第64話:激濤の決戦! 魔導軍船クラーケンと海を裂く一閃
ゼニスの港から数海里。霧に包まれた海域に、教団の切り札である巨大魔導軍船『クラーケン号』が姿を現した。
数条の触手のような魔導砲が、俺たちの乗る小型帆船を狙い定める。
「……ッ、来るぞ! 全員、衝撃に備えろ!」
(ドォォォォォォン!!)
海面が爆ぜ、凄まじい衝撃波が船体を揺らす。
普通なら一撃で海の藻屑だが、船首には白銀の光を放つマリアが立っていた。
「誠十郎様より賜ったこの命、そして昨晩頂いた聖なる出汁の力……! ――この程度の水遊び、私の舞で霧散させてみせますわッ!」
マリアは『ヴァルキリー・ステップ』を海上で発動。水面を蹴り、飛来する魔導弾を紙一重の演武で回避していく。彼女が囮となることで、俺たちは敵の死角へと潜り込むことができた。
「ユフィ、マリアの足場を固めてくれ! カスミ、砲座の術式を狂わせろ!」
「了解! ――『氷結の道』!!」
「先輩。敵の照準を海魚の方へ向けておきましたよ(クスクス)」
ユフィの魔法が海面に氷の道を作り、カスミの符術が敵の魔導回路を攪乱する。
だが、クラーケン号の本体から放たれた極大の魔力収束――「海嘯砲」が、俺たちの逃げ道を塞ぐように迫った。
【極致の悟り:鰹節と剣理】
(……クソッ、あの質量をどう斬ればいい!?)
俺は『比翼』を握りしめ、冷や汗を流す。
その時、脳裏に今朝格闘した「海神の鰹節」の感触が蘇った。
どれほど『比翼』で叩いても、一傷もつかなかったあの硬度。だが、誠十郎さんが刻んだ『誠』の文字だけは、まるで最初からそこにあったかのように滑らかに刻まれていた。
「……そうか。力で断つんじゃない。……。理の隙間に、刃を滑り込ませるんだ」
誠十郎さんが「海を裂け」と言ったのは、物理的な破壊のことじゃない。
水という、掴みどころのないものの「流れの結び目」を見極めろという意味だったんだ。
俺は足元に転がっていた、今朝の残りの「鰹節の破片」を拾い上げた。
「【木の枝(必中)】――いや、今はこれだ。……。行けッ!!」
俺が放った鰹節の欠片は、海嘯砲の巨大なエネルギー弾の「核」へと吸い込まれるように突き刺さった。一瞬、魔力の奔流が歪む。
「――二ノ型・翼断ち!!」
俺は『比翼』を振り下ろした。
それは剣を振るというより、世界の重なりを一枚剥がすような感覚。
(パァァァァァァァァンッ!!)
俺の放った剣閃が、迫りくる巨大な水の塊を真っ二つに割り、背後の魔導軍船ごと海を両断した。
【エピローグ:静寂の海】
霧が晴れ、真っ二つに割れたクラーケン号がゆっくりと沈んでいく。
波間に漂う俺たちは、しばし無言でその光景を見つめていた。
「……。……やった。……。本当に、海を裂いちまった……」
「大翔さん! 今の……今の一閃、まさに誠十郎様の面影が見えましたわ! ――ああ、これでお腹も空きましたし、帰ったらあの鰹節で最高のうどんを作りましょうッ!」
マリアが感激のあまり俺に抱きついてくる。その重さと、ユフィの「すごーい!」という歓声、そしてカスミの「……。先輩、少しだけ格好良かったですよ」という囁き。
俺は『比翼』を鞘に納め、空を見上げた。
そこには、自分たちの力で壁を一つ越えたという、確かな達成感があった。
(第64話・完)
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