1話
バイトよりコンクリートの道のほうが分かる。読者諸君もそうだろう。歩いてない人なんていないだろう? いいことだよね、分かるって。読者諸君はこの世界のことも分かるかな? まぁ諸君の世界とよく似ているから分かるよね――主人公はどうだろう?
鈍行が音威子府村〈北海道の田舎〉の無人駅に着いたのは午前十時頃。そこで少女が一人降りる。すぐに鈍行は北へ行った。涼しい夏の青空の下、ホームは静かだ。ほかに誰もいないし、そもそも田舎の一部分だから当然だろう。で、降りた少女は跨線橋を渡り、駅舎に入る。と、その途端に引き返す。また跨線橋を渡ってホームに戻ると、ベンチに座る。
約四十分後、南から鈍行が停車した。また少女が一人降りた。鈍行が去る――と、
「日本の高校生さん、君はここで何をしているのかしら?」と今降りた少女は、依然ベンチに座っている少女に話しかけた。
「ナイン。中学生ってやつよ」と相手は優しい声で返事。「ナイン」と聞いたら普通は一桁の数字を連想するだろうけど、この場合の「ナイン」とはドイツ語で「いいえ」を意味する。ドイツ語使うんだね。まぁなんでもいいか。
「これは失礼。私はワンリンゴ・ブルー。私も中学生なんだ、仲よくしようよ」と今降りた少女――白人、腰まである金髪、金色の目、明るそうな顔、小柄、細身、白い長袖ワイシャツ、黒い長袖アンダーシャツ、青いズボン、白いスニーカー――は笑って言った「君の名前は?」
「マドカよ」と少女――日本人、ターコイズブルーのロングヘア、赤い目、クールな顔、小柄、細身、ピンク色のジャージ、黒いアンダーシャツ、白いスニーカー――も笑って答えた「よろしくね」
「よろしく、マドカ。君はここで何をしてるの?」
「暇潰し」
「暇潰し? こんなところで? 音威子府には楽しいところないの?」
「あるんじゃない? けれど私はここでいいわ。帰りたい時には便利だから」
「君はこの村の人じゃないんだね?」
「ええ違うよ。だからいいのよ、学校サボる場所には」
「へぇー、不良か。意外」
マドカは首をかしげた「そっか。 ――君はなんて呼べばいいの? ブルー?」
「友達とかにはジュッポンって呼ばれてる。けれどブルーでもいいわよ」
「ジュッポン? 変わってるね」
「でしょ? ――ねぇ、駅舎の中でサボったほうがよくないかしら?」
「なして?」
「なして」とは北海道や東北の方言で「どうして」を意味する。けっこう知られている気がするね。
「虫とか嫌じゃない?」
「嫌ね。けれど駅舎には先客が一人いるのよ」
「なるほど。――ねぇ、コンビニ行かない? 何か飲みたいの」
「ええ行きましょう」
駅舎に入る。
「誰もいないじゃない」とジュッポンは言った。
「本当だ。いつの間にか帰ったのね」
「もしかしたら君にビビって逃げたのかもよ? 不良なんでしょ?」とジュッポンは笑いながら言った。
マドカは苦笑して「それは悪いことしたね。なら謝らなくちゃ」
「謝るの?」
「悪いことしたら謝る。先生に習ったでしょ? 忘れた?」と優しく言った。
「ナイン。なるほど、そっか。――あっ、アイスも食べたいな。食べない?」
「ええ食べたい、――けれどちょっと我慢しない? 美深の道の駅においしい苺のジェラートがあるの。それにしない?」
「オーケー! ――じゃ飲み物はそこの自販機で買いましょう。『キスオンリー・ジャスティス・マート』のアイスの誘惑は強いから」
「分かる。じゃそうしよう」
その後、美深への電車はすぐに来た〈二人はそれまでに飲み物をゴミ箱にぽい〉。特急だった。それなら美深へは三十分くらいで行ける。隣町〈南側にある〉だからね。で、二人はあっという間に美深に到着した。道の駅へ行くにはまた何かに乗らなくてはならない。歩いて行くなんて無理。で二人はタクシーをチョイス。贅沢だからすぐに着いた。正午前の道の駅、まぁまぁの人がいる。だからってジェラートを並んで買うなんてことはなかった。
