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嫌いな主  作者: 小田桐
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嫌いな日々2


 俺は相手が傷つく言葉を選ぶことが出来た、そしてそれを口にしていた。夕月もそうだった、俺と夕月はお互いに嫌な部分が同じだったのだ。いや違う、同じなのは嫌な部分だけじゃない、俺と夕月はもっと根本的な部分が同じだからお互いに疎ましく思い合っていた。

 だから俺たちはあんな言い争いをしてしまった。

「私はあなたみたいな人が嫌いです」

「奇遇だね、俺も君みたいな人が嫌いだ」

 でも、違っていた。夕月を嫌うほど自分自身を嫌っていく、ホントに嫌いなのは友人の中にある自分自身の姿だった。それを知っていても相手を嫌わずにはいられなかった。


「でも、それって・・・。自分を好きになれたら相手の事だって好きになれることですよね?絶対に、そうですよね・・・・」

 ああ、その通りだよね。君は俺の合わせ鏡なんだから。



 俺たちが言い争った時に社長も京司さんも近くにいなかったことは幸いだった。もし、2人が俺たちの話を聞いていたらきっと傷ついていたに違いない。俺たち自身だって傷ついたのだから。

「理央って私みたいな中学生にヘコヘコして恥ずかしくないんですか?」

 どうしてこんな言い争いをしてるんだろう。

「別になんとも思いませんよ。夕月さんみたいな器の小さいに人間になんと思われても」

「それなら、あなたのほうが小さいでしょ。そんなにお金が欲しいの?なんのためにお金を貯めてるかはわからないけど、あなたが言う器の小さい人間のご機嫌をとらないと行けないなんて不憫ですね」

 ああ、ダメだ。言わなくてもいいことまで口から出てしまう。

「親が金持ちだと良いものですね。社会に不適応でも生きていけるんですから、お金を稼ぐ必要だってこれから先無いでしょうね」

「私と親は関係ないわ」

「関係あるから私は今、あなたのお世話をしてるんでしょう?」

「別に私が頼んだわけじゃないわ」

「そうですよね、自分で誰かに何かを頼むことが出来る人なら私がここにいる必要はないでしょうからね」

「なによ、その言い方」

「気を悪くされたなら、ごめんなさいね」

 気を悪くされたらならだって、こんな事言われて気分の良い人間なんているはずないじゃないか。それにしても気持ち悪い、自分が嫌なことを言うたびに気分が悪くなる。

「大切な人が亡くなったら、自分の生きる意味もないって思ってるんですか?それだったらあなたには最初から意味なんて無かったんですよ。それを知ることが出来て良かったですね」

「なら、あなたがやってることって意味が無いことなんですね?意味がないモノに無理矢理くっついてお金をもらってあさましい」

「それはお互い様」

 夕月が涙目になってきている。いや、泣きそうなのは俺も一緒。それが顔に出てなければいいが・・・・。

「そんな風に思ってるなら最初から口に出せば良かったじゃない?」

「口に出せないから今までこうやって夕月さんの側にいるんじゃないですか」

 これは俺の都合じゃないか、夕月が悪い訳じゃない。

「なら、どっかに行ってよ。私の近くに来ないでよ」

「できることなら、あなたの知らない場所で暮らしていきたいですよ。だけど、そう言うわけにはいかない。俺だってあなたの近くに居たくない」

「イヤよ」

「それなら、俺にどうして欲しいの?」

「死んで欲しいわ」

「そうでしょうね、夕月さんはそう言う人間ですから」

 なんでこんな言葉しか出てこないんだ。夕月が嫌いな俺を追い出さないのは優しいからじゃないのか、親や兄に頼めば俺を追い出すことぐらい簡単にできるじゃないか。それに言い争ってる時もそうだ、暴力になれば夕月の方が強い。でも、夕月は誰かを傷つけることは出来ない娘。

「私は絶対に他人に媚びを売りながら恥をさらして生きていかないわ。あなたのそう言うところが大嫌いです」

「奇遇ですね。俺だって自分の意見を言うことを出来ながら何も言わない、何もしない怠惰な人間は大嫌いですよ」

「それでも理央は私の側にいるつもりなの?」

「夕月さんはそれでも私を側に置かないといけないんです」

 だから、俺たちは一緒に屋敷に帰った。お互いに口も聞かない、顔も見ない。でも半径数メートル以内に相手を感じないといけない。死ぬほど苦しかった。


「ごめん」

 同じ部屋で夜の勉強をした後、帰り際に小さな声で俺は言った。夕月に聞こえないほどの小さな声で。別に反省をして謝った訳じゃない、夕月を傷つけた事に対して謝ったわけでもない、ただ思っても無いことを言ってしまったことに対して謝ってるだけ、夕月に対してか自分に対してかわからないけど。



「あの日、何について謝ったの?」

 夕月は4年後に俺に聞いた。だけど、俺はそんな昔のことは覚えてないと嘘をついている、今更みっともなくて本当のことなんていえるはず無いだろ?

 俺が本当のことを言えば夕月だってあのときのことを教えてもらえるのだろうか?でも、お互いに知らない方が良いことだってあるはずだ。特に憎しみ合っていた時の記憶なんて今の俺たちには必要ないんだから。

すれ違った日々を書くのって苦手です。お互いに何も話さず、なにもしないのであれば書くことがないですよね・・・・・

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