表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/101

第二部 第48話「拠点と秩序」

第二部 第48話「拠点と秩序」


拠点は、数日のうちに目に見えて変わっていた。


整地された地面の上に、粗末ではあるが掘っ立ての小屋が並び、人の動きが途切れず続いている。


誰かが運び、誰かが組み、誰かが整える。


だが――動いているのは人間だけではない。


地面を踏み鳴らす重い音とともに、大型のゴーレムが丸太を抱え、そのまま土台の位置まで運び込む。


その横では中型のゴーレムが資材をまとめ、配置を整え、小型のゴーレムが細かい土の均しや資材の運搬を繰り返していた。


大・中・小。


それぞれが役割を分担し、人の作業と噛み合いながら無駄なく動いている。


流れは止まらない。


「……回り始めてるな」


リックはその様子を眺めながら、小さく呟いた。


最初はただの受け入れだった。


だが今は違う。


人が集まり、役割が生まれ、流れができている。


拠点になり始めていた。


その中心で、エレノアが声を張る。


「そっちは先に柱を立てて! ずれたら全部やり直しよ!」


指示は迷いがなく、動く側もそれに応じて即座に動く。


一度流れができれば、それは自然と回り続ける。


視線を移す。


リリアが簡素な農具を次々と仕上げていた。


粗いが、使える。


それで十分だ。


その奥ではシルヴィアが薬を調合し、セレスティアが保存食を整え、ルナが洗濯物を干しながら手の空いた作業を手伝っている。


それぞれが、それぞれの役割を果たしていた。


「……問題ない」


小さく結論づける。


機能している。


その時だった。


「リックさん、少しいいでしょうか」


背後から声がかかる。


振り向くと、村人の代表格と思しき男が立っていた。


「なんだ」


短く返す。


男は一度息を整え、口を開く。


「この拠点ですが……人が増えてきました。作業も増えています」


慎重に言葉を選びながら続ける。


「正直なところ、少しずつですが混乱も出始めています」


リックは黙って聞く。


想定内だった。


「そこで……」


男は一歩踏み込む。


「村として、組織を作りたいと考えています。役割や指揮をはっきりさせて、無駄を減らしたい」


その言葉に、周囲の空気がわずかに張り詰める。


誰もが感じていた問題だった。


だが、口にするのは初めてだった。


リックはすぐには答えない。


視線をゆっくりと拠点全体へ巡らせる。


人もゴーレムも動いている。


だが、それはまだ“流れに任せている”状態だ。


それが限界に近づいている。


「……必要だな」


短く言う。


男の表情がわずかに緩む。


だが、そこで終わらない。


「ただし」


一言加える。


「急ぐな」


空気が止まる。


「組織は便利だが、縛るものでもある」


淡々と続ける。


「今の状態で無理に固めれば、逆に動きが止まる」


男は黙って頷く。


理解している。


だからこそ、ここに来た。


リックは少しだけ視線を落とし、そして言う。


「村長は決めろ」


はっきりと。


「判断を一本にまとめる人間が必要だ」


それだけで十分だった。


だが、さらに続ける。


「それと」


「今は分けろ」


男が目を上げる。


「分ける……ですか」


「村は村で動け。俺たちは俺たちで動く」


明確だった。


「無理に混ぜるな」


その言葉に、周囲の空気が少しだけ緩む。


急に変えられることへの不安があった。


それが取り除かれる。


「……いずれは」


リックは続ける。


「整ったら動かす」


視線を拠点の奥へ向ける。


「村から人を出せ。こっちに配置する」


「徐々に混ぜる」


急がない。


だが止めない。


「それでいい」


男は深く頭を下げた。


「……分かりました」


その声に迷いはない。


後ろで、マグロンが静かに口を開く。


「段階的に進めるのが最善ですね。急げば歪みが出ます」


柔らかな補足だった。


男はその言葉にも頷く。


さらに少し離れた場所からザクトが鼻を鳴らす。


「現実的だな」


短く言う。


「混ぜりゃいいってもんじゃねぇ」


それだけで十分だった。


リックは何も言わず、再び拠点を見渡す。


まだ粗い。


未完成だ。


だが――形はできている。


「……急ぐ必要はない」


小さく呟く。


そして続ける。


「だが、止めるつもりもない」


流れはできた。


あとは広げるだけだ。


拠点は、すでに次の段階へ進み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