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新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

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第2部 第15話 「鉱石採取と日常の間引き」

第2部 第15話

「鉱石採取と日常の間引き」


朝は静かだった。いや、静かすぎると言った方が正しい。外縁に満ちている圧は消えていないのに、音だけが抜け落ちたような違和感が残っている。

リックは外を一度だけ見て言った。

「先に減らす。溜めない方が後が楽だ」


それだけで全員が動く。言葉を重ねる必要はないが、意図は共有されている。

防衛線の一部を開くと、外から流れ込んできた異形のものが、自然と一定の経路へ集まっていく。小型ゴーレムが前に出て受け止め、中型が押し返して流れを整える。そのまま水のプールへ落ちた瞬間、リックが間を見て指示を出した。

「今だ、まとめて流す」


電気が走る。水面が一瞬だけ弾け、次の瞬間にはすべてが止まる。焦げた匂いだけが残り、音はすぐに消えた。

リリアが肩を回しながら息を吐く。

「完全に作業になってきたね。前はもう少しバタついてたのに」


ルナは周囲を見たまま、小さく言葉を足す。

「……数、減ってる。流れも単純」


セレスティアも軽く頷き、状況をまとめる。

「押し込みやすくなってるね。無理に戦わなくていいのは助かる」


戦闘というより処理に近い。短時間で終わるのが当たり前になっていた。

リックは一通り確認してから言う。

「今日は鉱石だ。量を取る。無駄は省く」


誰も迷わない。すぐに準備に入る。

ゴーレムの配置を整え、罠の状態を確認する。セレスティアが目を閉じ、静かに息を整えた。


「法力、少し強めるね。そうすれば、多少は来なくなると思うから」


リックは振り返らずに頷く。

見えない圧が広がる。空間そのものが押し返すように変わり、周囲の気配がわずかに薄れていく。


ルナが先に反応する。

「……減った。弱いの、寄らない」


リリアも周囲を見回しながら言う。

「ほんとだ、さっきまであった気配が消えてる。これ、かなり楽になるね」


リックは短く補足する。

「寄らないだけだ。強いのは来る。油断はするな」


セレスティアが少しだけ笑う。

「全部は防げないけど、無駄は減らせるよ。それだけでも十分」


森を抜け、岩場に出る。空気はさらに静かになる。

エレノアが周囲を確認しながら言う。

「ここですね。前よりも気配が薄い気がします」


リックは短く返す。

「法力の影響だ。弱い個体は避けてる」


少しの間を置いてから続ける。

「始める。時間はかけない」


リリアが前に出て岩を砕き始める。動きは荒さを残しながらも、確実に無駄が減っている。

シルヴィアが拾い上げ、すぐに判断する。

「これは不純物が多い。加工効率が悪い」


別の塊を確認する。

「これは使える。純度が安定してる」


さらに小さな欠片を見て、わずかに手が止まる。

「……これ、薬になる。成分、使える」


リリアが少し驚いて顔を上げる。

「そんなのも分かるんだ。見た目じゃ全然分からないけど」


シルヴィアは淡々と答える。

「反応で分かる。加工すれば状態異常系に使える」


リックがそれらを収納しながら言う。

「必要なものだけ取る。持ちすぎるな」


小型ゴーレムが足場を安定させ、中型が岩を押し割る。採取は効率よく進む。

しばらくして、ルナが顔を上げた。


「……来る。重い」


わずかに遅れて振動が伝わる。岩が歪み、形を成す。

現れたのは鉱石の塊のような異形の者。重く、硬い。


リリアが踏み込み、刃を振る。鈍い音とともに弾かれる。

「……硬いね、さっきまでと全然違う」


セレスティアがすぐに応じる。

「上げる。動き、合わせて」


空気が変わり、リリアの踏み込みが鋭くなる。

シルヴィアが薬を投げる。

「外殻、崩す。時間は短い」


液体が外殻に触れ、表面がじわりと溶ける。

ルナが地面に触れる。

「……止める。逃がさない」


足元が凍り、動きが止まる。

