第11話
第8国ジュバ市にて一泊した翌日。
ゲオルグは、思いのほか疲れが貯まっていたらしく、腰を痛めて動けなくなってしまっていた。 私の魔法で腰の痛みは治したが、大事を取って今日1日は様子を見ることにした。
私は、クーと2人で冒険者ギルドに向かった。 ブルグマンシアの痕跡をさがすためだったが、もう1つギルドに用があったのだ。
「あのぅ・・・すみません。」
「はい。 どのようなご用件でしょうか?」
「こちらのギルドでも、魔法適正の鑑定ってできますか?」
「もちろんできますよ。 でもお見受けしたところ、あなたは魔法士なのではありませんか?」
「いえ、私ではなくこの娘なんですけど。」
「ああ、そちらの・・・トラさんですね。 どうぞ、こちらへ。」
ギルド嬢に案内されるまま、私とクーは奥の部屋に進む。
「魔法適正の鑑定は初めてですか?」
「は、はい・・・獣人は魔法の得意な人が少ないので・・・今までやったことは無いです。」
「そうですか。 そちらに掛けてお待ちくださいね。 お姉さんは、少し離れていてください。 お姉さんの魔力に反応しちゃうと、きちんとした鑑定ができませんから。」
「分かったわ。」
私は、クーから離れて入り口の壁側に立つ。
ギルド嬢が、さらに奥の部屋から両手で持てるくらいの大きさの水晶玉を持ってきて、クーの座るテーブルの前においた。
「では、お嬢さん。 この玉の上に両手を広げてかざす感じで広げて下さいますか。」
「はい。」
クーが水晶玉の上に両手をかざすと・・・水晶玉は白い光を放ち始めた。
「わ、わ、わ・・・」
「これは・・・間違いなく光属性の反応ですね。 深度は・・・2~3くらいかしら? もう手を下ろして大丈夫です。」
クーが玉から手を離すと、ギルド嬢はすぐに水晶玉を元の部屋に戻した。
再び戻って来たギルド嬢は、クーの向かいに座ると
「お姉さんもどうぞこちらへ」
「あ、はい。」
私は、ギルド嬢に勧められるまま、クーの横に座る。
「トラのお嬢さん・・・あ、すみません。 お名前は?」
「クーです。」
「クーちゃんは、間違いなく光属性の適性がありますね。 深度は・・・」
「あの深度ってなんですか?」
「ああ、深度はですねぇ・・・その魔法適正の強さみたいなものですかね。 1番低いのは1で、1だと・・・初歩の魔法が1つ2つくらいは使えるって感じで、人族や獣人族に1番多いタイプです。 クーちゃんの深度は2~3です。 でもどっちかって言うと2ですかね。 2ですと、決して高いとは言えませんが、魔法士として十分やっていけるレベルですよ。 獣人族ではむしろ珍しいですね。」
「本当ですか!?」
「ええ、後は・・・攻撃系が得意とか、治癒系とか・・・どの系統が得意なのかってことですが、残念ながらその鑑定はできないんです。 ぜひ、魔法学校に通うのをお勧めしますよ。」
「そうですか、ありがとうございました。 学校の件は考えておきますわ。」
「そうですねお姉さん。 ぜひ考えてあげて下さいね。」
「あの、ついでに伺いたいことがあるんですが、よろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「魔法の話とは、全然違うんですけど・・・ここ1年位の間で、誘拐事件とか行方不明事件とかってありませんでしたか?」
ギルド嬢の話によると、ここジュバ市でも10か月ほど前には、第7国からの難民流入があり、第8国に辿り着いた難民が、誘拐や強盗団のことを訴えていたことがあったらしいが、さほど大きな話題にはならなかったそうだ。
うむ・・・私が思うに、誘拐した人間は南方に出荷されているのではなかろうか?
だから、北に行くほどブルグマンシアによる誘拐は少ないとか・・・
第9国は、第4国と並んで中央大陸でも一番南に位置しているし、第10国はお隣だから西南に位置しているので、その可能性はあるのかも?