「デリシャス!」とジュッポンは言った〈道の駅施設の前で、タクシーを待たせて、ジェラートを載せたコーンを持ちながら。最近はカップという選択肢もあるが、作者は断然コーン派だ〉「教えてくれてありがとう、マドカ」
「どういたしまして〈彼女もコーンを選択しているよ〉」
デリシャス――作者もそう思うよ。もうずいぶん食べてないけどさ――だから二人ともあっという間に食べちゃった。
「デリシャスだった。チャージ完了。なんかやる気も出てくるな」とジュッポンが言った時、
「なら今からでも学校へ行くことね」と話しかけてくる人がいた。若い日本人の女性〈黒髪のロングヘア、黒い目、優しそうな顔、小柄、細身、紫色のジャージ、黒いアンダーシャツ、黒いスニーカー〉で「二人とも学生でしょ? 不良さん達」と微笑して聞く。
「不良?」とジュッポンは聞いた。
「ええ。今日は平日でしょ? なら学生は学校へ行かなくちゃ行けない。けれど私と話しているんだから」
ジュッポンは苦笑して「どうもすみません。今から行きます。マドカ行こう」
「ええ」
「待ちなさい」と女性は微笑してジュッポンに言った「今から学校なんて行かないでしょ。バレバレよ。先生を騙そうとするなんて悪いわね。だから君達に課題を出すわ」
「課題?」
「不良ってやることなくて退屈なものでしょ? だからちょうどいいじゃない? 暇潰しには。で暇潰しなんだけど、そうね――手始めに“見えないコウノトリ”を探し出してもらいましょう」
「“見えないコウノトリ”? 見かけないコウノトリの間違いじゃないんですか?」
「いいえ、“見えないコウノトリ”よ。そうじゃなきゃおかしいわ。でこの課題、やる?」
「ええやります。マドカは?」
「ええ、私もやるよ」
先生は微笑して「二人ともナイスね。さて、二人とも行きなさい」
「期限はいつまでですか?」とマドカが聞いた。
「そんなものはないわ。これは学校の課題じゃないんだから、――あっ、インターネットは禁止だから。じゃね」と先生は施設の中へ。
「マドカ、課題まずはどうする?」
《どうしてるかな――?》
とふと気になったマドカは「――ジュッポン、私の家に泊まってよ。課題を一緒にやるにはよくない?」
「オーケー。どこに住んでるの?」
「名寄」
すぐに二人はタクシーで向かう。道北で結構栄えている名寄市は美深の隣町だ。しかしタクシーでってやばいね。なにがやばいってお金がかかるからだ。たけー。作者なら絶対に利用しない。
で、一時間もかからずにタクシーは名寄駅に着いた。誰もいない。田舎らしい光景だ。田舎はめったに人歩いてないからね。車社会だから。だからって交通量も少ないけど。静かでいいよ。
「なして駅で降りたの?」とジュッポンは聞いた。当然の質問だね。
「駅で降りたらちょっとお得になるから」
「へぇー」と感心している。なるほどね。
「行きましょう」
十数分後、二人は足を止めた〈そのあいだ、二人はまず駅前通りを左へ行き、すぐに左手の跨道橋を上がる。下りると、右手は公園への坂、左手は住宅街の通りとなり、二人はもちろん左へ曲がった。で、すぐ左手にあるマンション〈三階建て六部屋〉まで歩いた〉。
マドカはその一階のインターホンを押す。
「家族に相談なしに私を泊めていいの? 今さらだけど」
「ええ、きっと大丈夫」
と、インターホンから「はい」
「私よ。ただいま」とマドカは優しい声で言った。
「おかえり」と嬉しそうな声。
すぐにドアが開いた。
「やぁミル、私がいないあいだに何かあった?」とマドカは微笑しながら聞く。
「大丈夫、何もないよ。――そちらの人は?」
「初めまして、ワンリンゴ・ブルーよ。よろしく」
「よろしく」
三人はリビング〈八畳〉に行った。
