第41話:地下深くの真実! 囚われの聖女と、マリアの『熱狂的説法』
舞踏会の会場を半壊させ、警備兵をなぎ倒したマリアを先頭に、俺たちは宮殿の地下『氷結の牢獄』へと突き進んだ。
冷気が肌を刺す最深部。翡翠の檻の中に、その少女はいた。
「……あ、あなたたちは……? 帝国の、新しい追手……?」
蒼白い髪、糸のように細い身体。彼女こそが本物の聖女、エリザベスだった。その背中には、魔力を強制的に吸い上げるための『魔導の楔』が打ち込まれている。
「――お下がりください、ユフィさん。……。この禍々しい楔、誠十郎さんの素材で鍛えられた、この『ヴァルキリー・ドレス』の輝きで打ち砕きます!」
マリアがドレスの裾を翻し、白銀の甲冑部分を檻の格子に叩きつけた。
(ガァァァァァン!!)
物理耐性Sランクの檻が、マリアの一撃で飴細工のようにひしゃげる。
「……すごい。……物理攻撃だけで、この檻を……?」
エリザベスが目を見開く。
「……先輩。……。あざとく助け出したいところですが、楔を外すには複雑な術式解除が必要です。……。私が解析している間、マリアさん、彼女の心を落ち着かせてあげてください」
カスミが『無限符の書』を開き、楔に刻まれた古代文字に魔力を流し込む。
「――お任せください、カスミさん! ……エリザベス様。……。どうか心を安らかに。……。貴方を救う力、それはこのドレスに宿る、偉大なる御方……誠十郎さんの慈愛なのです!」
「……せい、じゅうろう……? 神様の、お名前ですか……?」
エリザベスが首を傾げる。その純真な瞳を見て、マリアの「信仰心」が完全に暴走した。
「――いいえ、神様などという生温かい存在ではありません! ……誠十郎さんは、この世の全ての『理』を体現する、孤高の剣聖! ……その背中は、どんな絶望をも切り裂き、その眼光は、迷える魂を一瞬で浄化するのです!」
マリアは、誠十郎から授かった白銀の鎧の胸元をエリザベスに押し当て、熱弁を振るう。
「……。見てください、この素材! 誠十郎さんが、自ら死闘の末に工面してくださった、愛の結晶……! ……私は、この鎧を纏うたびに、誠十郎さんの『縮地』の極意が脳内に直接流れ込み、全身が聖なる『気』で満たされるのを感じます! ……ああ、誠十郎さん……貴方の敬虔なる信徒のマリアは、今、ここに奇跡を現出させますッ!!」
「……。な、なんだかよく分からないけど……その誠十郎さんって、すっごく、すっごく、格好いい、神様みたいな人なんですね……!」
エリザベスが、マリアの迫力に圧倒されながらも、頬を赤らめて頷く。
「……。ユフィ、これどうにかしろ」
「……むにゃ。……マリアちゃん、団子より、誠十郎さんの話の方が、目がキラキラしてる……」
【リザルト:聖女救出成功】
* マリア: 誠十郎への信仰バフが限界突破。熱狂的な説法により、エリザベスを誠十郎の隠れ信徒にすることに成功。
* エリザベス(本物の聖女): 楔を解除され、誠十郎への憧れを抱き始める。
* カスミ: 楔の術式解除に集中していたため、マリアの暴走を止められず。
* 大翔: 誠十郎さんの名前が出るたびにマリアの守備力が上昇(信仰バフ)することを再確認。
「……先輩。……。楔の解除、完了しました。……。これで、彼女の魔力は安定します。……。ですが、私たちの『潜入』は、マリアさんの説法のせいで、完全にバレましたよ(クスクス)」
カスミが俺の肩に顎を乗せ、いたずらっぽく微笑む。
地下牢の入口からは、増援の警備兵の足音が、ドタドタと響いていた。
「……マリアさん、そこまでだ! エリザベスを連れて脱出するぞ!」
「――誠十郎さんの名において、承知いたしましたッ!!」
ドレスを翻し、新たな信徒を背負ったマリアを先頭に、俺たちは宮殿の深淵から、逆襲の脱出劇を開始した。
続く
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