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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
52/928

050 解放

残酷な描写があります。

手に掛け布団を持って集落へ帰る。

村長の家の前で義母にミキジを頼み、干し場に掛け布団を干す。

従姉妹達が出て来て、彼女たちが住む事になる家に連れて行くと、もう義兄と従兄弟達が家の修理と掃除をしていた。

ミキジに笑顔が戻った。


村長の家では義父母の親類の幼い子達が2階でミオラと遊び、海にそそり立つ8つの岩を指差していた。

子供達はそれぞれの名を岩につけてはしゃぐ。

ミオラも1番南側の岩に名を付けられている。

(ルイスの岩場や引き上げ岩より良いな)

事実、いつの間にかそれぞれの岩は、この子達の名前で呼ばれるようになった。


ルイスはミキジから貰った記憶を元に、義父の部屋で大きな板に見取り図を描いていく。

蔵には先先代が書いた浜の様子が描かれた板が残っている。

そして、2階には今のこの浜が描かれた板が置いてある。

土の術師である義父は興味深げに

「昔の術師は大したものだ。少ない魔道具で強度を上げている。これは・・・・壊すのは無理だな。」

「壊さないですよ。出て来てもらいます。」


数日後、丘の村を通りアレの街と領主の街を繋いでいた橋を見下ろす位置にいた。

ここにはミキジの母アンレの遺体が放置されていていたが回収を終えている。

遠見の術で見るとやはり【見えない砦】が有るのだろう。

不自然な石の河原が有るし、草原に出入をした跡が途中で消えている。

ここに残されていた【見えない砦】は二つ。


猫獣人の話だと術師はいないとの事だった。

一つの砦に5人、馬が2頭ずついる。

先にコイツらを片付ける。


聖地の獣人達にはこの場から離れてもらう。

もう相手はこちらの接近に気付いている。

臭いを隠すのは難しい。

だから、敢えてそこを突く!