「今日泊めてもらいたいんだけどいいかしら?」とジュッポンは聞いた。
「ええもちろん」
「ありがとう。――二人はどういう関係?」
「同い年の親友で家族よ」とマドカが笑顔で答えた。とミル――日本人の少女、金髪のロングヘア、黒い目、控えめそうな顔、小柄、細身、ピンクのジャージ、黒いアンダーシャツ――は微笑してうなずいた。
「なるほど、素敵ね」
「ありがとう。――ミル、お昼ご飯は食べた?」
「ええ食べたよ。マドカちゃんは?」
「私はまだ」
「お腹空いてるなら何か作るよ?」
「ありがとう。けれど大丈夫。さっきジェラート食べたから」
「ジェラート? ひょっとして美深の道の駅の?」
「ええそうよ」
「いいなー、――あっ、ワンリンゴさん、どうぞソファーに座ってゆっくりしてください」
「ありがとう。けれど敬語は必要ないわ。それに私のことはジュッポンって呼んで」
「ジュッポン? ええ分かった」
「ありがとう。さてマドカ、コウノトリをどう探そう?」
「コウノトリ?」とミルはマドカを見る「マドカちゃんも探すの?」
「ええ。ミルも一緒に探さない?」
「いいの? 嬉しい。――けれど外は……」と表情が翳る。
「分かってるよ。けれど大丈夫でしょ? 私と一緒なんだから」
「――ええ」とミルは微笑みを見せて答えた。
「探すにしてもどこへ行く?」とジュッポンはマドカに聞いた。
「そうね――図書館にでも行きましょう」
「なるほど、情報収集ね。なら行きましょう」
さて、図書館はさっき通った駅前通り沿いにあるが、また自宅へ行ったルートは使わない。住宅街の通りを歩いてぐるっと回ったほうが近いからだ。で、二十分くらいかかって図書館に到着した。三人はコウノトリの本を探す。すぐに見つかった〈コウノトリは鳥。なら鳥の棚を探せばいいからね〉。本棚の前でマドカは本を広げる。
「どう? コウノトリはどこにいるの?」とジュッポンは聞いた。
「――北海道にはいないわね」
「えっ!? マジ? おっと失礼。マジ?」
「マジよ。道外には生息しているけど」
「道外かぁ……あっ、けれど大丈夫じゃない? 北海道で探し出せないことを先生が言わないでしょ? 私達は学生なんだから」
「なるほど、そうね」
「けれど見えないコウノトリをどうやって探し出す?」
「――とりあえず図書館を出ましょう。もう会話するしかないんだから」とマドカは本を棚に戻す。
「そうね」
「マドカちゃん」とミル〈白いスニーカー使用〉。
「何?」
「もう少しここにいたいな。せっかく来たから色々見たい」
「ええ分かったわ。一緒にいるわ」
「ええ、ありがとう」
「私も何か読んでいるわ」とジュッポンはマドカに言った「二人ともごゆっくり」
「ありがとう」
一時間後、三人は図書館を出た。
「たくさん借りたようね」と〈図書館の前で〉ジュッポンはマドカ〈エコバッグを提げている〉に言った。
「ええ、十冊よ」
「本が好きなのね」
「これは全部ミルが借りたのよ」
「そっか。どんな本を借りたの?」とジュッポンはミルに聞いた。
「料理のレシピ本と小説だよ」
「へぇ、料理できるの? すごいわね」
「ありがとう」
「じゃ料理は君の担当か。大変ね」
「ナイン」とミルは笑顔で否定する「それにかわりばんこだし」
「なるほど。今日はどっち?」
「私」とミルは答えた。
「よかった」
「どういう意味?」
「ふふっ、冗談よ、マドカ。――レシピを借りるなんてやる気ね。今晩はどんな料理にするの?」
「秘密」
「あら楽しみ」
と、駅前通りに通行人〈右から左に歩いている〉。
それに気づくと、マドカは不思議に思った。
《なんで日本刀持ってるの?》
そう、通行人、日本刀を手に持っている〈左手で緑色の鞘を握っている〉。
「“戦車同様”!」
《えっ? ミル?》
とマドカは彼女を見る「今何を言ったの?」
