最終話「三月」
三月。
学校に通う生徒達にとってはこの季節も一年の終わりというのを強く意識する事だろう。
そんな三月の中旬の朝。
「行って来まーす」
太朗は家に向かってそう言いながら外へと出た。
「あ、おはようタロちゃん」
するとすぐ横から声を掛けられた。
「おい……」
「えっ? 何?」
太朗は顔をしかめながら声を掛けてきた人物へと近づいていく。
相手は少しビックリしながらも太朗が口を開くのを大人しく待っている。
「何で出てくるのぉぉ!? もう最終話なんだよぉぉぉぉ!!」
「えっ! 最終? なに、何の事?」
訳が分からないといった感じでうろたえる人物の名は如月佐奈。
太朗の家の隣に住む太朗と同じ歳の女の子だ。
内面を圧倒的に重視し評価する事で有名な学園、優心学園に通っている。
彼女は一年生ながら生徒会に所属する程の評価を学園から受けており、それにふさわしい心の優しい人物である。
「タロちゃんはいつも分からない事を言うね」
にこにこしながら佐奈が言う。太朗の事をタロちゃんと言うのは小学生の頃からであり、高校ではそれぞれの進路に進んだものの当然ながら家は変わらず隣同士という事で友人として付き合いは続いている。
「分からないって……おいおい頼むぜマジで。もうお前に構ってる文字数はないんだよ」
「だから何なのそれー」
楽しそうに笑う佐奈。
こいつはいつも楽しそうだな、と思いながらも途中までは一緒なので太朗は佐奈と並んで歩きだす。
「そういえばタロちゃん勉強はちゃんと頑張ってる?」
「あぁ、この前のテストだったら学年でも三位だったぞ」
「そうなんだ! それじゃあ進級は大丈夫なんだね」
「……そうだな」
太朗は言えなかった。
進級が割とピンチだという事を。
佐奈はジャスティス学園とクライム学園の事をほとんど知らず、太朗が殺し合いをしているという事実を知らない。
なので太朗自身もこれまであえて口にはしてこなかった。
知ってしまえば争いが嫌いな佐奈が止めにくるというのが簡単に予想出来た。
二十分程歩き、佐奈と別れる道までやってくる。
ここまで襲撃はなかった。というより、佐奈といる時はまず戦闘にはならない。
何故なら、佐奈に限らず優心学園の生徒の前で争いを起こすと学園規模での抗議を受けるからだ。
それは例え勇者であっても変わらないので、優心学園の生徒が付近にいれば戦闘は一切行わないというのがジャスティス学園とクライム学園の暗黙の了解となっている。
「じゃあ私はこっちだから」
「はいはい。はよ行け」
「もーまたそんな態度取って。じゃあね、タロちゃん」
笑顔で手を振りながら遠ざかっていく佐奈。
ここ最近、太朗は遅刻覚悟で油断している事の多い朝の時間を狙って勇者を殺してきた。
もうじき三十一日になってしまうというのに今日というチャンスを逃したのは痛かった。
「まぁ、しょうがないか。放課後頑張ろ」
いつもの切り替えの早さをみせた太朗は自身も学園へと向かって歩く。
しかしこの日は放課後の狙撃も防がれ、0キル14デスという結果に終わった。
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「あっ、タロちゃんおはよう」
「だぁぁぁぁからどうして出てくるのぉぉぉぉおおお!?」
翌日、太朗が家を出ると同じく丁度出てきた所の佐奈が声を掛けてきた。
「えぇっ! そんな事言われても……」
「文字数押してんの! 昨日言ったでしょぉぉぉぉぉぉ!」
家を出て学園に向かうという当たり前の事をしていると何故か怒られるという現実に戸惑いながらも佐奈は頭を切り替えて口を開く。全部に付き合っていたらキリがないというのを長年の経験で知っているのだ。
「よく分かんないけど途中まで一緒にいこっ!」
「ぐぬぬ……」
渋々ながらも太朗は佐奈の横に並び歩き出す。
ここでダッシュして引き離すなりすれば一人で動く事は可能だろう。しかしそこまで強引に拒否すると佐奈から佐奈の両親へ、そしてそこから自分の両親へと話が伝わり怒られる事が予想出来たので太朗は承諾するしかなかった。
(面倒くせぇ……マジでどうにかならんもんか)
そんな事を考えていると、真横に居る佐奈が太朗の頬を突いてきた。
「どうしたの難しい顔して? あっ、高校生になったし一緒に登校するのが恥ずかしいのかな? タロちゃん照れ屋さんだもんね」
「ちげーよ! 断じてちげーよ!」
そう言っても「またまたー」と返すばかりで楽しそうに笑うばかりだ。
何故こんなに気楽に接しているのかというと、佐奈は自身に太朗が酷い事をするわけがない、太郎が自分を嫌う事は絶対にないと信じきっているのだ。
