2【女神と俺】
うわぁー
「そうですか。
ありがとうございます。
とても嬉しいです」
女神は、微笑み俺にそう返してくれた。
その瞬間、自分の想いが少しでも伝わった事への安心感からか、身体中の力が抜け倒れた。
女神が俺に何か声をかけているような気がするが、睡魔を退けることが出来ず、そのまま意識を手放した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺が倒れてからどのぐらい経ったのだろうか?
そもそも、あれは現実の出来事だったのだろうか?
俺は、意識が段々戻って来るのを感じながらそんなことを考えていた。
「目が覚めましたか?」
その声を聞いた瞬間に意識が覚醒した。
あれ?この声、女神の声だ!
てか、何か頭に柔らかい感触が。
その感触を確かめるべく手で触ってみた。
「きゃ!」
何今の可愛い声!
そして、俺が女神に膝枕をされていたことに気づき慌ててどける。
「ご、ごめんなさい」
「あ、いいんですよ。
少しビックリしただけです」
「あの〜」
「はいなんですか?」
「今更なんですけど、ここってどこですか?
俺の記憶が正しければ俺って寿命で死んだはずですよね?」
「はい、その通りですね。
あなたは寿命で亡くなっています。
ここは、あなたがいた世界とは違う世界の神の住居的な場所です」
「ん?
よくわからないんですが?」
「詳しく話すには私の昔話をしないと行けないですがいいですか?」
「はい、お願いします」
◆ ◇ ◆ ◇
「私は、あなたが来てくれたあのおんぼろ教会にいた女神でした」
自分でおんぼろとか言っちゃうんだ。
「あのおんぼろ教会は昔は結構な数の信者が祈りを捧げてくれてとても大切にされていたんです。
しかし、時間と言うものは残酷ですね。
時代が進む事にあの教会に訪れる人も減り、だんだんと風化していきました。
私もあの教会と共に廃れていくつもりでした。
しかし、ある時あなたがあの教会に来てくれました。
あなたは、あんな廃れた教会に真剣になって祈ってくれました。
私は、嬉しくてたまりませんでした。
このまま廃れていくのが勿体なくなってしまいました。
あなたが目を開けた時、目に入るところに小物入れを置いたのも私です。
あの小さな像に私の神気の半分、簡単に言うと私の分身を入れてあなたについて行こうと決めました」
ってことはあの時の像は持って帰っても大丈夫だったのか、安心した。
「その後、あなたの夢に出てお話をしよう試しました。
あなたは最初、私を見て祈りを捧げるだけで何も話してはくれませんでした。
そんなになって必死て何を祈っているのか?と悪いとは思いながらもあなたの頭を覗かせて貰いました。
そしたらすごい数の不運な出来事の数々、これはさすがの私も可哀想に思い、私の加護をあげました」
ってことは俺の運気が上がってきたのって女神の加護のおかげだったのか。
「それから、だんだんとあなたは私と話してくれるようになり、とても楽しな、夢のような時間でした。
もしかするとあの時から私はあなたに少しづつ惹かれていたのかも知れませんね」
「え?」
え?どういうこと?
女神が俺に惹かれていた?
「ある時、神様の中でも偉い方に話を持ちかけられました。
「あのおんぼろ教会はそろそろ取り壊されるだろう。そうなればお前も消えれなくなってしまう。
その前にこの世界と違う世界の管理をやらんか?
そうすれば消えることもないだろう」と言う話でした。
しかし、あの時の私は消えてしまってもいいと思っていました。
あなたとの時間を最後まで楽しめるのならそれでいいと。
その偉い神様にその事を伝えると、少し考えたあと、凄い提案をしてくれました」
「凄い提案?」
「そうです。
凄い提案です。
私が違う世界の管理をするかわりに、あなたが死んだあとの魂を私が管理している世界に持ってきて、もう一度人生を歩める権利をあげることです」
「え!それってめっちゃ凄いことですよね!」
「当たり前です。
そして私は、あなたが異世界に行ってみたいなぁーって言ってたことを思い出し、あなたのためにもなるならやってみようと思いその提案を受けました」
「えーと、俺のためにあまり乗り気でなかった仕事を受けてくださってありがとうございます」
「いえ、いいのですよ。
私がやりたくてやったことです。
あなたが嬉しく思ってくれるのなら、私も嬉しいです」
女神がいい笑顔で言った。
「それで、これから俺が行く世界はどんな所なんですか?」
「あなたが憧れていた剣と魔法の世界ですよ」
「おー!」
「あのそれで、俺はあなたと一緒に居られないのでしょうか?」
「私もあなたと一緒に居たいです。
しかし、私は神であなたは人間。
今のままでは厳しいんです」
「やっぱりそうですか」
わかってはいたが実際に言われると中々きついものがあった。
「でも、何も手段が無いわけでは有りませんよ?」
「え!?
どうすればいいんですか!?」
女神のその言葉に一筋の希望を感じ食い付き気味に聞いた。
「あなたが今から行く私が管理している世界で何か大きいことをしてください」
「例えば?」
「例えば、魔王を倒すとか、大国の王になるとか、後はハーレムを作るとか」
あれ?なんか最後だけ変じゃなかった?
「は、ハーレムですか?」
「そうです、ハーレムです。
しかし、ハーレムを作るなら条件があります」
「条件ですか?」
条件という言葉を聞くと何か怖くなってしまうな。
「絶対に私のことを忘れないこと。
私のことを一番好きでいることです」
女神の言ったことは俺にとって当たり前のことだった。
「そんなことですか。
心配しなくても俺はあなたのことを絶対に忘れませんし、今も、これから先もずっとあなたは俺の一番ですよ」
「ありがとうございます。
それを聞いて安心しました」
「これを持ってください」
「これはなんですか?」
「これはマジックバックです。
これに当分の食べ物やあり多くはないですがお金も入れています。
私も最初の一ヶ月は念話でサポートしますが、一ヶ月を越えると私とあなたが話せるのは夜あなたが寝てる時間だけです。
あとこれも肌身離さず持っていてくださいね」
そう言って女神は、俺が死ぬまで大切に持っていた小さな女神の像を俺に渡した。
「これは!
ありがとうございます!
絶対に大切にします!」
パチン!
女神が指を鳴らすと目の前に大きな扉が出てきた。
「あの扉の向こうに行けば異世界です。
気をつけて行ってください」
「ありがとうございます!
絶対に大きなことを成し遂げてあなたを迎えに来ます!」
俺は、扉に手をかけたところで止まった。
俺はこのままこの扉の向こうに行っていいのか?
やり残したことはないか?
もう後悔はしたくない。
よし!
俺は扉から手を離し、女神の方に振り返り近づいて行った。
「どうしたんですか?」
俺は無言で近づき、女神の頬に手を置いた。
「あっ」
さすがの女神も俺のしようとしていることに気が付き目を閉じた。
俺は女神に顔を近づけていき、唇にキスをした。
実際は三十秒ぐらいの出来事だっただろう。
だが、俺の中では一生分の思い出の時間になった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
その後、俺達は短い挨拶をして、俺は扉の向こうに入っていった。
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