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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第12章 カメリアとクー6

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第7話

 5月4日朝

 私が目を覚ますと、心配そうに私を見つめるクーの姿が目に入る。


「お早う、クー。」

「またうなされていたよ? 大丈夫??」

「ええ、なんかいつもよりは平気みたいだわ。」


(ルーナさま、一応私の言った事を気に掛けてくれたのかな? ちょっとは気を利かせることもできるじゃないの。)


「朝食の用意できていますけど、食べられますか?」

「うん、お腹は空いているからいただくわ。」


 深紅メンバーとホーリーオーダー、8名全員で朝食を囲む。


 食事の最中に、ホーリーオーダーの女性騎士リッカが、おもむろにクーに向かって話を始めた。


「気になっていたんですけど・・・クーちゃんの持っている剣って・・・カタナですか?」

「え? はい、そうですけど・・・リッカさん、カタナをご存じなんですか?」

「ええ、ホーリーオーダー(ウチ)の先輩で、カタナを使っている方がいるんです。」

「へ、へぇ~。 カタナって、遥か東方の国の剣って聞きましたけど、外国の方なんでしょうかね?」

「さあ、その辺はハッキリとは知らないんですけど、顔つきは確かに東方種っぽいですかね。 黒髪だし。」


 クーとリッカの会話を横で聞いていた私は、気が気で無かった。

 なるべく、気にしていない風を装っているつもりだが、ちゃんとできているか自信がない。

 素直で嘘の付けないクーが、なんとか情報を引き出そうと頑張ってくれているんだから、私が失敗する訳にはいかない。


「へぇ~。 ホーリーオーダーにもそんな方がいらっしゃるんですね。 その方も、今回の作戦に参加されるんですか? ぜひお会いしてみたいなぁ~、なんて・・・」

「いえ、マシス先輩は・・・」

「おい、リッカ。 喋りすぎだ。」

「はいっ! すみません、ノイマン殿。」

「ノイマンさん、ごめんなさい。 私、調子に乗っちゃいました。」

「いえ、クー殿が謝る必要はありませんよ。 こちらこそ、話を遮ってしまいまして申し訳ありません。 我々には守秘義務がありますので、余計な事を話すことは禁止されているのです。 どうか、ご理解ください。」

「いえっ・・・そんな、ノイマンさん。 私の方こそ余計なことまで聞いてしまって・・・」


 マシスの情報は、それ以上は得られなかった。

 朝食を終えて、再び移動が始まった馬車の中で・・・


「ツキ姉、ごめんなさい。 もう少し慎重に話題を選べば良かったですよね。」

「いいえ、クーは頑張ってくれたと思うわ。」

「これでアタシの情報が正しかったってのが分かっただろう?」

「そうね。 マシスと名乗るホーリーオーダー・・・本当に真鞘兄さまである可能性が高くなったわね。 どうにかして会えないものかしら?」

「妹だから会わせろって言ってみるかい?」

「いえ、それは最終手段ね。 それが通用しなかったら終わりだもの。 どうやらマシスとやらは、今回の作戦には参加しないようだし・・・次の機会を待つことにするわ。」

「おお~。 お前も少しは考えるようになったんだなぁ。」

「何よそれ・・・」

「いやぁ・・・以前のお前だったら、力ずくでどうにかしようと考えたんじゃないか?」

「何言ってんのよ。 私は、常に冷静に理性的に・・・そして合理的に判断して行動しているわよ。」

「うーん・・・そう思っているのは、お前だけなんだよなぁ・・・」

「エルザさ~ん・・・」


 数日後には、アローストリング市に無事到着する。

 同市では、一泊することになった。


 ホーリーオーダーのノイマンとリッカは、エルザを連れてどこかに出かけて行った。

 多分、この市に潜伏しているホーリーオーダーに会いに行ったのだと思う。


 残りのメンバーで、昼食を共にする。

 食事の最中に私は、ホーリーオーダーのレイナードに対して、目的地が第10国のレゴート市であろうとカマをかけてみたところ、彼は素直に認めた。

 まあ、旅の日程的にもレゴート市が目的地であることは明らかであったし、今更無理に隠しておくこともないと言う所か。


 意外だったのは、レイナードが自身の生い立ちを話してくれたことだ。

 彼は、ハーフエルフとして生まれたため、大分苦労してきたらしい。


 ちなみに、レイナードは現在23才で、リッカは20才なのだそうだ。

 ほら、やっぱりリッカは私とほぼ同い年だった。


 昼食を終えると、クーがスープの素を追加で作りたいと言い出した。

 ノイマンたちに褒められたのが嬉しかったのだろうか? 今後ホーリーオーダーの数が増えた場合にも対応できるようにしておこうと思ったのだろう。

 私はクーと2人で食材の買い出しに向かい、スープの素作りにも協力する。

 現状では、私の魔法が無いと完成には時間もかかるし、完成品の出来にも良し悪しが出てしまうのだ。 今回は時間が無いので私の魔法頼りだが、クーは私の助力無しでも満足の行く完成品を目指しているらしい。



 翌日

 アローストリング市を出て少し進むと、馬車が1台と人を乗せた馬が2頭待っていた。 ホーリーオーダーの増援らしい。 馬車には2名乗っているので、4名のホーリーオーダーが増えたことになる。


