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私(ストーカー)の恋  作者: Tokimine
メインストーリー
10/19

裏切り

彼女が知らない、裏切りの裏話。

私は好きだ。彼の事を。

彼女は好きだ。彼の事を。

私は決めた。彼女を応援すると。

私は考えた。応援する意味を。

私は変えた。私の意志を。

私は決めた。彼女から彼を奪うことを。



「それでね、偶然会った橘君の自転車の後ろに乗せてもらったの」


彼女が電話をかけてきた。

彼の自転車の後ろに乗ったらしい。

正直興味がない。

生返事をしつつ、適当に聞き流す。


「からかわないでよ」


どうやら勘違いをしている。


「別にそんなつもりは無いよ、ただ・・・」

「ただ?」


少し、遊んでみるかな。


「意外と積極的だなぁと思って、隅に置けないねぇ、優等生さん」

「さっきも言ったでしょ、偶然なんだって」


彼女の赤らんだ顔が目に浮かぶ。


「はいはい、そういうことにしておいてあげる」


明日適当に言いふらしてみるか。


「学校休もうなんて考えちゃ駄目だからね、真面目な優等生さん」


休まれては面白くない。


「私そんなに真面目かなぁ」


真面目だ、糞真面目だ。

彼女の恋は真面目すぎる。

それに、押しが弱いところも気に食わない。


「優等生は否定しないんだね」

「私の趣味、知ってるでしょ」


それは飽くまで恋愛をする前だ。

お前の趣味とは関係ない。


「今はもうやってないんでしょう?」


そろそろ退屈してきた。


「まあ、そんな事はどうでも良いんだけど」


少し遊んでやろう。


「閑話休題!」


私は大声でそう言った。


「本題があったの?」


彼女は質問した。

私は彼女に言う。


「ミサ、橘君の電話番号知ってる?」

「いや、知らないけど・・・、それがどうかしたの?」

「え?!ミサ、まだ教えてもらってないの?!」


驚いた。

素で驚いた。

それくらいはしていると思っていたのだが・・・


「別に困ってないし、聞く必要無いかなって思って、それに・・・」


勇気がないのだろう、分かりやすい。


「困るとか困らないとかじゃなくってさ、思ったりしないの?」

「何を?」


やはり、美しすぎる。


「声が聴きたいって、思わないの?」

「思わないけど」

「思わないの?!」


今度は"ふり"だ。

本気で驚くようなことではない。


「だって毎日学校で聞いてるし」


それだけで満足な訳がない。


「それは聞こえてくるだけでしょ?」

「駄目なの?」

「駄目とかじゃないけどさ・・・、もっと話をしたいとかって思わないの?」

「それは・・・」


彼女の恋はもっと汚れたほうが良い。


「とにかく、今日中に聞き出してね」


じゃ、おやすみ!

そんなテンションで、電話を切った。

彼女なら、今日中に彼に電話をするだろう。

そして、“告白もするだろう”。

彼女はそういう子だ。

つい勢いで言ってしまう、何て事がありそうな予感をしていた。

電話をしている最中で恋愛ドラマの告白シーンも流した。

無意識のうちに意識するようになる確率は十分にある。

しかし、それは電話ではなく、メールだ。

彼女には勇気が足りない。

意見を声で伝えることができない人種だ。

・・・先回りしてみるか。


『今晩、ミサがあなたにメールで告白してくると思うけど、ドッキリだから気を付けてね』

送信


こんな感じで良いか。

これで、とりあえず明日の放課後の二人は気まずくなるだろう。

告白をしてしまったがどう接すれば良いのか分からずあたふたする美沙と、

いつになってもドッキリだったと言ってこない美沙に対して困惑する橘。

きっと見ものだ。


日付は変わって次の日、私は登校中に美沙と合流し、昨日の夜の出来事について聞いていた。


「なるほどねぇ」


とは言ってみたものの、私がやらせたようなものだし。

そろそろ次の段階に。


「面と向かって『付き合って』って言えば?」

「無理に決まってるでしょ!」


またか。


「心配しなくても断られたりしないわよ、絶対に」

「だ、だとしても言わないからね、絶対なんだから」


そっか、あなたがそう言うなら、私は行動するよ。

私だって子供だ。

あきらめることに、慣れていない。


その勢いの無さに後悔するがいいわ。


『話したいことがあるの。

今日は委員会だったっけ?