勿論、佐奈自身も太朗に酷い事をしないという前提はあるが太朗の事は小さな頃から知っているのでそれに関しても自信を持っていた。
もし仮に喧嘩したとしても自分と太朗ならば絶対に仲直り出来ると確信もしている。
二人はてくてくと一緒に歩く。浮かない顔と楽しそうな顔という違いはあるが。
(くそっ、今日も放課後だけか)
成功率の高い朝の狙撃タイムが二日連続で潰されてしまい、がっくりと肩を落とす太朗。
「タロちゃん元気ないけど大丈夫?」
「何でもない。気にするな」
「本当に大丈夫? 悩みがあったら言ってね」
心から心配しているであろう佐奈の顔を見ていると「原因はお前だよ」とは言えなかった。
「はぁー、参ったな」
学校へ到着した太朗は思わずひとりごちる。
正直放課後の狙撃成功率は低い。
最近では狙撃に適したビルまで洗いざらい調べられ待ち伏せされる事もあったりする。
(それでもやらなきゃカウントは増えないからなぁ)
あれこれと考えながら授業を受ける。
そして放課後。
必死に頑張るも0キル13デスという結果でこの日も誰も殺せなかった。
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次の日の朝。
太朗の家のチャイムがなった。
「あ、タロちゃんおはよっ!」
「……おはよう」
何の用件だろうと思った太朗は嫌な予感がしていた。そしてそれは当たる事となる。
「途中まで一緒に行こう」
「お前……いや、何でわざわざ来たんだ? 今までは別々に登校してたじゃん」
そう聞くと思いも寄らぬ返答が返ってきた。
「あ、何か昨日の夜お母さんが「最近不審情報がよく流れてるからしばらくタロ君と途中まで登校しなさい」って言ったの。何かあってからじゃ遅いって」
「不審情報? なんだそれ?」
「うん。何かね、近所で人魂を目撃したって人がたくさんいるんだって」
太朗は悟った。
それは自分だと。
一昨日、それと昨日は朝のアクシデントを帳消しにしようといつもより遅い時間まで粘って戦っていた。まぁ全戦全敗したのだが。
もちろんこの近所でも殺された。いつもより多く殺されたといっていいだろう。
しかし腑に落ちない点がある。
この一年で見ると何回もこの辺りで殺されてるのに何故今更と思った。
「おばさんは誰に聞いたんだ?」
「安田のおばさんだって」
「あーね。あーね」
安田のおばさんはどうでもいい事を凄く大げさに話す事で有名な近所に住むおばさんである。
佐奈の両親も佐奈に負けず劣らずな性格をしているので安田のおばさんの誇張表現を真に受けたのだろう。
(神は俺を見放したのか。あぁいや、神は元々魔王の敵だったか)
この時太朗は自身が崖っぷちに立たされた事を自覚した。
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「おいっ! 俺だ! 助けてくれ!」
「…………いらっしゃいませ」
三月二十九日、午後十七時四十分。
太朗は以前利用した武器屋に駆け込んだ。
今日はもう薄暗く、勇者のほとんどが自宅や寮へと帰宅しているであろう。
それを考えると太朗に残された時間は明日一日しかなかった。
朝は毎日佐奈と登校しなければならず、毎日必死に放課後戦いに明け暮れたが殺戮カウントは二十六までしか伸びなかった。三月上旬で既に二十三カウントあったとなれば太朗の苦労が窺える事だろう。
残り四人、たった一パーティー分だが今の太朗にとってはゴールが果てしなく遠く感じている。
「何か、何かないのか!?」
「えーっと、アンタ何ヶ月か前に銃を買ってった魔王だっけ?」
「そうだ! 覚えててくれたか友よ!」
「友達になった覚えはないんだけどなぁ」
熱く話しかける太朗と冷めた対応の店員。
「まぁその辺りはどうでもいいよ。何か武器を売ってくれ。具体的には明日一日で確実に四人殺せるやつ」
道具というのはどういう物であっても使用者によって効果は大きく変わるものだ。
故にこの要求はめちゃくちゃな物であるが太郎はその要求を店員に伝えた。
「確実って……そうねぇ」
顎に手を当てて考え込む店員。
一度ピクリと動き口を開けようとしたが、眉を寄せ難しい顔をして再び悩み始めた。
しかし店員を見ていた太朗はそれを見逃さなかった。
「今の反応はなんだ? 何か良い物を思いついたのか?」
「え? あー、うん。でもそれすっごい高いんだよねぇ」
「お前俺に二百五十万の狙撃銃売りつけたじゃねーか!」
「あー、あれね。冗談だったのに本当に払うとは思わなかったよ」
