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ルナリーナの普通じゃない日常  作者: 脇野やく
第二章 覚醒の儀ともうひとりのルナ カルデア暦2378年 ミドルブルー
26/32

2-6 ルナと覚醒の儀  セヴェーラ・ロランディの初めての友達

人と人の付き合いは必ずしも出会ったその瞬間から始まる訳ではない。

ルナたちがセヴェーラという少女と本当の意味で付き合い始めるのはきっと列車ステーションではなく、このときでしょう。


それでは本編をどうぞ~

リンナたちが密談している頃、ルナたちはお茶を楽しんでいる。

「美味しい」

「ん、美味しいですね」

「あ、ホントです。美味しいです。」

「私には及ばないが貴族の家に出しても問題ないレベルですね。」

一瞬でルナ達と仲良くなったセヴェーラはなんの違和感もなく会話に溶け込んでいる。それでいいのか?一応は自家のしもべをぐちゃぐちゃにした者たちだぞ。もしかしてその慌てる小動物っぷりはただの演技なのかとツッコミたい程意外にも強かなセヴェーラだった。


そしてもう一つ意外な事に、このメイド喫茶の出した紅茶はとっても美味しい。


お客さんが来たときの調子に合わせて紅茶を勧め、淹れる時はちゃんと時間を見極め、お客さんの選んだお菓子に合わせて微調整する。個人の好みこそ知らないがそれでも年齢や性別に合わせて一般的にあっているであろう味を推測する。

言葉にすると簡単に聞こえるがそんなはずもなく、それはとても難しく、それでいて精神をすり減らすことだ、それを仕事中ずっと続けるのはどれほどのことか。

紅茶を淹れる技術だけでなく、接客や礼儀作法もでき、人を見抜く目なども良い、その上容姿も一級品。服こそ正式ではないがこの店のメイドは全員三等貴族家でメイド長をやっていてもおかしくないレベルであり、例え帝都の皇族に仕えてもいいレベルだ。それがぱっと見るだけでも八人、休みなども考えると最早皇族御用の店と互角レベル。


アンナはさっと値段を確認し、そして想像通りまさに最高級の店に相応しい値段に心の中でちょっぴり不機嫌になる。とはいえ流石はマキナ家のメイド長、ルナ以外の誰もそれに気づかなかった。だがルナも流石に礼儀作法を学んでいたので聞くことは無かった。


落ち着かせるように配慮して淹れられたハーブティーをまるで初めて飲むかのように楽しそうに飲んでいるセヴェーラ。その動きはまるで懐いたあと水をあげられて飲んでいる小動物のようだ。

そんな彼女にエルが話し掛ける。

「ハーブティーは初めて?」

「あ、はい。うちはその…お茶の種類がちょっと」

「ああ、なるほど~もしかして値段で買ってたり、してるの」

「はい…だからお茶のことはちょっと分かりません。」

成金貴族あるあるの一つとして兎に角値段でものを選ぶというのがある。どうやらロランディ家もその例に漏れずのようだ。

「あ、でもでも、ディオーナ様は美味しい緑茶を淹れれますので、緑茶でしたら少しは知っています。」

「ディオーナ様とは、もしかしてロランディ家の本妻の方?」

「はい!とっても優しくて、とっても良くしてくれました。」

「へえ~」

「でも、ディオーナ様は体が弱くて今日は来れませんでした。」そう言って心配げに顔を暗くするセヴェーラに話題を変えようと思ってか、エルは急ぎ気味で新しい質問をした。

「それならお母さんはどうしたの?」

あ~あ~地雷踏んじゃった。一気にどんよりした雰囲気になるセヴェーラを見て勘違いしたエルは慌てて謝る

「あ、ご、ごめんなさい。もしかして、あっいえあの、そnんううううう」エルの口を塞ぎ、冷静にさせようとするルナ、ナイス!

「いいえ、あの人はまだ健在です」

「?」(ううううむうううう)

「あの人なら当主のガーゴイル様とダニエルお兄様と一緒です」

「……?」(ううう~っ)「ぷは!それってどういうこと?」

「あの人はその…お兄様にとても良くしています」

「うそ!それtっ(うううう、うう、ううう~)」またエルの口を塞ぐルナ、ナイス!

「はい…多分ご想像の通りです。」

「へいき?」

「…はい、ディオーナ様が優しくしてくれますので」

(ううう~)

「(ジーーー)…ならいい」

「ぷっはあ~ひどいよルナちゃん~~じゃなくって…もしも何かあったら私達に頼ってもいいからね、セヴェーラさん」


「……ありがとう、ルナリーナさん、エルリンナさん」

「ルナでいい」「あっ私もエルでいいからね」ウルウルした目で礼を言うセヴェーラに二人は愛称でいいと言います。

「わかりました、ルナちゃん、エルちゃん。それでしたら私のこともセラとお呼びください」

「ん、よろしく、セラ」「宜しくね、セラちゃん」

「はい、宜しくお願いします。」

「あれ、どうしたの?」「大丈夫?」

「はれ?え?どうしたのかしら、私?」気づいたらセラの頬を涙が伝っている。

「これ」心配そうにハンカチを手渡すルナと自分を見つめるエルを見て、セラの涙は益々多くなる。

「ひく、しく、あはは、そういえば初めてなの、私に友達ができたのは…」

「ん」「…」

ルナとエルが優しくセラを抱き締めた。

「ううぇええええええん」

二人に優しく撫でられて、泣き始めるセラ。ここには服が汚れるなどと言う事を気にするものはいない。

いつの間にか張られた結界の中で、ティナとアンナ、そして帰ってきたリンナに見守られて、三人の友情が幕を開ける。

セラの初めて友達、となったルナとエル、きっと彼女たちの付き合いは永遠なものとなるでしょう、この場の誰もがそう予感した。

ちなみにこの店は地球のメイド喫茶の百倍の値段だよ~

一万カルテ(食料で換算すると十万円)のクッキー6枚セットがもっとも安いやつで、お茶は最低でも三万カルテ(三十万円)

それも原価率60パーセントというところが凄い。

インフレするファンタジーの物価を最初から考慮してのトップ値段、ルナ達は記念すべき出会いの店としていずれは毎日ここで飲めるようになるのだ。


それと、明日の更新はロランディ家の人物設定です。流石にロランディ家のドロドロを書くと入れるところがわからないので、メインストーリーを読むにあたって知ったほうがいいし、それだけでも想像が広がる設定のつもりです。でも読まなくともできる限りメインストーリーを理解できるように頑張るから、嫌でしたら無視して明後日のを待ってください。


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