じゃあ、その後にこの公園に来て。

地図は貼っておくから。』

送信


決着をつけましょう、旭日美沙。


6限が終わった。

私は部活には参加せずに一旦家に帰ってから例の公園へと向かった。

平日という事もあって広い公園は閑散としている。

先ずは彼と合流してからのデートコースを確認しておこう。

公園入り口付近の噴水広場からスタートして池の周りの遊歩道を一周する。

その間に、私は彼に言うべきことが沢山ある。


噴水広場に戻ってきた。

かかった時間は大体15分。

少し短い気もするが、この際仕方が無い。

この辺りの地域でトイレのある公園は、ここ位しかなかったし。


彼が来るまで、あと30分程度か。

最後のやるべきことを済ませてしまおう。

それに鞄も何処かに置いておかないと動きにくいし。


準備は整った。

そろそろ彼が来る頃だろう。

私は公園入り口側の正面の通りを見ていることにした。

公園自体は閑散としているものの、その前の通りは結構、賑わっている。


目まぐるしく―――とまでは行かないが、行きかう人々の影を暇つぶしに見ていると、公園へ入場して来る男を見つけた。

私の中学の制服を着ていた。

学ランの胸元に校章がついている。

写真部の他の男子よりも少し広めの肩幅と大きめの歩幅、少し怖い目つき。

下ぶちのない眼鏡が彼の目の怖さを誇張している。

間違いなかった。

約3年間、見続けてきた、彼だった。

橘綺凱だった。


「おまたせ黛」

「ごめんね、呼び出しなんかして、ミサにはあとで謝っておくよ」

「何であいつに謝るんだよ」


分かっているくせに。


「ミサから全部聞いてるの」

「・・・」


あ、黙った。

本当に分かっていなかったのか、どんどん顔が赤らんでいく。


「と、とにかく、メールで言ってた話したい事って何だ?」

「うん、それは歩きながら話そうと思って、ついてきて」


さて、何から話そうか。

それにしてもさっきから、やけにそわそわしているけど。

警戒している・・・訳じゃないようだ。

もしかして緊張しているのか?