あっはっは、と気持ちよく笑う店員。
そして「本当に高いよ?」と前置きをした。
「さっき思いついたのは魔法が込められた魔封石って道具の事なのよね」
「へぇ。そんな道具もあるんだな」
「いくつか種類があるんだけど、確実性を求めるのなら『箱庭世界』っていう道具になるの。これの効果なんだけど――」
たっぷり十分程時間を掛けて詳しい説明を聞いた太朗は迷わずに言った。
「買おう!」
こうして、太朗の戦闘時の選択肢に新たな項目が加わった。
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三月三十日。
太朗は決戦の丘と呼ばれる場所に向かって歩いていた。
その場所は進級や卒業が危うい者達が集まり最後の戦いを行う場という事からジャスティス学園、クライム学園の両校でのみ使われる名称である。
本来の名称は森岡の丘といい、土地所有者であった森岡さんが子供達の遊び場に使ってくれと国に寄付したのが名前の由来となっている。森岡の丘だがすでに森岡さんの丘ではない。
「おぉ、やってるやってる」
目的地に到着するとカウントが欲しい生徒達が戦闘を繰り広げていた。
近くにはお互いに声を掛け合いながら攻撃する勇者達と魔王。
少し遠くには恐らく上級生だろう。声掛けをしている様子がないのに二人が物凄い早さで連携攻撃を繰り出している。
「ラッキー。今日はツイてるわ!」
しばらく他者の戦闘を見ていた太朗の後ろでそんな声が聞こえた。
それに答える者が居ないという事は自分に対して言ったのだろうと理解し太朗は振り向いた。
「あ、なんだ縞パンか」
後ろに居たのはこれまで二回戦った事のある女子生徒のみのパーティーであった。
「その呼び方やめろっつってんでしょ! あんたぶっ殺すわよ!」
「もう殺された事あるんですけど? それも二回」
そんな会話のやり取りをしながらも太朗は内心ニヤリとほくそ笑んだ。
「なぁ、お前らもココに来たって事は目的は一つだよな?」
「え? そりゃそうでしょ。全く……クライム学園の教師が中々捕まらなくて危なかったわ。でもそれも昨日で達成したし、後二人魔王を倒せば晴れて卒業よ! まずは魔王田中、アナタに倒れて貰うわ!」
ビシッと太朗に指を差し宣戦布告をする勇者。
当然太朗はその勝負を受ける。
「勇者よ、此度は貴様等の死ぬ番だ! 魔王田中太朗の新戦術を見るがいい!」
太朗はそう叫ぶと懐から少し歪な形をした石を取り出す。
それは灰色の光をほのかに放っており、とてつもない魔力が込められていると勇者達にも理解出来た。
「『其処は創られし世界、与えられた命、用意された舞台、真実を知り絶望を体感せよ! 箱庭世界』!」
キーとなる言葉を紡ぐと魔封石の光が激しくなり、ひび割れる。
パキパキと連続して音が鳴り、砕け散る。と同時に地面に魔法陣が出現し辺りが一瞬光に包まれた。
「ちょっと……! なにこれ!」
勇者達が動揺している間に光は収束し、それぞれが閉じていた目を開く。
「えっ――」
彼女達の目に映ったのは先ほどまで居た森岡の丘の景色ではなかった。
足にあった芝生の感触は消えており、目を向けると干からびてひび割れた茶色の土が見えた。
上を見ると青空は消えており、代わりに見ていると気分が沈むような黒い雲が漂っている。
「どこ……ここ」
魔法使いの少女がポツリと声を漏らした。
それに太朗が反応する。
「魔界だよ。つっても写真でしか見た事ないから再現はここまでだがな」
「アンタ、何をしたの?」
勇者の少女が鋭い目付きを太朗に向ける。
しかし弱いはずの魔王は余裕の表情を崩さない。
「さっきのは上級の更に上、特級に位置する魔法らしいぜ。この空間を俺が創りだし、お前達は俺にこの世界で生きる権利を与えられているという状態だ。よって俺に生きる権利を握られているお前達は俺に世界の概念を操作される事によっていとも簡単に死んだりするわけだ」
「え? ちょっと難しいわね……三行で簡単に言いなさい!」
「俺神様
ココ俺の世界
ここじゃ俺最強」
なるほど、と勇者の少女は頷く。
「今なら一思いに殺してやるぞ? ははは! 以前と立場が逆になったな! ははははは!」
「『肉体強化』、『防御強化』『自動回復』」
太朗の言葉を無視するように僧侶の少女が仲間に補助魔法をかける。
他の勇者達も同じ気持ちらしく、武器を手にし敵意を太朗に向ける。
「ふぅ……無駄だというのに。まぁそうこなくっちゃ面白くはないがな! まずは最初に歯向かう意志を見せたお前からだ」
太朗はニヤリとしながらそう言うと指をパチンと鳴らした。……つもりだったが、上手く出来ずに音は鳴らなかった。
