第十二話 恐怖の起点 後編
前編に続いてすぐにアップするはずが……(~_~;)すいません……。
その夢は ぞおぉぉぉおぉぉぉんんん―― と、入るなりいきなり感電したみたいな全身の激しい怖気から始まった。
そこはどうやら多目的トイレらしく、私は通常のトイレよりも広い個室に座っていた。
天井からの明かりが四方の壁や床を明るく白く照らしている。
辺りにはこれといった汚れや落書き、不快感をもよおしそうな物も落ちていない清潔な印象。
右側に大きな金属製のドアがあるだけの、何もないガランとした空間であった。
なのにどうしたものか、私の体は猛烈な恐怖を感じてぶるぶると震えていた。
こんな芯から震えるほど恐ろしい感覚を味わうのは久しぶりだ。
訳が分からない。
動揺しながら辺りを見回したが何もない。不穏なものは何もいないのだ。
直前に怖い思いをした記憶でも残っているならまだしも、部屋で寝ていたら突然氷水のプールに落とされたような気分だ。
だがその肝を冷やす氷水は一滴もない。
何がなんだか全くわからないのだが、ただひたすら何かが怖いのである。
緩急の一切ない凄まじいブリザードにさらされているような強烈さ。
恐怖すべき対象の存在すら認識出来ないのに震えが止まらない、抑えられない!
なんだこれっ?! 意味が分からない、どういう状況??!
その動揺が更に恐怖心を煽る。
ただこの時一つだけ本能的に感じたのは、”この部屋ヤバい!”ということだった。
とにもかくにもここから出ないと攻撃され続ける! そう思った。
もうこの場から逃げるしかない。相手を見定めるなんて気力は全くでなかった。
私はガクブルしながらズボンを上げるのももどかしくドアに突進した。
夢はそこで終わっている。
目が覚めて、これは一体なんだったのか?
あらためて思い出して考えてみた。
まず脅威は見えなかった。
注意深くよく見たわけではないが、まず気を引くものは何もなかったと思う。
不気味な唸り声や不穏な物音などしなかった無音状態。生温い風が吹いて来たとか、悪臭も一切ない。
もちろん何かに触れられているような感覚もなかった。
部屋の中はどこにも恐れを感じさせる要素はない。強いて言えば病院のトイレのような白さだったくらいか。
となると、これはちょっと妙だ。
普通、危険を感じさせる相手を認識して初めて恐怖を感じるものなのじゃないのか?
しかもそれを認識する暇もなく、いきなり突き抜ける恐怖感に夢の中で飛び起きたという具合だった。
もうスタートからしてかなりおかしい。
私の偏桃体がとち狂ったのでなければ、これは外部からの働きだったのじゃないだろうか?
そうしてそれは五感以外で感じるモノ、いわゆる”殺氣”――殺意の波動だったのでは。
そう考えるとなんだか合点がいく。
よく漫画やドラマで殺気を感じるなどというシーンがあるが、なるほど相手の姿を確認しなくても、向けられている強い氣で存在が分かるというのはこういう事か。
私も創作に殺気ネタを使うことはよくあるが、実際は想像の5倍は恐ろしかった……(; _ _)
それにしても漫画とかでは『ムッ、殺気!』とか言って、ピシッと来た感じで表現されているが、こっちはゾワワワァァァン!! ってな激しさだった。
強者はやはりそれくらいにしか感じないものなのだろうか。
それとも漏れてるのと向けられてるの違いなのか。
いやあでも、これはまた新しい怖さの感覚だった。もう痛覚と言ってもいい。
確かに恐ろしかったが喉元過ぎてしまえば面白い、ネタになるいい夢を見させて頂いたものだ。
今ちょうど書いている(更新ストップしているが)『なろう』の方の話のネタにピッタリハマる。とってもタイムリーだ。
おい、お前、なんで殺気をぶっかけられたのにそんな呑気なこと言ってるんだ?! と、思われたかと思うが大丈夫、別に壊れたわけではないのだよ。
