1【俺と女神】
むしゃくしゃしてやった後悔はしている。
「うぅ〜ん。
あれ?
ここはどこだ?」
気がつくと俺は何も無い真っ白い部屋の中で横になっていた。
「あれ?
俺は寿命で死んだはずだよな?
ってことはここは天国か?」
「違いますよ」
「うわぁっ!」
返事が返ってくるとは思っていなかったのでビックリした。
「誰だ?
どこにいるんだ?」
俺は何も無いところから声がしたので周りを見渡しながらそう言った。
「ここですよ」
誰かがそう言った瞬間に眩しい光が部屋一面に広がり、俺は眩しすぎて目を瞑った。
光が収まり、目を開けるとそこには髪が白みがかった金髪で、白い服を着て、背中には白い羽の生えたとてつもない美人がそこにはいた。
だが、俺はこの人?
女神?
を知っている。
この声も聞いたことがある。
今まで俺が、信じてきたただ一人の神様、そして夢の中に出てきた女神そのものだった。
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俺の名前は、菅原 眞。
どこにでもある一般家庭に生まれた。
だが、俺は少し普通ではなかった。
俺はとてつもなく運が悪い子供だった。
二分の一の問題はほぼ百パーセント間違えるし、道を歩けば犬のフンを踏んだり、鳥がフンを落としてくることは日常茶飯事で、中学の頃は放課後に運動場の近くを通ると高い確率で野球ボールやサッカーボールが飛んでくる。
本当にヤバかったのは、工事現場の近くを通った時に上から鉄パイプが降ってきたことだ。
このようにもう命に関わってしまうほど運が悪かった。
そんなことが起き続けているのを放っておくことは出来ないので、神社に行きお祓いをして貰ったり、中学二年生の時には日本にあるほぼ全ての神社やお寺に行きお参りをした。
多少ましになったかな?と思うぐらいでほとんど何も変わらなかった。
だが、このままにしておくと本当に命が危ないかもしれないので、高校に入ってすぐにバイトを初め、お金を貯めて、それでも足りない分は親に頼み出してもらい、高校二年の夏休みにお父さんと海外の教会を回って祈りを捧げることにした。
有名なハットルグリムス教会や聖マリア教会などを回って祈りを捧げていた。
だが一向に効果が現れることはなかった。
もう諦めて帰ろうかとしていた時、町外れにあり使われなくなってボロボロになっている教会が目に入った。
もう誰もこの場所で祈りを捧げることなど無いだろうと思ってしまうほど廃れた教会。
気がつくと俺の足はその教会へと向かっていた。
そして、壊れている扉を避けて中に入った。
中には、割れた窓ガラスの破片が散らばっており、木の椅子も壊れていてとても座れるような状態じゃなかった。
たが、ただ何枚か割れてしまっているがまだ殆ど割れずに残っているステンドガラスから射す光を一心に浴びた大きな女神の像は、今まで行ったどの教会よりも綺麗に見えた。
俺は、その大きな女神の像の前に跪き、何も考えずただ女神の像に向かって祈った。
だいたい三十分ほど祈っただろうか?
そっと目を開けると小さな小物入れが目に入った。
なんだろうと思いその小物入れを開けると、中には女神の像そっくりの小さな像が入っていた。
さすがに持って帰るのは駄目だとは思ったが、その女神の像に毎日祈りを捧げたいという気持ちが大きく、結局持って帰ってしまった。
その日から俺は毎朝その女神の像に向かって祈りを捧げていた。
すると段々、運が悪いなぁ〜と思っていたことが減っていき、一年が経つ頃には普通の人と変わらないぐらいの運の良さになっていた。
それからの人生は、運が悪いと思うことが無くなり、普通に就職し、恋をして結婚をし、子供もでき、寿命で死んでいくという幸せな人生を送ることができた。
これも全てあの女神の像のおかげだと思っている。
だが、一つあの女神の像のことで不思議なことがあった。
あの女神を持ち帰った日、いつものようにベッドで寝ていると不思議な夢を見た。
夢の中であの女神の像にそっくりな女神が出てきた。
その女神は何も言わずに俺の方を見ている。
そして、俺は女神は俺が作り出した幻想だろうと思いながらもその女神に対して祈りを捧げる。
そんなことがだいたい週一ぐらいで起こった。
そして、それを二十年ほど過ぎた頃からは祈るだけではなく、その女神と世間話をする夢も見るようになっていた。
そんな日々を過ごしていると段々俺はその女神に惹かれていき、気がつくとその女神のことが好きになっていた。
だが、その女神は俺自身が作り出した幻想だろうと思っていたので好きだと伝えることもなかった。
おれが八十歳を超えたあたりで、その夢を見ることが無くなった。
その時、俺は後悔した。
例えそれが俺自身が作り出した幻想だったとしても好きと伝えればよかった。
もし次会うことが出来たら今度こそ、好きだと伝えよう。そう心に誓った。
しかし、その想いが届くことなくその日以降、女神の夢を見ることはなく死んで行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今、目の前にいる女神は、俺が生きていた頃に夢の中で会った女神そのものだった。
俺の頬には思わず出てしまった涙がつたった。
「なんで泣いているんですか?」
そうだ、この声だ俺がずっと聞きたかったこの透き通るような綺麗な声。
「いえ、なんでもありません」
俺は、涙を拭いながら返事をした。
「そうですか?
何かあったら言ってくださいね」
そうだ昔からそうだった、この女神は俺の心を読もうと思えば読めるのにあえて読まずに俺としっかり会話をしてくれる。
そういうところも俺がこの女神に惹かれていった理由の一つだった。
でも本当にこの人は俺の夢に出てきた女神なのだろうか?
そう疑問に思ったので聞いてみることにした。
「あの、すみません」
「はい、なんですか?」
「あなたは、俺の夢に出てきた女神ですか?」
そう聞くと女神はにこやかに微笑んだ。
「そうですよ。
覚えててくれたんですか。
嬉しいです。」
まじでそうだった!
よし!
前から決めていたように告白するぞ!
「あ、あの!」
俺は、お腹からだけではなく、身体中から声を出す感じで声を出す。
もうこれを言ったあとは倒れてもいいという覚悟で、少しでもこの女神に俺の気持ちが届くように。
顔に汗が垂れてくるがそんなことを気にしているような余裕は俺にはなかった。
「はい、何でしょう?」
「あの時は自分の作り出した幻想だろうと思って言えなかったけど、あなたが俺の夢に出てこなくなってから、ずっと言わなかったことを後悔してました!
あなたに助けて貰った分際で、人間の分際で、こんなことを言うのはおこがましいことと言うのはわかっています。
ですが、言わせてください。
あなたのことが六十年以上前から好きです!」
断られることなんかわかっている。
女神を困らせてしまうかもしれないことも、女神を怒らせてしまって俺の存在が消されるかもしれないこともちゃんとわかっている。
だが、言わずにはいられなかった。
これは俺がずっと忘れられなかった想いだったから。
読んで下さりありがとうございます。
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