脱獄犯(炎)
死に際の強い願いは、人を生き返らせる。
そしてその願いは、能力という形で肉体に刻まれる。
男は死刑囚だった。
放火殺人。燃える建物の中で人が死んだ。
それでも、彼にとって死は終わりではなかった。
ある日、独房で謎の男に刺殺された。
血を吐きながら、男は思った。
――もっと燃やしたかった。
次の瞬間、男は生き返っていた。
目の前で、刺した男がこちらを見下ろしている。
謎の男は、蘇った死刑囚を見て、ニヤリと笑った。
何も言わず、踵を返し、そのまま去っていった。
「……ようやく見つけた」
「アイツはどこだ。言ってから死ね」
「誰のことだ?」
「お前を生き返らせた奴だよ」
「知らねぇよ」
苛立ちに任せ、男は手を伸ばした。
掌から炎を生み出そうとした、その瞬間――
何故か、視線が横に引っ張られる。
女がいた。
次の瞬間、
鋭いハイキックが男の顔面に直撃した。
人間の力じゃない。
男の体は数メートル吹き飛び、床を転がる。
そのまま、意識が途切れた。
「……知らないなら、いいや」
蹴りを放った男――ジンは、淡々とそう言った。
「死んで……ないですよね?」
隣で少女が不安そうに覗き込む。
「殺す気で蹴ったが、流石に一撃じゃ死なないだろ。トドメを――」
「駄目ですー!!」
少女は両手を広げて叫んだ。
「ユウナ……」
「知ってるかもしれないじゃないですか。
手がかりでも。やっと見つけた一人目なんですし。
ジンさん、やめましょ?」
沈黙。
「……分かった」
「分かればいいんですよ」
少女はほっと息をついた。




