第31話:7階層・灼熱の試練! 限界を超えるマリアの「盾」
第7階層――「焦熱の回廊」。
翡翠の結晶が赤く変色し、大気がゆらゆらと陽炎を上げている。装備の金属部分が肌を焼くほどの熱気だ。
「……っ。あ、あついよ、大翔……。魔力も熱に焼かれて、うまく練れない……」
ユフィが顔を真っ赤にし、ボロボロの杖を盾にするように抱えて荒い息をつく。
「……。先輩、私の計算でも、この熱による体力の減衰は……想定外です。……。あざとく弱音を吐く余裕も、ありません……」
カスミもまた、いつもの余裕を失い、俺の肩を支えに辛うじて立っている状態だった。
「――お下がりください。ここからは、私が皆さんの『風』になります」
マリアさんが、熱風に煽られるプラチナブロンドをバサリと翻し、最前列に立った。彼女の持つ大盾は、高熱で触れることさえ危険なはずだ。だが、彼女はそれを微塵も感じさせない涼しげな表情で構える。
「マリアさん、無理だ! その鎧じゃ熱がこもって……!」
「……。騎士の誓いに、熱さは関係ありません。……それに、リーダー。私、今は『お肉を焼く炭火』だと思えば、この熱も愛おしく感じられますから!」
マリアさんが、冗談めかしてウインクを投げる。その凛とした美しさと、少しズレた騎士道精神が、沈んでいたパーティの空気を一気に変えた。
「グオォォォッ!」
炎を纏った魔物『サラマンダー・エリート』が、火炎の息を放つ。
「――『不屈の型・剛風殺』!」
マリアさんが大盾を凄まじい速度で振り抜き、物理的な風圧で炎を真っ二つに切り裂いた。彼女の体力が、熱によるダメージを強引にねじ伏せている。
「ユフィ、マリアさんの影に入って魔力を冷やせ! カスミ、マリアさんの鎧に耐熱の術式を!」
「……うん、やってみる! ――『氷結の雫』!」
ユフィが、苦手な精密な氷魔法に挑戦する。火力に頼らず、マリアさんを癒すための「静かな魔法」。
「……。先輩、マリアさんだけに格好いいところは、させませんよ。――『耐火の陣・手書き術式』!」
カスミが俺の腕ではなく、マリアさんの背中に直接指を走らせ、防護の紋章を刻む。
「今だ、リーダー! 道は……私が開けました!」
「――応よ! 必中スキル、発動。ターゲット――炎が途切れた、奴の喉元!」
俺は『極黒の枝』を、熱風の抵抗を計算に入れて低く放った。
【リザルト:7階層突破・レベルアップ!】
■ 大翔:Lv 26 → 27
* 力:B / 器用さ:A
* 知力:E → D(熱風の計算や戦術の組み立てにより、苦手な知力が向上)
* 備考: 脳筋投擲から、環境を読み解く戦術家への一歩を踏み出す。
■ マリア:Lv 22 → 23
* 体力:A+ / 守備:B++
* 知力:F → E(敵の攻撃を「読む」ための判断力が増し、苦手な知力が向上)
* 備考: 圧倒的な耐久力に加え、戦況判断力が備わり始める。その美しさはパーティの希望。
■ ユフィ:Lv 21 → 22
* 魔力:B++ / 命中率:B
* 体力:G → F(極限の熱に耐え抜いたことで、絶望的だった体力が向上)
* 備考: ひ弱な魔法使いを卒業し、前線で耐える根性が身につき始める。
■ カスミ:Lv 21 → 22
* 知力:A / あざとさ:S
* 体力:G → F(魔力なしでの踏破により、基礎体力が向上)
* 備考: 知識だけでなく、自らの足で歩き抜くタフさを習得。
「……はぁ、はぁ。リーダー、……私、今だけは、ユフィさんやカスミさんより頼もしかったでしょうか?」
マリアさんが、熱で火照った顔を綻ばせ、俺の手をギュッと握る。騎士としての誇りと、一人の女性としての期待が入り混じった、力強い握り。
「……ああ。今日のマリアさんは、誰よりも輝いてたよ」
「……っ、ありがとうございます! ……さあ、お腹が空きました! 8階層、鏡像の魔……サッサと片付けて、お肉を食べに行きましょう!」
マリアさんの元気な声に、ユフィもカスミも苦笑いしながら立ち上がる。
次は、自分自身のコピーと戦う精神の試練。パーティの「バランス」が試される時だ。
(続く)
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