「えっ? な、なにこれ……!」
すると僧侶の体が少しずつ光となって消えていく。
途中からは声も出なくなり、数十秒で完全に消滅した。
「くっ……」
身構えるだけで突っ込んでくる様子はない。
勇者達の性格を考えると既に衝突しているのが自然だ。太朗がおかしいと思ったその瞬間、後ろに居た魔法使いが杖を向けて一歩前に出てきた。
(なるほど。詠唱をしてたのか)
不可解な行動を起こし相手に思考させる。
そして意図を理解されたとしてもその時には既に準備が完了している。
いい作戦だ、と太朗は素直に感心した。
「『不可視な雷帝の一撃』!」
魔法使いの少女がそう唱えると、頭上に光が発生したのがわかった。
反射的に顔を上げるが、そこには何も無かった。
「あ――」
「あれ?」と言おうとしたが、口を開いた瞬間背後からとてつもない衝撃がぶつかってきた。
吹き飛んだ太朗はそのまま大きな岩に突っ込む。
「やった……?」
「ちょっと! そういうの言わないでよ! フラグ立つでしょ!」
そんなやり取りをしながら勇者達は自分達の勇者手帳を開く。
「カウントは増えてないわね」
「この空間も変化無いし、戦闘続行ね!」
気合は充分といった感じで太朗の突っ込んで言った岩に向けて構えを取る勇者。
「どっち向いてるんだ?」
「なっ! アンタどうして……?」
「どうしてだろうな? まぁそろそろ終わらせてもらうぜ。文字数の関係でなっ!」
勇者達の背後に太朗は立っていた。
そして再び指をパチン……とは鳴らなかったが指を動かすと残っている勇者達三人の体が光を放ち出した。
「ちょっと! 指パッチン出来ないならやらないでよ! その仕草腹立つわ!」
「くぅっ! 最弱魔王にやられるなんて……っ!」
「天にも昇る気持ちってこういうものなんだね」
様々な思いを口にしながら勇者達は消えた。
布を一枚だけ残して。
「何でだよ……」
そこに残ったのは可愛いクマがプリントされたパンツであった。
この酷いセンスは間違いなく勇者のだろう、と確信しながらも太朗は見なかった事にした。
「そろそろこの世界も時間切れだな」
辺りを見回すと空間に少しずつ穴が開いていた。
アイテムの効果時間が過ぎたのだ。
ぽつぽつとあった穴は数を増やし、大きくなり、世界を、太朗を、クマさんパンツを飲み込んだ――。
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『あっ! おい、佐奈! 佐奈!』
「あれ? タロちゃんの声がする」
『おう! 太朗だ。助けてくれ』
世界を創りだし神となり入り込む効果を持った魔封石を使った太郎は世界の崩壊と共に死んでいた。
何故なら、出て行く機能は魔封石についておらず、太朗自身も脱出手段を持っていないからだ。
「おや、この人魂がタロちゃん? 不審情報の原因はタロちゃんだったの!?」
『あー……そういやそんな事になってたんだっけ。いや、俺は何もしてないんだ。今はとりあえず助けてくれ』
「う、うん、分かった。私はどうしたらいいの?」
太朗は説明し、丁度近くを通りかかっていた野良豚を捕まえてもらう。
魂で豚を取り込み狼の姿となりダチョウの姿となりカバの姿を経て再び豚の姿となり最後に鳥の姿となり大空に羽ばたき青い空へと吸い込まれていった。
「おぉ……タロちゃんが星になっちゃった。なむー」
「いや居るから。お前俺が死んだと思っててもすげぇ普通なのな。ちょっとショック受けたわ」
太朗が声を掛けると上を見ていた佐奈が視線を落とす。
「タロちゃん! 生きてたんだ、良かったねぇ!」
「そうだね良かったね。しかしここ普通はアンラとかが出てくる場面じゃねぇの? 助けて貰っといてアレだけど、一年を共に過ごした仲間達の出番が全てお前に奪われてるわ。あいつら最終話なのに一秒たりとも姿を見せてないからね」
「タロちゃん何言ってるの? 私にはちょっと分かんないや」
そうかい、と言いながら太朗は自身の魔王手帳を見る。
「おぉ……」
合計欄には「30」と数字が書かれていた。
進級確定である。
「どうしたのタロちゃん?」
「あぁ、いや、ちょっと感動してな」
「いい事があったんだね。タロちゃんが嬉しいと私も嬉しいよ」
「よっしゃ! 今日は俺が奢るから何か美味い物食いに行こうぜ!」
そう言い佐奈と二人並んで歩き出す。
こうしてただの人間でしかなかった田中太朗は魔王として一年生をやり遂げた。
しかしこれで終わりではない。
これからも困難な生活は続くであろう。
彼が魔王である限り――。