「あの日本刀のことだよ!」と興奮しながら答えた「“戦車同様”、かなりの名刀なんだよ」
「へぇー」
「本物かな?」
《本物なわけないわ》
《けれどミルが知りたいなら――》
「どうかな? 聞いてあげる」
「えっ?」
マドカは歩み寄って「すみません。その刀って本物ですか?」
「――け、敬語はいらないよ。同じ中学生だから」と〈立ち止まった〉男子――日本人、腰まである黒髪、緑色の目、真面目そうなイケメン、小柄、細身、青いジャージ、黒いアンダーシャツ、青いスニーカー――は緊張した様子で答えた「失礼。久しぶりに会話したから……」としょんぼり付け加えた。
マドカは微笑んで「大丈夫、気にしないで。それでさ、その刀って本物?」
「ええ」
《本物なの!?》
《ヤバいやつじゃん!》
《けれどビビってなんかいられないな。ミルがいるんだから》
「本物だって」とマドカは振り返ってミルに言った。ミルは不安そうにうなずいた。
マドカは微笑みを向けて「大丈夫でしょ? 私がいるんだから」
すぐにミルは笑ってうずいた。
《よかった――》
《私――なら聞いてみるかな》
「ねぇ、なして中学生が日本刀持ってるわけ?」とマドカは男子に聞いた「あっ、もちろん話したくなければ答えなくていいから。中学生が日本刀なんてワケありでしょ?」
「ありがとう。けれど全然問題ないよ」と相手は微笑して言った「私はミツ。この日本刀は――そうだね、私が真面目だから持っているんだ」と真面目な顔で答えた。
「どういうこと?」
「友達のところまで下がってくれる?」
「ええ分かった」
マドカはそうした。
「大丈夫? マドカちゃん」とミルは小声で言った。
「ええもちろん」
ミツは日本刀――打刀。四角い鍔、頭は金色、赤いダイヤカットの模様が並ぶ黒い柄〈ダイヤカットの模様……正確な名称分かんねー〉――を抜く。
と、彼は正面を向いたまま刀を右へ軽く水平に振った。
マドカ達の頭にハテナマークが浮かんだ。
「今、私は斬った」とミツはマドカを見て言った。
「何を?」
「コウノトリだよ」
「えっ!?」
《なんでコウノトリを殺すの!?》
マドカは驚愕する。
《やっぱりヤバいやつ!》
《――『真面目』? だから殺したの?》
ふとミツの言葉を思い出してそう思う。
《なら別に問題ない?》
《いいえそんなことは――》
「コウノトリってマジ!?」ジュッポンも驚きながら聞く。ミツは不思議そうにうなずく。
「マドカ、“見えないコウノトリ”なんじゃない?」とジュッポンは興奮しながら聞く。
「――ミツ君、どうして刀に血がついてないの?」とマドカは聞いた「殺したんでしょ?」
「ええ。けれど血はつかない。コウノトリはそういうものなんだ」
もし血がつくなら見せないよ、とミツは付け加えた。
マドカは微笑して「ありがとう。ミルがショッキングなシーンを見なくてほっとしているわ」
《大丈夫そうかも――》
「ミル?」
「この人。私の親友で家族よ」とマドカは紹介し「こちらはジュッポン。で、私はマドカ。よろしく」
「みんなよろしく」とミツは日本刀を鞘に収める。
「見かけない顔ね。転校生?」とマドカが聞いた。
「ええ。もっともまだ引っ越してはないんだけどね。私一人下見に来たんだよ。しかしこの街で初めて会ったのが君達でよかったよ。楽しい」
「ありがとう。――なしてコウノトリを斬ったの? それで真面目さの証明になるの?」
「ええなる。けれど詳しくは言えない。けれど大丈夫、私と関わって君達が危険な目に遭うことは絶対にないから。万が一そうなったら死んでも君達を守る。――頼りないかな?」
「全然。ありがとう。その答えで十分よ」とマドカは微笑んで答えた。
《いい人ね》
「ありがとう。――けれど私がコウノトリを斬った時なまら驚いていたね。普通嘘だと思うけど。なして?」
「なまら」とは北海道の方言で「すごい」だ。
