第58話:幕間・風に吹かれる銀光と、一片の安堵
中立国の街道沿い、しなびた茶屋の軒先。
誠十郎は、腰の刀を傍らに置き、届いたばかりの飛龍便の書状を眺めていた。
「Bランクの一発目、無事に終えたか」
誠十郎は短く独り言ちると、手元の団子を一つ口に運んだ。
書状には、クヌギ村での教団との接触、そして大翔が放った「必中の枝」の冴えについて、ギルドの観測員からの報告が記されていた。
「大翔のやつ、ようやく『必中』の意味を履き違えずに使い始めたか。……。独自の理を組むカスミや、迷いなく身をかわすマリア、そして常に前を向くユフィ。……。意外と、悪くない組み合わせだったようだな」
誠十郎の唇が、ほんのわずかに弧を描く。
他人には決して見せない、弟子たちの自立を静かに噛み締めるような、穏やかな笑みだった。
だが、彼の視線はすぐに鋭さを取り戻す。
書状の裏面に記された『虚空の教団』の紋章。それは、かつて彼がその刀で切り伏せた、帝国の闇の残滓だった。
「俺を狙うのは勝手だが、俺の弟子にまで手を伸ばすとは。教団の連中も、よほど死に場所を探していると見える」
誠十郎は、代金の銅貨を音もなく机に置くと、立ち上がった。
その瞬間、周囲の空気が一変する。
通りすがりの冒険者たちが、本能的な恐怖で足を止めるほどの、圧倒的な「気」の奔流。
「さて。あいつらが魔港都市に着くまでに、少しだけ道を掃き清めておいてやるか」
誠十郎は、誰に聞かせるでもなくそう呟くと、一陣の風と共に姿を消した。
彼が座っていた席には、綺麗に食べ尽くされた団子の串だけが、一寸の狂いもなく並んで残されていた。
(第59話・完)
本日のリザルト
誠十郎: 弟子の成長を確認し、団子3本分だけ機嫌が良くなる。
教団: 知らぬ間に、世界最強の侍に「掃除対象」としてロックオンされる