実は前話を書く時に、夜「よし、この感じでひとまず書くぞ」と、私は布団に転がって天井の梁を眺めながら簡単な構想を口に出していた。その方がまとまるし、やる気も出るだろうとの独り言である。
そして寝たら速攻で見た夢がこれだった。
もしかすると誰かが聞いていて、『それならこんなのもあるぞ』という感じで情報をくれたのかもしれない。
(言わないでっ、厨二病なことを言っているのは自覚している……)
思えば恐過ぎて体が動かなくならない程度にほどほど、そして行動させる、そんな絶妙なさじ加減だった。
しかも悪夢のように悪い後残りはしない。
ただこんなに速攻でストレートにアドバイスが来るとは思わなかったが。
いえ、どうも有難うございます。
ただ出来れば前もって、『よぉ~い、アクション!』とか言って頂けると心の準備ができるのですが……いや、それじゃ意味無しでしたね。
何も前情報がない、心構えも出来てない、突然だからこそ恐怖をマックスに実感できると。失礼いたしました。
百聞は一見に如かず、そして見るよりも体験に勝るものなし、まさしく身をもって痛感です。
しかしそう考えると、実際にエクソシストやお祓いする人たちはあらためて凄い精神力だと思う。
何しろ本当の殺気はもっと激しいはずだ。私のなんかきっと威嚇程度にしか過ぎないのだ。それも私がギリギリ耐えられるレベルに合わせてだ。
実際はこれに憎悪やら悪意やらも加わって、もっと凄まじく悍ましいものになるに違いないから。
普通なら思考と体が一瞬で停止するくらいの衝撃を受けながら、対抗するなんて凡人には出来ないよ(今度からエクソシスト系の映画はそういう目線で観ようっと)
やはり慣れなのか。あの凄まじい悪氣に慣れるものなのか。
慣れるほど場数を踏むのも嫌だなあ。ヘタレな私はその前に精神崩壊しそう。
ただ最近ちょっとだけ、恐ろしい姿してるだけなヤツには速攻で怒鳴り返すか殴る脊髄反射が付いてしまった。
中にはからかう為にワザと怖い姿をしてくる輩もいるらしいので、こちらが怯えるとよけいに付け込んでくるから、ナメられちゃなんねえのだよ。
ただあまり刺激するのも良くないが。
また壁に耳あり障子に目あり、そして独り言には聞き手ありなのだ。
心霊スポットで独り言をしてはいけないと言われるのは、こういうことなのだ。もちろんウチは心霊スポットじゃないが。
偶然かもしれないが、別エッセイ『こんな夢を……』の第2話で、”悪夢ではせめて頼れるバディを” と書いたのだが、それからしばらくして来たよホントに助っ人が。
しかも連チャンで知らない同じ人が来てくれた。
おかげでその怖い夢はコンプリート。気味悪い後味も残さず助かった。
その夢の話はいずれ『こんな夢を』の方で書きたいと思います。
最後に殺気なんか感じたくないけど、危険を回避するには必要な能力なのかもしれない。
以前何かで読んだ霊能力者の人の話を思い出した。
その人がある日電車に乗った際、急にざわっと強い殺気を感じて恐る恐る周囲を探ると、近くに立っている男の人から発せられていたのがわかった。
その人の体からは真っ黒いオーラが漏れているのが視えたという。
沢山の不満や怒りをはらんでいて、今にも爆発しそうな様子なのがうかがえた。
直感的に目が合ったらマズいと感じ、そっと車両を替えたそうだ。
実際にこういう奴が事件を起こすんじゃないのかなと思う今日この頃である。
お読み頂きありがとうございます。
前編で期待させといてコレかよ! と思われたらすいません(;´Д`A ```
青田にとってこれが新鮮レベルなんです。もっとごっついハードな生恐怖は耐えられません。
ホラーよりオカルトの方が好きな青田でございます。




