第2部 第12話「資源と検証」
第2部 第12話「資源と検証」
火は境界として、まだ保たれている。だが外側に溜まる“圧”は隠せない。揺れは厚く、近い。
「……また、入った」ルナが低く言う。火の縁を一瞬越えた“それ”が、すぐに引き返す。
リックは頷く。「限界だな」
「作る」
――拠点外縁。
リックが地面に手を当てる。土が沈み、円形に崩れる。壁が立ち上がり、内側へすぼまる。脱出しにくい形だ。「深さはこれでいい」
エレノアが風を流し、側面を押し締める。「崩れ止め、完了」
ルナが一歩出る。「……出す」空気が冷え、氷塊が連続して落ちる。底に白い山ができる。
「次」リリアが火を当てる。氷が軋み、溶け、水が溜まる。水面が静かに揺れた。
リックが覗く。「試す」
エレノアが風で流れを作る。境界の縁から一体を引き寄せる。「……そこ」ルナ。
リックが足場を崩し、進路をずらす。落ちる。水面が歪む。
沈むというより“触れる”。形は保てないが、消えない。
「……止まらない」ルナ。「ただ……遅い」
エレノア「流れが乱れています。まとまりが弱い」
リック「弱体化はある。固定には足りない」
さらに一体。今度は複数。落ちる。水面が複雑に歪み、互いに干渉して動きが鈍る。
「……効いてる」ルナ。
「個体同士の干渉が増えています」エレノア。
リックが手を上げる。「電気」
中型ゴーレムが前へ出る。帯電した金属片を水面へ差し込む。
――広がる。
一点の硬直が面へ拡張する。縁に寄っていた個体まで同時に止まる。
「……広い」ルナ。
「範囲拡張しています」エレノア。
リック「使える」
一瞬の隙にリリアが叩く。消える。
「これ、いいね」
「時間は稼げる。だが決定打じゃない」リック。
配置を整える。大型は壁、中型は温存、小型は散開。「崩れるところだけ押さえろ」
命令は一体に通せば足りる。全体が同じ挙動で動く。畑には二体を回す。
「森、見る」リック。全員が動く。
――畑。
シルヴィアが土を触る。「……少し、違う」
遠く、低い森。風が葉を揺らす。気配はあるが濃くはない。
「行く」
森へ入ると空気が変わる。洞窟側とは質が違う。
「……別」ルナ。
小型ゴーレムを先行させる。「探れ」一体に通せば全体が動く。
影が走る。獣。低く速い。
「来た」
ルナが足元を凍らせる。氷が地面を覆い、足を取る。「止まる」
リリアが踏み込み、叩く。倒れる。続けて二体、三体。同じ。
「弱いね」
リック「異形じゃない。物理で足りる」
さらに奥へ。水の音。細い流れが集まり、小さな川。
シルヴィアがしゃがむ。「……使える」葉を選び、根を抜き、袋へ。小型が受け取る。
「水はある」エレノア。
「補給は問題ない」リック。
だがリリアが地面を蹴る。「……鉄がない」
掘っても反応はない。
リックも頷く。「鉱石も尽きた」
「作れても、増やせない」
戻る。
――拠点。
トラップは機能している。だが圧は増えている。
「……増えてる」ルナ。
リック「外に頼る」
転移。
――バルドのもと。
「資源が欲しい」
バルドが目を細める。「何がいる」
「鉄と鉱石」
「何に使う」
リックが合図する。リリアが装置を置く。「見ろ」
回す。パチッ。火花。もう一度。一定のリズムで弾ける。
バルド「……妙なもんだな」
リック「回して、溜める」
「何をだ」
「力だ」
バルドは無言で観る。軸、接触面、材質。
「構造は単純だ」
一拍。
「だが精度がいる」
「作れるか」
「職人を使えばな」
「量産は」
「できなくはない。ただし材料と時間がいる」
バルドは続ける。
「問題はそこじゃない。これは広がる。止められん」
リック「問題ない」
バルドがわずかに口角を上げる。「強気だな」
「鉄と鉱石は出せる」
「条件は」
「利益の一部。それと技術の一部」
リックは即答しない。「……考える」
バルド「考えてる間に手遅れになるぞ」
リック「時間がない」
戻る。
――拠点。
水面が揺れる。踏み込んだ個体が落ち、止まり、しかし抜ける。完全ではない。
「……来る」ルナ。
リックが言う。
「足りないのは資源だ」
一拍。
「……取りに行く」
火の向こうで揺れが重なる。水面で波紋が広がる。森の奥で風が鳴る。
静かに、確実に。次の段階へ進む準備が整う。




