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新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

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第43話 「侵入、本丸内部」


外周の戦線が揺れた瞬間、リックは切り替えた。「外周は任せる。中に入る」短い指示にリリアが頷く。「了解、道は開ける」エレノアも即応する。「射線を取ります。続いてください」セレスティアが息を整える。「後ろは任せてください」


主力が一斉に動く。結界の歪みに刃を差し込み、外周の内側へ滑り込む。正面は叩かない。開いた“穴”に流れ込む。


内部は静かだった。外の喧騒が嘘のように音が落ちる。長い通路、湿った石壁、足音だけが反響する。気配が薄い。守備が、少なすぎる。リリアが小さく言う。「……楽すぎない?」エレノアの視線が鋭くなる。「警戒を。視線が少なすぎます」リックは短く返す。「止まるな」


(誘導されている)


確信に近い違和感。だが止まれば遅れる。進む。


次の瞬間、通路が“閉じた”。背後で石が噛み合う音、前方でも同時に壁がせり上がる。横の抜け道が消え、床が沈み、結界が重なる。魔力の層が一気に厚くなる。「来た!」リリアが踏み込むが、足場がずれ、壁が割り込む。視界が遮断される。「分断……!」エレノアの声が途切れる。通路は完全に分かれた。


リリア側は狭い。天井が低く幅も足りない。振り切れない距離で影が湧く。怪人が三体、歪んだ魔力で連携してくる。「ちっ、狭いの嫌いなんだけど!」一歩で間合いを詰める。斬撃が走り正面を受けられ、横から差し込まれる。壁を蹴って角度を変え、上を取り落とす。床に叩きつけ動きを止め、返す刃で側面を裂く。残りが同時に来る。「まとめて来な!」踏み込み直し、間合いを潰す。密度で押されるが退かない。


エレノア側は広い。だが視界が歪む。薄い霧で音がズレる。「……感覚が狂います」矢を放つ。風を乗せ、軌道を曲げ回避を潰す。一体を止める。二体目が結界を展開する。「面倒ですね」矢を細く速くし結界の縁を削り内部へ滑り込ませる。命中。三体目が距離を詰める。「来ますね」足場を変え角度をずらし至近で放つ。風圧で距離を戻し次へ繋ぐ。


通信は切れている。だが基準は残る。(止まるな)リックの言葉だけが指針になる。


外周は崩れかけていた。幹部が踏み込むたび線が削れ、前衛が弾かれ後衛の詠唱が途切れる。「下がれ、ライン維持!」「無理だ、押される……!」重い一歩で空気が押し潰され、衝撃が地面を抉る。


洞窟。ルナが顔を上げる。「……近い」シルヴィアが薬瓶を握る。「……来ます」静寂の中で気配が濃くなる。


本丸内部。リリアは呼吸を合わせる。三体の動きが重なる。正面、側面、背後、狭所での多方向。「いいよ、じゃあ――まとめて来な」中央に踏み込み三体の間合いを同時に引き出す。全員が動く瞬間、壁を蹴って上へ。落下の勢いで一体を叩き潰し返す刃で横を裂く。残りが差し込む。「っ……!」浅い傷。それでも止まらない。距離を詰め圧で押し返す。


エレノアは冷静に数を減らす。「まず一体」風を絞り矢を一点に収束させ結界の縁を裂く。二体目を止める。三体目が接近する。「来ますね」位置を変え角度をずらし至近で放つ。風圧で距離を取り次の一射へ繋ぐ。


外周は限界に近い。幹部が前に出るたび後退が増える。「持たない……!」そのとき音が変わった。重い衝撃、空気が裂ける。次の瞬間、幹部の足が止まる。正面から叩きつけられる圧。「……何だ?」幹部が一歩引く。


その前に、影が立つ。「遅くなったな」低い声、ギルド長だった。一歩踏み出すだけで空気が変わる。幹部の圧を押し返す。「交代だ。ここからは俺が見る」短い宣言、直後に衝突。音が遅れて届き空間が歪み地面が砕ける。幹部が押し返される。「なっ……!?」周囲がざわつく。「ギルド長……!」流れが反転し外周が持ち直す。


本丸内部。壁越しに振動が伝わる。リリアが顔を上げる。「外、何か来た!?」エレノアも気配を読む。「……圧が変わりました」リックは短く言う。「増援だ。進め。止まるな」分断されたままでも前に出る。削る。繋ぐ。


洞窟。気配が形を持つ。「……来る」ルナが言う。静寂の奥で何かが笑う。「……いいね」カインだった。


戦場は三つに分かれたまま進む。内部は分断戦、外周は反転、洞窟は接近。リックは言う。「……押し切る」時間は、もう多くない。

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