「実は私達“見えないコウノトリ”を探しているの。けれどお手上げで」
「なるほど、納得したよ。コウノトリを探してどうするの?」
「とりあえず捕まえて先生に見せるわ。課題だから。――けれど見つからなくて困っているの。協力してくれない?」
「もちろん。――コウノトリって死体でもいいの? いいなら今足元にあるけど」
「分からない。まぁとりあえず死体持っていきたいわ。運んでくれる? 私達見えないから」
「もちろん」
「ありがとう。お礼は何がいい?」
「お礼なんていらないよ」
「そんなこと言わないで」
「ほんとにさ」
「そっか。――もうホテル取ったの? まだなら私達の家に泊まらない?」
「ありがとう。なら泊まりたいな」とミルを見る「――ごめんね。泊まらないから」
「えっ?」とマドカも見る。彼女は青い顔をしている。
マドカは「ミル? どうしたの?」
「……寝ぼけて刀を振るわれるかもしれないって思って……」
《なるほど》
「なるほど。マドカさん、宿泊は遠慮するよ」
「待ってください!」とミルは慌てて言う「低い可能性の話でした。だから泊まってください」
「ありがとう。けれどやっぱり遠慮するよ。可能性はゼロじゃないから」
「――なら刀は私が預かります。それじゃ駄目ですか……?」
「良いよ」とミツは日本刀を差し出す「どうぞ」
「ありがとう」とミルは微笑して受け取る。
「そんな簡単に預けてよかったの?」とマドカは聞く。
「ええ。ミルさんの気持ちが晴れるなら余裕だよ」
《いい人ね》
とマドカは微笑した「ありがとう」
「どういたしまして。――コウノトリはどこへ運べばいいの?」
「えっ? ――美深の道の駅かな?」
「道の駅か。ならバッグが必要だね」
「タクシーのトランクでよくない?」
「なるほど、名案だね。じゃさっそく行こうか?」
「あっ、マドカちゃん、日本刀家に置きたい」とミル。
「そうね。じゃ置きに行きましょう。二人はここで待ってて」
美深の道の駅に到着したのは午後三時過ぎだった。
先生はすぐに見つかった〈施設の入り口で苺のジェラートを舐めているんだから〉。
「先生」とマドカが声をかける。
「やぁみんな。どうかしたの?」
「“見えないコウノトリ”を見つけました」
「もう?」と先生は意外そうな顔で言った。
「ええ。コウノトリはタクシーのトランクにいます。亡くなってますけど」
「そっか。どうやって探し出したの?」
「彼のおかげです」とマドカは手で示しながら答えた。
「中学生? この辺じゃ見かけたことないけど」と先生は彼に聞いた。
「はい、中学生です。初めまして、ミツと言います」
「初めまして。君はどうやってコウノトリを探し出したの?」
「簡単です。見えるんです、ただ」
「見える? なるほど。――コウノトリはどこにいたの?」
「名寄の図書館前です」
「図書館?」と先生は興味深そうに言った「――君はどうしてマドカさん達に協力したの?」
「協力したわけではないんです。けれど事情が分かっていたなら協力していたと思います。見えないコウノトリを探すなんて困り事だから」
「なるほど、素敵ね」と先生は微笑して言った。
「ありがとうございます」
「そんな君に一つ質問」と先生は微笑したまま言う。
「はい」
「人間の赤ちゃんはどうやってできる?」
「はい、まず恋人同士が欲しいと祈る。するとしばらくしてコウノトリが運んでくる」
「正解。ほかに赤ちゃんができる方法は?」
「ありません。なしてそんなことを聞くんですか?」とミツは不思議そうな顔で聞く。
「君がどういう中学生か知りたかったの。試してごめんなさい」
君はちゃんとした中学生ね、と先生は付け加えた。
ミツは苦笑して「ありがとうございます。けれどそのテスト簡単すぎますね」
「あら物足りない? なら数学の問題でも出しましょうか?」
「それは……」
