったのかも……」
「おい、鵜久森電話」
「え?ああ、ましろくんにね」
榴姫に促され、鵜久森はましろに電話をかける。
「……あ、もしもしましろくん?こっちの道がどうやら行き止まりみたいで」
『こっちの道はまだ続いているみたいです。合流せずに先に行ってもいいですか?』
「ああ。一刻も早くこのダンジョン事件を解決しないと、ダンジョンに迷い込む一般人が現れてもおかしくない状況だし……」
『それが既にダンジョンに迷い込んでいる人たちがいるみたいで……。さっき1人と合流したんですけど、配信者で話がややこしくなっちゃって』
「は、配信者!?」
『来夢が箒で飛んでいるところが配信で流れちゃって。ラプスはアップデートで画面越しでも記憶が消せる筈だから大丈夫って言ってますけど』
「へ、へえ……。そっちは大変だね」
『とりあえずその配信者とは同行することになりました。今、ボク達は6層にいます』
「そっか。僕らは一度戻るのもアリかな……」
鵜久森はスマホから目を逸らし、赤羽根榴姫を見る。綺羅々と林檎は賛同してくれるとして、榴姫はどうだろうか。何かあったらまた連絡するよと電話を切り、鵜久森は榴姫へ声を掛けた。
「ね、ねぇ榴姫ちゃん」
「何?鵜久森?」
こちらが1学年年上の筈だが、何故か呼び捨てにされる。鵜久森は恐々と電話での内容を話した。
「配信者?ふぅん。あっちは面白そうなことになってんのな」
「お、面白いって……、配信者なんて居たら僕らが戦いにくくなるだけじゃないか!」
「ラプスが記憶消せるんなら大したことにはならないでしょ。寧ろ堂々と見せつけてやりゃいいのよ」
それより、と榴姫は片手でチェリーブロンドの髪を靡かせた。
「ココからどうするの?ましろクンたちと合流する?」
「今から追いかけるには時間がかかるから、僕としては一度地上に戻りたいところだけど……」
「あーあ。これがゲームだったら穴抜けのヒモーとか使ってパパッとアーバン・レジェンド(セーブ地点)に戻れるのにー」
綺羅々がゲーム内のアイテムを欲しがり、背の後ろで腕を組む。
「私は鵜久森さんに賛成します──え?」
林檎が鵜久森に歩み寄った瞬間、地面に這っていた複数の木の根がうねり始める。
「なっ……!?」
「ちっ!!硬くて槍が刺さらない!!」
驚いている間に一行は木の檻に閉じ込められた。木の根の束が一つに固まり、封鎖されていたドアを破壊する。
「これって無理矢理最深部に進むルート!?」
「どうやらそうみたいだな……。おい!鵜久森」
「はいはいわかってますよ!ましろくんに連絡でしょ」
人使いが荒いなぁと鵜久森は呟き、ましろに再び電話をかけた。