中央大陸よりも南だと・・・人族のほかでは妖魔族が非常に多い、南方大陸ディアボリクスがある。
南方大陸では、妖魔族が支配している大国ディアブルと、いくつかの小国とが戦争をしているなんて話もあったように思う。
まあ、結論を出すのは早いか・・・ジュバ市を出たら、次は第8国の王都アンタレスに向かうのであろう。 その後はさらに北上して、第12国か・・・
私がこの中央大陸で行った事のある国は、第2、3、4、7、8、9、10、11国だから、第12国にも行けたら、残りは第1、5、6国の3国だ。
中央大陸に渡って来てもうすぐ4年だけど、結構色々な国に行っているな。
残りの3国も、ぜひ行ってみたいものだ。
ひとまず宿に戻り、ゲオルグの様子を確認する。
「腰の方はどうなの? ゲオルグ。」
「ああ、カメリアのお陰で痛みはないぜ。 大丈夫そうだから、明日は俺も動くからよ。」
「ゲオルグさん、今後は私も御者をやらせてください。 もう1人でも出来ますから・・・また腰を痛めたら大変です。」
「おう、ありがとうなクー。」
ゲオルグは、クーの頭を撫でながら言う。
「じゃあ、王都までは俺が隣で見ているから、クーに手綱を握ってもらうかな。 大丈夫そうなら、それ以降は、俺とクーで交互にやろうぜ。 良いよなカメリア?」
「うーん。 まあ、仕方ないか。 確かにゲオルグに負担をかけすぎちゃったかもしれないしね。」
「お前は馬の扱いを覚える気はないのか?」
「うん。 私だと馬に暴れられたらお手上げだわ。 それに・・・」
「それに?」
「めんどくさいわ。」
「かぁ~! さすが女神さまはいう事が違うな。 だけど、確かにカメリアに馬車を任せる気にはなれないな。」
「そうでしょう?」
「それで、今日ちょっとギルドで聞いて来たんだけど・・・」
私はゲオルグに、ギルド嬢から聞いた話と私の考えを伝えた。
「そうか・・・それはあるかもしれない話だな。 それか、今は南方を狙っていて、ヤバくなったら北方とかに移る・・・とかかもな。 12王家は、今は表面上争っていないが、特に連携とかもしていないからな。 俺は明日盗賊ギルドに行ってみるから、それで特に情報がなければ王都に向かうか。 王都でも特に問題がなかったとしても、エルザに頼まれたんだし、一応第12国には行ってみようぜ。」
「そうね。 そうしましょう。」
その夜
「ねえ、リア姉。 私、どんな魔法が使えるようになるのかな? 学校かぁ・・・学校に通わないと、魔法って使えないの?」
「必ずしも、学校が必要なわけではないけれど・・・学校に通ったほうが使えるようになりやすいって感じかしら。」
「リア姉は、学校に通ったんですか?」
「うん。 まあ、通った・・・ううん、通わされたわね・・・2年ほど。」
「だからそんなに魔法が使えるの?」
「またズルいって言われちゃうかもしれないけれど・・・私は、学校で得たものはないかな? 私の場合は、最初にいくつかの魔法が使えるようになって、使っている内にどんどん増えて行ったって感じだし。」
「やっぱりリア姉は、特別なんだね。」
「ゴメンね、参考にならなくて・・・だけど、クーは治癒か補助系統じゃないかって私は思うけど・・・」
「そんなのも分かるの!?」
「まあ、なんとなくだけどね・・・今の私には・・・ね?」
「今の・・・リア姉ですか。 ルーナさまの神殿で何かあったんですか?」
「うーん・・・どうかなぁ・・・」
私は、クーを引き寄せて「クー吸い」を行う。
「また、クースイですか?」
「そう。 こうすると、私はクーからパワーを貰えるし、クーには私の『気』が流れるような感じがするんだよね。 そしたら、クーも早くに魔法が発現するかもよ?」
「なんか、調子のいいこと言っているだけのような気もするけど・・・でも、私も『姉吸い』をすれば、リア姉の力が入って来るのかな?」
「そうかもね。」
「はい。」
そうして、クーも思い切り息を吸い込んだ。
バカな事を言っていると思うなかれ・・・この「クー吸い」「姉吸い」のお陰で、すぐにクーは魔法に目覚めることになるのだ。
まあ、本当に因果関係があるかどうかは分からないけどね。