エレノアが狙いを定める。

「亀裂、そこです。合わせてください」


矢が当たり、亀裂が走る。

リリアが踏み込む。

「いける、このまま押す!」


刃が通る。核に届き、砕ける。

静けさが戻る。


リックは間を置かず言う。

「次だ。止めるな」


戦闘は長引かないが軽くもない。強い個体だけが現れる。

シルヴィアが周囲を見ながら言う。

「この層、質がいい。薬素材も多い」


リック

「回収優先。無理はしない」


しばらくして、ルナが足を止める。

「……いる。さっきより重い」


空気が変わる。明らかに別格の気配だった。

リックは即座に判断する。

「今日はここまでだ。引く」


リリアが少し不満そうに言う。

「まだ行けそうだけど」


リックは短く返す。

「行けると帰れるは別だ」


セレスティアも静かに頷く。

「今は無理しない方がいいね。準備足りてない」


全員がそれを受け入れる。


帰り道、リリアが息を吐く。

「強いのしか来なかったね。逆に楽ではあるけど」


リック

「選ばれてるだけだ。弱いのが弾かれてる」


ルナは何も言わず、一度だけ後ろを見る。


町に入り、そのままバルドの店へ向かう。

扉を開けると、すぐに声が飛ぶ。

「もう来たのか。早いな」


リック

「持ってきた。量はある」


鉱石を並べる。

バルドが手に取り、確かめる。

「……悪くねぇな。質も揃ってる。これなら打てる」


炉に火が入る。

「どうする、任せるか、それとも触るか」


リリアが一歩前に出る。

「……手伝う。見てるだけじゃ覚えない」


バルドが横目で見る。

「やれるのか。遊びじゃねぇぞ」


リリアは迷わず答える。

「やる。失敗しても覚える」


火が上がる。

「火、見ろ。温度を外すな」


叩く。音がズレる。

「遅い。合わせろ」


「……分かってる、もう一回」


叩く。少し合う。

何度も繰り返し、ズレが減っていく。


シルヴィアが静かに言う。

「温度、安定。今がいい」


セレスティアは何も言わず、その様子を見ている。


やがて作業が終わる。

バルド

「形にはなったな。最低限はできてる」


リリアは刃を見つめ、少し間を置く。

「……まだまだだね。全然足りてない」


バルドが鼻で笑う。

「そのくらいでいい。満足したら終わりだ」


リリア

「次、もっと合わせる。感覚、掴む」


武器が整い、エレノアの矢も強化される。

シルヴィアが一部を分ける。

「これは残す。薬に使う」


リック

「分ける。全部は流さない」


そのままギルドへ向かう。

中は騒がしく、空気が重い。


「異形の者が増えてる」

「外が持たねぇ」


奥から声が落ちる。

「……何の用だ」


ギルドマスターが現れる。


リックは迷わず言う。

「結社の魔石、あるな。確認じゃない、ある前提で話す」


空気が一瞬止まる。

「……ある。管理下に置いている」


リック

「こっちが収めた分だ。流れは分かってるはずだ」


ギルドマスター

「……分かっている。だが、簡単には出せない」


リック

「必要だ。調べる」


シルヴィアが一歩出る。

「分析する。無駄にはしない」


ギルドマスターが一息つく。

「条件付きだ。内容次第で出す」


リック

「受ける。内容を出せ」


「軽く見るな。普通の依頼じゃない」


「分かってる。それでもやる」


外に出る。

リリア

「やること増えたね。鉱石だけじゃ終わらない感じ」


シルヴィア

「必要。繋がる」


セレスティア

「無理はしないでね。積み上げていこう」


リック

「やる。順番に崩す」


拠点に戻る。

ゴーレムは変わらず動いている。問題はない。


セレスティア

「効率、上がってるね。無駄が減ってる」


シルヴィア

「素材、増えた。選べる」


リリアは新しい刃を軽く振る。

「少し軽い。扱いやすい。でも、まだ足りない」


リックは短く言う。

「流れはできた。止めない」


一息つく。

「次は奥と、ネブラだ。答えを取りに行く」


静けさは戻っていたが、それは終わりではなかった。

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