浜の男に取って来てもらった海藻【ベスダミオ】

これを天日で乾燥させ乾燥した袋に詰め込んで【遮蔽】の術をかけておいた。

これを【火の陣】の上に置いて聖地の術師と時を待つ。

相手は焦れて来ている。

更に彼らは風上に立つ、こちらを意識する。

もう人の気配も匂いもしているのだ。

こちらの様子を伺う為に鼻を突き出している筈だ。

時を合わせて2つの砦の前で【遮蔽】を解き【火の陣】を発動させる。

一気に燃え上がる袋とペスダミオ。

途端に凄まじい悪臭が風に乗る。

【黒石板】に書かれていた通りの悪臭だ。

慌てて飛び出して来るが、既に気を失って倒れている犬獣人もいる。

他の獣人も足元が怪しい、平衡感覚を失うこの煙は彼らにとって最悪だろう。

用済みのペスダミオを【水の術】で川に飛ばし、砦には【風の術】で風を送って匂いを飛ばす。

隠れていた獣人達を難なく捕縛した。

熊獣人は多少抵抗したが【身体強化】すら起動出来ない。

魔素を吸収する魔道具を後手に括り付けて座らせる。


【洗浄】を重ねがけして臭いを抜くが、それでも聖地の獣人は近寄れない。

コイツらは直ぐに殺しても良いとは思うが聴く事もある。

馬は可哀想に2頭は死んでいた。

逃げ出そうとしてハミを噛んでしまったようだ。

後2頭は気絶している。


ゲーリン達に後を任せて一人で【アレ】の街の方向へ進む。

やはり遠見の陣で見てみると予定とおりに【アレ】の街跡ではなく、街道の坂の下の休憩所にたむろしている。

新領主が警備隊と軍を街道に出しているのだ。


アレの街跡の獣人を引きつけてくれればそれで良い。


アレの街跡に入り目的の場所を目指す。

ミキジの記憶では無事だったし、猫獣人の話でも残っていると言われたが不安だった。


【墓所の川】

今ではすっかり干上がっていて好都合だ。

姿を隠して進むことができる。

この墓所の地下がファルバン家の地下にある遺跡に繋がっている。


墓所の中を流れる川の跡を辿っていくと川岸に

【遮蔽】【偽装】をかけられた四角い石が埋まっている。

周囲に瓦礫が有るがこの石の周りだけは何も無い。

街の人間には【触れない石】として有名だ。

どうしても触れない。

術師が近づいて魔素を送ったり、近くに遮蔽を解く魔道具が無いかと探した事もある。


だが、【ア・セナ】と唱えながら近づき、魔素を流すと小さな潜戸になる。

中に入り黒石板の一枚を手に持つ。

壁の光魔石が反応してあたりを照らす。

コッチか・・・・来たことのない入り口から目的地の泉を探す


屋敷の地下で懐かしい泉の魔素の流れに手を入れる。

【イスペネ・レ・グラン】

これで、この泉に繋がっている魔素の出口は今閉ざされているだろう。

聖地の魔素とは違うと思っている。

なんとなくだが質が違う。

聖地の方が高純度だと思う。


魔素が止まった。

流れる様にするには、個々の泉で【ア・グラン】と唱えれば良いのだが、

これが、中位の術師には出来ない。

高位の、しかも術を構築できる者にしか出来ない。


アレの外周を回って避難所に近付いて除いてみると獣人と術師が話し込んでいる。

前は真面目そうな術師だったが、すっかり野卑た顔つきに変わっている。


中から大声で呼ばれたのだろう。

慌てて中に入って行った。


ルイスは【アレ】に戻り【探査】を広げれば街道側に人がいる。

このまま出ては見つかる事は間違いない。

「苦手なんだけどな」

と言いながら【飛行】でその場を後にした。


「魔素の泉が止まっただと!」

黄魔石に魔素を注ぎ込んでいた術師が急に魔素が止まり、魔道具から光が消えたので騒いでいた。

【コン・グラン】と言いながら魔道具を擦るが反応しない。

この泉の岩の弁が閉じていると解ったので【ア・グラン】と唱えても反応がない。

『メトルは安易とやったのに!』

仲間を呼んで三人でやってみても動きはない。

熊の兵士が岩の根本に一撃を与えたが弾かれてしまった。

土の術師が手を尽くしても岩は削れず。

そのうちに息苦しくなって【換気の魔道具】が停止した事を知った。

【魔素】を手に入れようと考えても、身近に有るのはファルバンの地下。

彼らが知る屋敷の地下遺跡の入口は瓦礫の下で手が出せない。

息をする為に扉に寄り添うようにしていたが、ひとりまたひとりと外に出て来た。


避難所は6ヶ所に頑丈な扉が有って【遮蔽】【偽装】がかけられているが、更に【アレ】の街から瓦礫を持ち込んで積み上げて有った。

バリケードにしている。

2箇所の扉が開いているが、どちらも半分しか開かない。

ここにも瓦礫が内側に置いて有って、この瓦礫を扉に寄せれば開かなくなる。


彼らの食事を支えている氷室の魔石は小さな魔石で、起動時に使う魔石と使い続ける魔石は変えてある。

灯りも光魔石と黄魔石だが、これも大きさは大したことがない。


しかし、問題なのは【換気】の魔道具。

【遮蔽】にいくつもの魔道具を組み合わせて使って、空気だけを出し入れしている。

『赤魔石』か『青魔石』を使うが、この避難所の魔素の大半はこれに使用する。

大飯食らいだ。

無論、この事を理解しているのは【黒石板】を読んだルイスだけだ。


次が汚水、便所の魔石これだけの人間の生活排水や汚物を綺麗にする。

【洗浄】の術の応用だが体の表面の異物を取り除く程度では無い。

しかも【換気】と【汚水】は魔石の大きさが大きく、取り付けられている赤魔石の代用を彼らは持っていない。


次の日は更に大変な事になる。

臭いのだ!

獣人だけではなく人族にも耐えられないほどの悪臭が立ち込める。

更に外に出て来たが外には食料や水が無い。

その時にはもう周囲を囲まれていた。

外に居た獣人達は捕縛されている。

ゲーリンが率いる聖地の術師も揃っていた。

ここに、反撃の意欲もなく降伏し、住民達は全員解放された。


救出されたのは80名ほど、内容は・・・・残酷すぎる。

救出後に自ら命を絶った女性も少なからず発生した。

元から決めていたようで子供を託して亡くなった。


領主は石の河原に大きな石の牢獄を作らせて罪状を調べている。

【遮蔽】で仕切られた部屋。

ペスダミオを燻す管が彼らの恐怖を増す。

獣人だけでは無く人族にとっても恐怖だった。

ルイスは記憶を読み取ってまとめておいたが、ここに収容された全ての人間が重罪だった。

400人いた人間をどうしたら死に追いやられるか。

アイツらと変わらない。

狂っている!


裁きの日。

アレの住人達の前に魔道具を着けられた術師達が街跡に引きずり出された。

特にファルバンの三人の術師は、必死に脅されたと無実を訴えた。

そこにゲーリン、メイルがファルバンの警備隊の制服姿で彼らの前に立つ。

メイルが避難所内でやって来た事を一つ一つ読み上げる。

その度にゲーリンが裁く。

『有罪』、『有罪』・・・・

全て読み上げた時にゲーリンが大声で宣告する!

「ファルバンの名に泥を塗った者は断首!」

こうして三人と他の術師は次々に首を落とされた。

扇動していた男達も同罪だった。

一味に加担していた獣人達も石の河原でベスダミオで力を削がれて全員死刑にされていた。



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