 これで、深紅メンバー5名とホーリーオーダーが7名となった。

 ノイマンの話によれば、現地でもあと数名のホーリーオーダーが合流するのだと言うことだ。


 レゴート市までの移動中の食事は、基本的に2回。

 朝と昼の間に1回と夜に1回。

 クーの作る食事は、後から合流したホーリーオーダーにも好評で、毎食クーが大活躍していた。

 さすがに、総勢12名の食事を毎回クーが作るのは大変なので、リッカと後から合流したホーリーオーダーの中にいた妖魔族青角(せいかく)種(鬼人種の一種で、青みを帯びた肌色が特徴)の女性サンドラがクーの手伝いをしてくれた。

 もちろん、私もクーの手伝いはしたよ。 水を出したり、火を点けたりがメインだけど。

 食事後の洗い物は男どもの仕事だ。 そこでも私の水が大活躍なんだけどね。


 なおサンドラも、大分口数が少ない人物であった。

 彼女は20代半ばから後半くらいだと思う。 30は行っていないだろう。

 しかし、鬼人系はあまりしゃべらない人が多いのだろうか?

 食事の際の彼女は、極端に口数の少ないパトリックの隣にいることが多いように感じた。

 特に話をしている感じは見られなかったのだが、鬼人種同士は会話をしなくても意思疎通ができるのだろうか? 謎だ。



 そうこうしている内に、レゴート市に到着した。

 着いたのは夕刻であったので、その日はすぐに宿に入る。

 人数が人数なので、3か所に別れたが、ノイマンから1泊だけで良いとの指示があった。



 翌日

 馬車で市内を南方向に進んだ。

 ある程度南に進むと、戦闘用の装備を装着して馬車を預けるように指示があり、以降は歩きで南下を続けた。


 段々と建物は無くなり、街外れといった感じになる。 少し遠くには、大きな建物が見えた。

 そこでノイマンから、これ以上近づかないように指示が出る。


「教会か?」

 エルザが、ボソりと口にした。

 確かに、教会のように見える。 大分古くてボロい感じだが、建物の周囲には柵があり、その内外には現役の畑もあって、無人と言う訳ではなさそうだ。

 レゴート市には何回も来ているが、こんな街外れに教会があるのは知らなかった。

 市内にもオーディア教の教会はあったハズだけど・・・


 教会を目にした場所から一度引き返し、道から外れた岩陰に集まる。


「先ほどの建物が目標です。」

 

 ノイマンの話によると、あの建物は教会であったものだが、市中に教会が移転した後に放棄されていたものなのだそうだ。

 数十年前にレゴート市に派遣されていた司教が、孤児を育てるために教団に無断で再利用を始めたのだが(当時の司教は、使用許可を取ろうとしたらしいが、腐敗した教団では中々審査が進まず、無断利用が始まったらしい。 結局、許可申請もうやむやになり、正式な使用許可は今でも出ていないのだと言う。)、その司教も亡くなり、その後に続いた者が、いつからか初期の志を歪めて行ったのだと言うことだ。

 現在では、孤児が自立できるようにするのではなく、奴隷として出荷できるまで育てることが目的となっていた上に、誘拐してきた者を集めておく場所にもなっているのだそうだ。



「ノイマン殿。」

「サンドラ、戻ったか。 どうだった?」

「はい。 裏門の方の準備は整っております。 予定時刻に突入するとことです。」

「分かった。 キミは、作戦開始時刻まで休んでいてくれ。」

「はい。 ありがとうございます。」


「深紅の皆さん。 レイナードから今回の作戦をお伝えします。」

「それでは自分の方から、作戦説明をいたします。」


 レイナードから説明のあった襲撃作戦に則り、我々も開始時刻に合わせて移動する。


 作戦内容は、至ってシンプルなものだった。

 正面からノイマン達6名のホーリーオーダーが突入し、裏口には別動隊4名が逃げ道を塞ぐ(つまり別動隊4名は、私たちと顔合わせしていない連中だって事だ。)、リッカを加えた我々は、3名ずつ左右に分かれてホーリーオーダーの囲みを突破した者の排除。 また、場合によっては突入も行う予備兵力だ。

 建物は堅牢なのだが、大分古いものなので魔法による爆撃は行わないことになった。


 作戦開始時間まで、待機位置で待機する。

 私は、クーとリッカと共に建物の右側。 エルザ以下3名は左側だ。


「クーちゃん、私が前に出ますので、クーちゃんは無理をしないで下さい。」

「ありがとうございます、リッカさん。 でも、心配無用でお願いします。 私も冒険者暦は結構長いですから。」

「そうよ、リッカさん。 クーは、あなたが思っている以上に強いわよ。 それにブルグマンシアは、私たちにとっても敵だからね。」

「分かりました。 ですが、十分に注意して下さいね。」

「はい。 リッカさんも。」


 周囲はすっかり暗くなり、作戦開始時刻が近づく。

 建物の周囲には、見張りだとかそう言った人がいるようには見えない。

 あくまで、孤児の保護施設を装っているため、見張りなどを立てていないのだろうか?

 それとも、油断しているのか。


 ノイマン率いる正面突入部隊が、突入箇所に移動を始めたのが見える。 

 私たちも、待機位置を目指して移動を開始した。


 いよいよ、ブルグマンシアの拠点攻略が始まった。



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