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嫌いな主  作者: 小田桐
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春のドライブ


 夕月が脅えていた。狭い密室に閉じこめられ夕月は逃げ道がない、夕月の運命は俺の手に握られている。

「わたし・・・怖いわ・・・・」

 ダメだよ、夕月。もう遅い、走り出したら止まらないんだから・・・・・。

「お願い、助けて・・・・」

 夕月になにを言われようと俺は止まるつもりはなかった。たとえ、どんなに傷つけることになったとしても。

「いや〜〜〜」

 夕月の悲鳴が響き渡った。


「私、そんなに怖がっていませんから・・・・・」

 時間に余裕ができたときに念願の免許を手にすることが出来た。さすがに車を買う余裕まではなかったが、とりあえずは免許を欲しかったのだ。



「どうして2人がいるんですか?」

「面白そうだから」

「心配だから」

 免許を取り、運転を田中さんに教わろうとしてる時だった。社長から許可を得て車を借りることができた、助手席に田中さんが乗り俺が運転するはずだった。だけど、後部座席に京司さんと夕月がちゃっかり乗っていた。

「危ないから家に帰ってくださいよ」

「別に公道を走るのを初めてってわけじゃないだろ?すでに免許持ってるんだから」

「でも、この車を運転するのは初めてです」

「いいから、俺たちのことは気にするなって」

 必死に抗議するがどうやら下車するつもりはないらしい。仕方なくエンジンをいれることにした。

「芦屋くん、最初はゆっくりと走ってくださいね」

「はい、わかりました」

 屋敷の周りを走ってからバックや車庫入れを練習する。何度も何度も切り返しをしないと上手く止まれなかったが数を重ねていくうちになれてくる。それに田中さんの教え方も上手だった。

「芦屋くんは素質があるみたいですね」

 褒められると嬉しくなる。でも、遠出とかドライブを期待していたのだろう、後ろの2人はつまらなそうだった。それでも30分ぐらいはおとなしく車庫入れの練習を見ていてくれた。

「なぁ、理央、車庫入れを見てるの飽きた。せっかくだからどっか遠く行かない?」

「自信がないからいやです」

「田中さんも付いてるし大丈夫だって」

「私はもう少ししたら出ないと行けないのでそれは無理かもしれないです」

「ということです」

 その日の練習は何事もなく終わった。練習を終えた車を洗車して元のあった場所に戻して夕食を食べる。それで終わるはずだった・・・・・


「理央、ドライブ行くぞ」

 突然の誘いだった。夕月と夕食の片付けをしてるときに突然思いついたように京司さんが提案する。

「誰の運転ですか?」

 いやな予感がしたので一応聞いてみる。

「もちろん、おまえに決まってるだろ」

「いやですって」

「ユヅも行くだろ?」

「うん」

 俺の意見を聞くつもりはないらしい。俺はすがるように社長を見る、目があったから救いの言葉がかかることを期待した。

「あまり遅くなるなよ」

 お子さんたちを危険にあわせたいのですか?



「リオくん、信号赤だって」

 わかってるって、俺にだって目はあるよ。

「歩行者が歩いてるよ、スピード落とさないと」

 大丈夫だから、この距離ならぶつかったりしないって。

「対向車が来てるわよ」

 助手席に座って夕月がうるさかった。そんなに怖いなら乗らなければ良いのにって何度心の中で呟いたことやら。

「大丈夫ですよ、スピードも出してないしぶつけたりもしませんよ」

「心配なんだろ?おまえが自信なさそうに運転してるから」

 後部座席から京司さんの声が聞こえる。

「俺は別にぶつかるとは思ってはいないからな」

 この一言で救われるね、夕月にあれほど言われてたら誰だって自信なくすさ。

「で、どこに行けば良いんですか?」

「そうだな、コンビニで花火でも買って河原にでも行くか」

 しばらく走ってるとコンビニが見えたのでそこに寄ることにした。そのコンビニは反対車線に合ったので右折するときに夕月の叫び声がうるさかったが。

「さすがにバックを練習しただけあって一発で入れたな」

 京司さんが褒めてくれる。田中さんの練習の成果が早くも現れたところだった。

「これぐらい余裕ですよ」

 俺は地球に優しい男なので車から降りるときはエンジンを切った。コンビニで花火とジュースを買った。


「リオくんが来て一年がたつのね」

 線香花火を手にして夕月が言った。小さな花火はすぐに玉が落ちてしまう、だけどその儚さが美しい。

「そうですね、最初はどうなることかと心配でした」

「ユヅと上手くやっていけなくてか?」

「それもありましたね」

 苦笑して答えた。でも、ホントにそれが一番の問題だったんだけどね。

「今はもう大丈夫ですけどね。でも、夕月さんだって私のこと苦手だったでしょ?」

 答えにくい質問をしたのかもしれない。夕月が考えてる。

「そんなことなかったよ。ずっと仲良くしたいと思っていたもん」

 ホントにそう思ってくれていたら嬉しいよ、でも俺の方は最初は君のことが苦手だったんだ、ごめんね。

「こうやって遊べるようになってホントに嬉しいですよ」

「ホントだよな、俺だっておまえたちが心配だったんだぜ。余計に夕月がこもりがちになったら困るし、でも理央は良い奴だから追い出す訳にも行かなかったしな」

 あなたは追い出そうと考えてたんですか・・・・・

「さて、帰るか」


 余談だが帰りも助手席から夕月の悲鳴が鳴り響いていた。俺は絶対に夕月を車に乗せないと誓った。


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