美沙相手ならまだしも、私と歩くだけで緊張するって、こういう事に耐性がないのだろうか。

まあ耐性なんて、もう関係ないんだけどね。


「ねえ、橘君」

「な、なんだよ」

「そんなに緊張しなくていいよ」

「し、してないぞ」


今の別に意地を張る必要なかったと思うけど。


「ねえ、橘君」

「・・・なんだ」

「美沙の事、好き?」

「っ!?ゲホッ!ゴホッ!」


そんな、あからさまな態度をとられるとウザいんだけど。


「動揺しすぎ、やっぱり、本当だったか」

「え?あ、うん、本気だった」

「私をふるための口実じゃなかったのね。」

「ああ、って、え?!」


やっぱり望み薄か。


「どこが好きなの?」

「いや、そんな事よりも!さっきの一体どういう意味だ?!」

「え?あぁ、私に告白されるのが嫌で嘘を言ったのかなぁ、って思ってたから」

「お前あの時俺にコクろうとしてたのか?!」

「そんなことはどうでも良いのよ、で、美沙のどこが好きなの?」

「どうでも良くないんだけど・・・えっと、分からないって言ったら怒るか?」


まあ、そう答えるとは思っていたけど。


「怒らないよ、好きっていうのは、それ自体が曖昧な言葉だからね」

「そっか」

「いつから好きになったの?」

「それもいつかは分からない、でも」

「でも?」

「自覚したのは、お前に『好きな人っている?』って聞かれた時だったと思う」

「・・・そう」


つまり、私は墓穴を掘っていたわけか。

期せずして掘っていたわけか。


「それじゃあもしあの時に、質問なんてせずにいきなり告白していたら気付かなかったかもしれないっていう事だね」

「そうかもしれないな」

「そこは否定しておきなさいよ、そんなこと、彼女の前で絶対に言っちゃだめだよ」

「わ、分かってる」

「ならいいけど」


私はさっきから何がしたいんだろうか。

彼が美沙の事をどう思っているかなんてもう関係ないことなのに。

私はまだ躊躇ちゅうちょしているのだろうか。


彼を亡き者にすることを。


「ねえ、橘君ってさ、誕生日いつなの?」

「え、いきなりだな・・・今日だよ、今日で14歳になる」


そういえば前にもこんな話をした気がする。

ということは、彼の誕生日と命日は同じ日になるという事か。

何それ、すごく悲しい。

今日はやめてあげようかな。

なんて、冗談。

もしかすると無意識のうちに分かっていたのかもね。

今日が彼の誕生日だってこと。

そして実行日を今日に選んだのはきっと。


「もう、一周してしまったな」

「あ、ほんとだ、いつの間に」


さっき私が歩いた時には15分くらいだったのに、まだ10分程度しか経ってない。

あ、そうか、彼の歩幅は私よりも大きいから。


「予定よりも早く着いちゃったな」

「予定?」

「何でもない」


こんなところで計画がばれてはいけない。


「ジュース買ってくるね」

「え、あ、うん」

「噴水の縁にでも座っておいて」

「分かった」


もう私の覚悟は決まっている。

彼と一緒になれないのならいっそ、この手で。

私はトイレの近くを通りかかった。

そして女子トイレに入っていく人影を見た。

珍しいな、この公園に一人でいる女性なんて、ただでさえ清掃員しかいない様な所なのに。

まあ、例の個室に気付かれなければ問題はない。

一応内側から鍵はかけているし。

あそこには私の鞄もある。

そろそろ自販機に着くし、鞄から財布を取り出さないと。

あ、しまった。

鞄は個室に置いているんだった。

何故気付かなかったんだろう。

もしかして浮かれていた?

何故?

彼と話をしたから?

その程度で?

いや、きっとそうなんだ。

彼だってさっきまで緊張してたし。

意識してしまうものなんだろう。


「お待たせ」

「あぁ、って、ジュース買いに行ったんじゃなかったのか?」

「そうなんだけど、財布を家に置いてきちゃってたのを忘れてたよ」

「そっか」

「そんなに飲みたかったの?」

「まあ、水筒のお茶が切れているからな」

「ねぇ、橘君」

「なんだ?いきなり、そんな改まって」


無理だって分かっていても、これが最後のチャンス。

私が踏みとどまるチャンス。

殺さずに済む、分岐ルート。


「あのね、私」


公園の電灯が一斉に着いたそれは―――


「ずっと前からあなたの事が好きでした、私とお付き合いして下さい!」


―――それは、その様子はまるで―――


「ごめん、黛、俺はお前とは付き合えない」

「何で?」


―――まるで―――


「俺は旭日の事が好きだからだ」


―――まさに“暗い未来への道案内”だった。


「そっか」


分かっていた。

最初から。

でも、最後に思い出の一つは残しておきたかった。


―――そうだ、私が今日を実行日に選んだのは―――


「ただ、最後に思い出が欲しかっただけ」


そうだ、それだけだ。

きっと。


「どうした、何か言ったか?」


決心はついた。

私は、スカートのポケットにしまっておいた2本の結束バンドを取り出す。

そして、彼の両手を握る。


「ど、どうしたんだよ、一体・・・?おまえ、いったい何を企んでいる」


両手の親指を縛った。

そして素早く、彼の首にもう一本の結束バンドを付ける。


「このまま絞められたくなかったら言う通りにしなさい」

「一体何がしたい・・・わかった、どうすれば良い」

「女子トイレに行きなさい」

「俺は男だぞ・・・分かったよ、言う通りにする」




トイレ前に着いた。


「扉が閉まっている個室の前まで行きなさい」


そう指示をする。

ここのトイレの鍵は開けようと思えば外からでも開く事ができる構造になっている。

鍵を開いて、中に入る。

そこには、財布と包丁と拘束に使う麻縄が入ったカバンが置いてある。

便座の蓋は開いていて、いつでも座らせることができ、足元には片手で足を拘束できるようにセットした麻縄があった。


「座って」


そういいながら床の麻縄を掴む。

結束バンドは握ったままだ。


「抵抗したら、首絞めるからね」


そう言って足を縛る。

これで彼は身動きがほとんどできなくなった。

鞄に手を伸ばして次の麻縄を取り出す。

それは輪っか状になっていて、片手で縛ることができるようになっていた。

結束バンドはまだ握っている。

今度は胴体を縛った。

これで彼は完全に体の自由を奪われた。

その時、彼が抵抗できない状態になって安心したのか、結束バンドから手が離れた。

そして、女子トイレに声が響いた。


「そこまでよ、馬鹿な真似はもうやめて、“あーちゃん”」


突如、頭上から聞きなれた声が、そう言って割り込んできた。

見上げると個室の壁に

二人と同じ学校の制服を着た、深い栗色の長い髪を持つ女の子が座っていた。


それは二人のクラスメイトで、旭日美沙で。



―――つまりは、私だった。

分かりやすく言うと、ミサは"ふちこちゃん"風に座っています。

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