魔王退治に向けての準備
「ど、どうか我らの……我らの世界をお救いください……」
はぁ、行くしかないのか。俺の故郷が無くなろうがそれはどうでもいいんだが、仮にも俺を転移させてくれた爺さんの世界だからな。
それにしても準備をしなければすぐには向かうことはできない。
なるべく早く終わらせるつもりではいるがいつ帰ってこられるかわからないからな、俺が異世界の住人だって知っている横浜支部のギルドマスターには伝えておいた方がいいだろう。
それにあっちの飯は美味くないから作り置きをしてインベントリに入れておかないと不安だ。いくら魔王復活の危機だとしてもこのぐらいの時間は許してくれ。
「フェン、メリル仕方ない。こうやって夢で神が現れたりわざわざ次元渡りで何度も来られる方が面倒だ。こういうのはさっさと終わらせるに限る。その代わり今回だけだ」
『そうだな、それが嫌でこちらの世界に来たというのに全くだ。今回は神が頼んできたから仕方ないが次はないな』
「し、師匠!俺も、俺も行きます!戦わせてください……!」
「何言ってんだワンコ。お前が知らなくていい世界だ、それにまだお前は弱い。一緒に戦おうとしてくれている気持ちは嬉しいが、ただ死にに行くようなもんだ」
「そんな!それじゃあ師匠だって……!」
「誰に言ってるんだ。俺が負けるわけないだろう、世界最強の人間兵器とまで呼ばれた男だぞ?それにまだ弟子が1人前になってないんだ、簡単に死ぬわけにも行かないんだよ」
まあ、こんな格好つけたことを言ってるが多分余裕だ。魔族が何人いようが俺にはその辺の雑魚と変わりはないし、それの頂点、魔王だとしても俺とフェンが入れば負けることはないだろう。メリルはもちろん空間の中でお留守番だ。
「フェン、俺はギルドに行って説明してくる。メリルとワンコと一緒にエレノアを見といてくれ」
『うむ承知した』
そうして俺はギルドに向かい、相変わらず受付にいるサブマスに声をかけて室長室に案内された。
「久しぶりだね、どうしたんだい?」
「前に俺が異世界から来たと話したと思うがちょっとそっちで用事が出来てな、1度帰ることになった。すぐに終わらせて戻ってくるとは思うが、何日で終わるかはわかっていないからな。その間何かあっても依頼受けたりは出来ないと伝えに来たのだ」
「まさか行き来できるとは思わなかったよ……ちなみにどんな用事か聞いてもいいのかい?」
「魔王退治だ」
「っ……そうか。嘘ではないんだね…戻っては来るんだよね?」
看破のスキルで俺が嘘をついていない事がわかったのだろう、驚いてはいるがこの世界のことではないからか落ち着いてはいる。
「ああ、まだこの世界を回りきれてないし何より飯が美味いからな。それと俺たちがいない間、真羽を頼む」
「そういえば君の弟子だったね、気にかけておくよ」
そうして俺は準備が出来次第、明日か明後日にはアステリアに向かうことを伝え帰宅した。
「ん、どうしてエレノアはそんな正座して泣きそうになっているんだ?」
俺が帰宅するとリビングではフェンとメリルと真羽に囲まれてエレノアは小さくシュンとなっていた。
『我らが魔王退治に向かうとわかったら調子に乗ったのか、主の力はアステリアで使われるべきだとか、今回の件を解決すればエルフの国で爵位を与えて王女との婚約も可能だとかふざけたことを言いおったのでな』
「そうです!師匠はまだ俺に指導してくれる気でいるんですから、エルフの国だろうが王女だろうがそんなもの知りません!師匠がどうしても婚約したいというなら俺が婚約者になります!」
さすがにそれは勘弁してほしいけどな。
だがやはりアステリアでの扱いなんてやはりエルフの国でも一緒か。結局は爵位と婚約で縛り付けて都合のいいように使うだけだ。
王女でこれなら王も同じ考えだろう。さっさと解決したらやっぱりこっちで暮らすに限るな。
神の爺さんには申し訳ないがアステリアでの生活はやはり無理そうだ。
さて、まだエレノアに説教が続いているうちにたくさんの作り置きをしておかないとな。
そうして準備を済ませた2日後、俺たちはアステリアにあるアルバン王国王都に転移した。




