クリスマス特別編②
12月24日。
今日は昼からの待ち合わせだ。
沙月いわく、
「今日はいっぱい準備したいから、お昼からでお願い!」
とのことだった。
昼過ぎ。
沙月の家の近くで待っていると、遠くからこちらへ向かって走ってくる女の子が見えた。
その姿を見た瞬間――
世界の音が少しだけ遠くなった気がした。
いつも可愛いとは思っていた。
でも今日は違う。
髪はふんわりと巻かれ、メイクも少し大人っぽい。
冬らしいコートに身を包んだ姿は、いつも以上に目を引いた。
車のドアが開く。
「おはよー!」
勢いよく乗り込んできた沙月が笑う。
「……って、もう昼だった!」
「そうだな」
「どうどう!?」
身を乗り出してくる。
「髪巻いてみたし、メイクもちょっと変えてみたんだよ!」
「……ああ」
「むぅ」
沙月が頬を膨らませた。
「反応薄くない?」
「結構頑張ったのに」
悠也は小さく息を吐く。
「いや」
「?」
「正直な」
言葉を探す。
そして素直に言った。
「思ったより可愛くて、何て言えばいいかわからなかった」
一瞬。
沙月の動きが止まる。
「……え」
耳まで真っ赤になった。
「……ありがとうございます……」
「おう」
妙な空気になる。
二人とも少し照れていた。
「と、とりあえず行こう!」
「う、うん!」
車が走り出す。
数分後にはもう沙月は元通りだった。
「~♪」
鼻歌まで歌っている。
現金なやつだ。
⸻
クリスマスマーケットに到着すると、沙月のテンションは一気に上がった。
「あたしクリスマスマーケット初めて!」
「俺もだ」
「じゃあ絶対楽しいね!」
根拠はないらしい。
それでも楽しそうだった。
「ゆーやさん見て!」
「木が全部光ってる!」
「すごい!」
「あっちの雑貨屋さん行こう!」
「このブレスレット可愛い!」
「高っ!」
「ガラスのトナカイもある!」
次から次へと興味を持つ。
俺はほとんど相槌を打つだけだった。
でもそれで十分だった。
沙月が楽しそうだから。
「少し休むか」
「賛成!」
即答だった。
「あそこホットココアある!」
「チュロスも!」
結局甘いものか。
温かいココアを買い、ベンチへ座る。
「おいしい〜!」
幸せそうにココアを飲む。
その顔を見ていたら思わず笑ってしまった。
「どうしたの?」
「鼻」
「へ?」
「大変なことになってる」
「え!?」
慌てる沙月。
鼻の頭にココアの泡が付いていた。
「取って取って!」
ティッシュで拭いてやる。
「ありがと」
そしてついでに鼻をつまんだ。
「ひどい~!」
「目閉じて上向いてるのが悪い」
「だって取ってくれると思ったもん!」
「取っただろ」
「そうだけど!」
相変わらず騒がしい。
それでも、その騒がしさが心地よかった。
⸻
夕方。
クリスマスマーケットの隣にある公園へ向かう。
そして――
「わぁ……」
沙月が立ち止まった。
「すごい……」
公園全体を埋め尽くす無数のイルミネーション。
白。
青。
金。
色とりどりの光が冬の夜を彩っている。
まるで光の海だった。
「確かにこれは凄いな」
悠也も思わず見上げる。
隣から小さな声が聞こえた。
「好きな人とこんな景色見れるなんて幸せだなぁ……」
聞こえないふりをした。
聞こえていたけど。
二人は並んで歩く。
少しずつ人が減っていく。
冬の風が吹く。
「寒くないか?」
「ちょっと」
沙月が両手をこすった。
「手が冷たくなっちゃった」
「じゃあこうするか」
悠也は沙月の手を握った。
そのままコートのポケットへ入れる。
沙月の目が大きくなる。
そして嬉しそうに笑った。
「左手だけあったかい」
「よかったな」
「右手寒い」
「俺の周りぐるぐる回るか?」
「いじわる~」
そう言いながらも手は離さない。
むしろ少しだけ強く握り返してくる。
「ゆーやさん」
「ん?」
「顔赤いよ?」
「さっちゃんもな」
二人で笑った。
しばらく歩いていると、沙月がぽつりと言った。
「ねぇ」
「ん?」
「今日ね」
「うん」
「今まで生きてきた中で、一番楽しいクリスマスかも」
少し照れながら笑う。
イルミネーションの光が横顔を照らしていた。
悠也は少し考えてから答える。
「そうか」
「うん」
「俺もだよ」
沙月の目が大きくなる。
そして。
今日一番の笑顔を見せた。
「えへへ」
その笑顔が眩しかった。
「じゃあ帰ろう!」
「チキンとピザとケーキが待ってる!」
「結局そこか」
「そこです!」
胸を張る。
「ケーキ食べたあとスマブラもするからね!」
「元気だな本当に」
「クリスマスだから!」
手を繋いだまま駐車場へ向かう。
数え切れない光に包まれながら。
二人だけのクリスマスは――
まだ終わらない。
【クリスマス特別編② 完】
こんにちは、ヘロイズムです。
読んでいただきありがとうございます!
クリスマス特別編はこれで終了となります。
二人の家でのことは皆さんのご想像にお任せします笑
また何か思いつけば投稿しますのでよろしくお願いします!




