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新たなる世界へ  作者: パルス


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第1話 「遅咲きの芽」

自分なりの異世界モノを考えて書いてみました。

是非感想などを聞かせてください。


雨の匂いがする夜だった。

52歳の派遣社員・ゴールドリックは、いつものように残業を終えてアパートへ帰る途中、トラックに撥ねられた。

意識が遠のく瞬間、頭に浮かんだのはただ一つ。

(……ああ、終わったな)

後悔でも、恐怖でもなかった。

ただの諦めと、どこかほっとしたような、虚しい感覚だけだった。

「俺の人生……結局、何だったんだろう」

就職氷河期に大学を出て、派遣を転々とし、正社員の夢はいつしか消え、

結婚もできず、酒も飲めず、休みの日は安いゲームばかり。

現実では何も掴めなかった男の、52年間の結末。

——それが、彼の最後の思考だった。

次に目が覚めたとき、リックは違和感の塊の中にいた。

体が軽すぎる。視界が鮮やかすぎる。匂いが強すぎる。

すべてが「自分の体じゃない」ように感じる。

心は52歳のまま。

疲れ果て、諦め、虚しくなった52年間の記憶がそのまま残っている。

なのに体は22歳前後の若者のものだ。

(心と体が完全にずれている……

 この体は俺のものじゃない。

 俺は52歳のままなのに、若い体に閉じ込められたみたいだ……

 この違和感、気持ち悪い……吐き気がする……)

リックは自分の頰を抓ってみた。痛い。しっかり痛い。

そのとき、ふと頭に浮かんだ。

(……ここは、俺が知っている世界じゃない)

空の色、木の匂い、風の感触、すべてが「現実の日本」ではなかった。

(まさか……転生?)

その言葉が頭に落ちた瞬間、リックは自然と口に出していた。

「鑑定……」

すると、すぐに頭の中に文字が浮かび上がった。

【鑑定】

【名前:ゴールドリック】

【年齢:52歳(転生後・肉体年齢22歳相当)】

【保有スキル】

・鑑定

・転移

・アイテム収納

・大地同調(土魔法)

リックは長い間、その文字を呆然と見つめていた。

「……本当に、転生したのか」

数日後、リックは食料と情報を求めて近くの小さな街へ下りた。

街は活気に満ちていた。石畳の道に露店が並び、人間、獣人、エルフらしき人影が忙しなく行き交っている。

空気には焼きたてのパンやスパイスの香りが混じり、遠くから冒険者たちの笑い声が聞こえてくる。

リックは鑑定を駆使しながら、慎重に街を歩き回った。

果物屋のおばさんが威勢よく声を張り上げていた。

「新鮮なリンゴだよ! エテルノヴァ産の甘いヤツ! 1個5ルピア!」

武器屋の親父が客を引き止めている。

「冒険者ギルドの依頼なら、うちの剣が一番だぜ! 魔物の牙も簡単に斬れる!」

リックは露店を眺めながら、この世界の常識を少しずつ頭に入れていった。

• この世界は「エテルノヴァ」と呼ばれる大陸にある。

• 魔法が日常生活に溶け込んでおり、冒険者や傭兵が普通に活動している。

• 通貨はルピアで、銅・銀・金のコインが使われている。

• 鉱石や魔石は街の換金所でルピアに換えられる。良質なものは高値で取引される。

• 街の外は魔物が出没しやすく、冒険者ギルドが依頼を管理している。

酒場に立ち寄ると、酔った冒険者たちが大きな声で話していた。

「最近、森の奥で何か大きな事件があったらしいぜ。冒険者たちが慌ただしく動き出してるよ」

リックはカウンターで安いスープを飲みながら、静かに耳を傾けた。

(……鉱石を換金できるのか。

 それなら食料や道具を買うルピアを稼げる。

 一人で拠点を作るのも、もう少し現実的になるな……)

街での情報収集を終えたリックは、試しに街の近くにある小さな洞窟へ入ってみた。

洞窟は浅かったが、奥へ進むと湿った暗闇が広がっていた。

リックは鑑定を頼りに価値のありそうな鉱石を探しながら慎重に歩を進めた。

突然、低い唸り声が響いた。

「グルル……」

暗がりから牙をむいた小さな魔獣(野犬のような魔物)が飛び出してきた。

「っ……!」

リックは心臓が跳ね上がるのを感じ、慌てて後ずさった。

魔獣が低く唸りながら一気に距離を詰めてくる。

リックは咄嗟に地面に手を突いた。

「大地同調……動け!」

指先から淡い光が広がったが、反応はまだ弱い。

地面がわずかに盛り上がっただけで、魔獣の足を完全に止めることはできなかった。

魔獣の牙が迫る。

(やばい……死ぬ……!)

恐怖で頭が真っ白になりかけた瞬間、リックは近くの小石を拾って全力で投げつけた。

石が魔獣の鼻先に当たり、魔獣が一瞬怯んだ。

その隙に、リックは必死で大地同調を繰り返した。

土が柔らかくなり、魔獣の足が少し沈む。

「今だ……!」

リックはもう一本の石を投げ、魔獣の目を狙った。

魔獣が痛がって後退した瞬間、リックは転がるように洞窟の出口へ向かって走った。

魔獣は数メートル追いかけてきたが、弱い個体だったため、出口近くで諦めて奥へ戻っていった。

リックは洞窟の外まで這うように逃げ出し、地面に倒れ込んだ。

息が荒い。心臓が激しく鳴っている。手が震えて止まらない。

(……危なかった。

 弱い魔物だったからなんとか逃げられた……

 本気で戦ったら、絶対に勝てなかった……)

安堵と達成感が少しだけ胸に広がった。

その後、リックは洞窟の入り口近くで、もう一度慎重に鑑定を使い、価値のありそうな鉱石をいくつか採った。

洞窟から出て、街へ戻る途中で、リックはふと頭に浮かんだ。

(……アイテム収納ってスキルがあったな)

彼は試しに意識を集中させた。

すると、採ってきた鉱石が突然、手から消えた。

【アイテム収納に鉱石を収納しました】

リックは目を丸くした。

「マジか……これ、便利じゃねえか」

街の換金所でアイテム収納から鉱石を取り出して売ってみると、予想以上のルピアが手に入った。

(これで……食料や道具を買える。

 生活の基盤が、ようやくできた……)

リックはほっと息をついた。

まだ土魔法は弱く、転移の使い方もわからない。

しかし、鑑定とアイテム収納、そして少しだけ反応し始めた大地同調のおかげで、

「とりあえず生きていける」基盤が整ったことを実感した。

「よし……一旦、拠点に戻ってみるか」

リックは試しに「転移」と意識を集中させた。

すると、視界が一瞬歪み、次の瞬間には山の麓に作った自分の簡易シェルターの前に立っていた。

「……おお、できた」

しかし、転移を使った直後、リックは急に強い疲労感に襲われた。

頭がクラクラし、足が少しふらつく。

(……マジックポイントの使いすぎか?

 一回使っただけでこんなに疲れるなんて……

 まだまだコントロールが下手だな)

リックはシェルターの壁に寄りかかり、深く息を吐いた。

夕陽が山の稜線を染める中、リックは小さく微笑んだ。

「これで……少しはマシになるか」

遅咲きの物語は、まだ始まったばかりだった。


どこまで続くかやってみます?

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