表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/13

1 白夜①


「死ね」


 悪意も憎悪もない声と、何も映していないような瞳のまま、彼はそう言った。


『またね』が、いつも最期の言葉だった。

 もう何度繰り返したか分からない。

 私たちは幾度も巡り会い、当然のように惹かれ合う。


 彼のことは誰よりも私が分かっていると思っていた。


 だけど。

 こんな感情のない彼の声は知らない。

 こんな無機質な彼の瞳は知らない。



 そんな戸惑いに揺れる暇もなく、無表情の彼は私に仕込み刃を突き出す。

 私はその腕を片手でいなし、ひらりと身を翻す。

 着地したところで、今度は彼の踵から刃が飛び出す。

 なんのためらいもなく、その足を、私の首元へ振り上げた。

 その足も腕で払い、私は後方に駆け上がり、そのまま民家の屋根をつたって、その場をあとにした。



 この世の彼は、何度も私を殺しにやってくる。


 首元の、彼の瞳と同じサファイアを強く握りしめた。これはずっと前からの私の癖だ。

 不安なことがあると、遠い過去にもらったこの石を握る。


 これまでは、それで安心できたのにーー。




***



 五〇メートル先から感じる視線が彼のものだということには気付いていた。


 何度生まれ変わっても愛し合っていたはずの彼は、この世では、何度出会っても私を殺しにやってくる。



 五十メートル先の彼の視線が強くなった。集中を研ぎ澄ませば、遠くの視線の強弱くらい分かる。



 彼の視線が強くなったと思ったと同時に、一寸先に殺気を感じ、首を傾け、頸動脈の一撃をかわす。

 同時に、私の頸動脈を貫く予定であった矢を、人差し指と中指で捕らえる。


 その矢の鏃に鼻を近づける。

 間違いなく毒矢だ。

 それはその場に捨て、身を隠すようにその場をあとにした。



 なぜ彼は私を殺そうとするのか。それだけが分からない。


 初めての生からずっと。

 約束の日の約束の場所。

 今世も彼は来てくれた。


 嬉しくて彼の胸に飛び込もうとして地面を蹴ろうとしたところで、胸に仕込み刃をつきつけられそうになったのを躱した。



「なんで……?」


 眉一つ動かさずに、腕を振り上げる彼の凍った瞳を見て、逃げるように帰った。

 十歳の時だった。

 

 彼は私を忘れてしまったのか。

 そう考えもしたけど、そうであれば、約束の日に約束の場所に来ることが、できるはずもなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