「ふふっ、冗談よ。安心して、数学の問題なんて出したくても出せないから。作者が馬鹿すぎるから」ちっ「君は転校生? 名寄の?」
「はい」
「ならマドカさん達と同じ中学かしら? まぁどちらにせよマドカさん達を学校へ行かせてほしいわ。彼女達は不良だから」
「不良?」
「そう。で、不良って退屈なものでしょ? だから私、マドカさん達に課題を出したの。“見えないコウノトリ”を探せって」
「先生、次の課題はなんですか?」とジュッポンは聞く「コウノトリは手始めですよね?」
「ええ。そうね――じゃ次は“脱皮するハンカチ”を探し出して正体を突き止めてほしいわ」
「“脱皮するハンカチ”?」とジュッポンはきょとんとした顔で言った〈ほかの三人も同様の表情をしている〉「ハンカチが脱皮するんですか?」
「分からないわ。けれどそう名付けられているんだからするかもしれないわね」
「もしかして名前くらいしか分からないんですか?」
「そうね。でどうする? やる?」
「やります」
「私も」とマドカ。
「君は?」と先生はミルに聞く「――すぐに答えを出さなくていいわよ。別に参加期限があるわけじゃないんだから」と考え中の彼女に言って、ミツを見る「君はどうする?」
「はい、参加します。気になりますから。――ちょっと失礼」とミツは施設へ入っていった。
「今度もインターネットは禁止ですか?」とジュッポンが聞く。
「ええ」
「難易度めちゃくちゃ高いな……マドカ、まずはどうする?」
「そうね――まずはジェラート食べましょう」とマドカはミルを見る「何味にする?」
「苺。マドカちゃんは?」
「私も苺よ」
「私も苺にするわ」とジュッポン「リピートの価値十分だからね」
「それ奢るわ」と先生はミルを見て言った「四人分。課題をクリアしたご褒美よ」
「私、課題に参加してないんですけど」
「そんなのかまわないわよ」
「ありがとうございます」
で、ミルは笑顔でジェラートを舐める〈施設の入り口で〉。
「おいしいね、マドカちゃん」
「ええ」と彼女も笑って返した。
と、ミツが〈施設の入り口の向こう側から〉戻ってきた。
「遅かったわね」と先生。
「すみません。ちょっとタクシーの運転手さんに差し入れをしていたんです」
《へぇー、差し入れ》
とマドカは感心する。
「差し入れ? 素敵ね。――ジェラート何にする? みんなに奢ってるの」
「ありがとうございます」
午後五時頃〈空はまだまだ青い〉、マドカ達〈もちろん先生はいない〉は名寄駅でタクシーを降りた。
「じゃ私達は買い物しに行くわ」とジュッポンはマドカに言った。これから彼女とミツはそれぞれの衣類を買いに行く。生活をするんだ、必要だよね「“ソツコウメダ”ってデパート、駅前通りを西へまっすぐ行けばいいんでしょ?」
「ええ。そしたら数分後に左手にあるわ。ピンク色だからすぐに分かるよ」
「分かった。ミツ君、行きましょう」
「ええ」
と、二人は行く。
「さて、私達はお先に帰りましょう」とマドカは促した。
「ええ」
と、二人は駅前通りを左へ行く。
「マドカちゃん、お腹の減り具合はどう?」
「ちょっとぺこぺこ。なして?」
「ジェラート食べてお腹減ってないのかなって。もうすぐ夕飯だから」
「ありがとう。心配いらないわ。なんだろうとおいしく完食してあげるから。まぁ、ミルの料理は全部おいしいから大丈夫だけどね」
「ありがとう」
「どういたしまして。――明日は私の番ね。何か食べたいものある?」
「そうだね――みんなで決めない?」
「みんな? それは困るな」
「えっ?」
「私、レパートリー少ないから」とマドカは苦笑して答えた。
ミルも笑って「じゃカレーが食べたいな」
「また? 本当にミルは私のカレー好きね」とマドカは笑って言う。
ミルも笑って「ええ、大好きよ。とてもおいしいから」
「ありがとう」




