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第十三話 人手はたくさんあった方がいい


「それで、ここ数日で起きている事件の詳細についてなのですが......」


「待って待って待って、私拒否したんだけど」


拒否されたはずのミラはどこ吹く風で説明を続ける。

エルザが話を強引に遮るとさすがに止まったが、止めなければ全て話してしまうような勢いだった。


「ふふ、でも結局エルザさんたちなら聞いてくれると思って」


「......聞くだけよ。本当に無理だと思ったら速攻帰るから」


たった数日で完全にエルザの人柄を見切られてしまっていた。

どうやら人の上に立つ才能はしっかりあったようで、オルはエルザが押されている光景を見るのは初めてだった。


「オルさんもいいですか?」


「おー、俺は別に何も言ってねぇしな。ま、とりあえず話は聞くぜ」


「ありがとうございます。では続けますね」


「まず、お二人はここ最近帝国内で起きている吸血鬼の噂はご存知ですか?」


そもそも吸血鬼という生物は、伝承の中でのみ登場する存在だ。

それゆえに国内でも話が聞こえてきたときは話半分だったが、それでも多少なり噂は耳にしたことがある。

朝起きたら隣人が干からびていただの、蝙蝠のような羽が生えた化け物が人を襲っていただの。


「でも、実際に吸血鬼を見たやつは居ないんだろ?だから噂な訳だし」


「はい。国内ではまだその程度でした......が、近郊の村でついに吸血鬼が出ました」


「......それホントなの?伝説の存在が本当に居たとして、そう易々と姿を現すとは思えないんだけど」


「エルザさんの言う通りです。それにその吸血鬼というのも、ただ名乗っているだけで別に人を襲っているわけでもないのです」


「は......?じゃあ何のために出てきたの?」


「それが、目的は分からず......ですのでお二人にはその村に行ってもらって調査......場合によっては退治をしてもらいたいのです」


「......大体話は分かったわ。確かに、吸血鬼が本物だったらその辺の人間じゃ太刀打ちできないでしょうね」


「では、受けて下さるということでしょうか......!」


その言葉に立ち上がるミラをエルザは手で制止する。


「ちょっと待って」


「......?」


「私たちの職業忘れてないでしょうね。話を決めるかは報酬を聞いてからよ」


────結局。

他じゃ考えられないような安価で依頼を受けた心優しき傭兵二人は、客間を出て再びラシャークに連れられて歩いていた。


「そういえば、ラシャークさん?」


「どうかしたかい?」


ラシャークは振り向いて返事をする。それと同時に向けられる王子様のような彼女のにこやかな笑顔、これが本来の彼女の姿なのだろう。


「私たちは今どこに連れられているのかしら。この道......来た道じゃなさそうだけど?」


「えっ、そうなのか?」


「おや、城内は新人の騎士でも迷うほどなのだけれど......よくわかったね?」


「当たり前でしょ。扉出て速攻逆方向に行ったのに、まさかバレてないと思ったわけじゃないでしょうね」


「......おう、俺たちを舐めてもらっちゃ困るぜ」


ノっておいた。


「で、他にも何かあるわけ?」


「他......と言うか、別に私は最初からミラ様の頼みとも言っていないし、用事はこれで終わりとも言ってないんだよ?もしよろしければ、私個人の頼みも聞いてくれるかな?」


「......オル」


「いいぜ。内容と報酬次第だけどな」


「もちろん、あなた方の満足するだけの金額を提示して見せよう」


自信満々に言うラシャーク。

随分と資産には自信があるようだ......というより、それほどまでに急を要することなのだろう。


「それで依頼って?」


「ああ、歩きながらですまないね。簡単に言うと、私たちの騎士団にこの国を離れるまでの間でいいから、騎士たちに稽古をつけてやってくれないかい?」


「稽古ぉ?」


予想だにしていなかった内容に思わずエルザの口から素っ頓狂な声がでる。

ラシャークの口から出たのは依頼......というより、お願いに近いものだった。


「んなことか。そのくらい別にいいけど......どうして俺たちに?あんたたちがいるってのに」


「うん、そうしてあげたいのは山々なんだけど......中々書類の山が片付かなくてね。今はアンジェ一人で何とか指導してもらってるんだけど、あなたたち二人の力ならあの子らも鍛えられると思ったし......それに、君たちもあの子たちを数人相手して実力は分かってるだろう?」


「あー......まぁ確かに、あんたら隊長さんたちとはちょっと差がありすぎるな」


正直に言って、隊長とそれ以外では天と地ほどの差がある。

これは教育に問題があるのか、それとも隊長連中が外れ値すぎるのかだが......これはおそらく後者だろう。


「そんで、期間はいつまでだ?もちろん、吸血鬼調査に行ってる間に指導はできないぜ」


「そうだね......君たちは旅をしているんだったかな?」


「大体そんなところね。路銀を稼ぎながら色々な場所を巡ってるの。......もちろん、本職は傭兵だけど」


「だったら、この国を出るまでの間でどうだい?もちろん、強制という訳でも無いから好きな時に来てくれると嬉しいよ」


「りょーかいだ。後は......騎士連中がちゃんと指導を受け入れてくれるかだな。あんたからお願いされたところで本人たちが拒んだらそれは終わりなわけだし」


実際、隊長たち以外は一対一を迫ってきたり野蛮人だのと罵ってきていた。

それに洗脳や魔族のことは隊長たち以外には知らされていないらしい。ただ洗脳時の記憶は残っているらしく、彼らからしたらオルたちは夜間に忍び込んできた不審者そのものだろう。


「それについては私に作戦があるんだ。───さて、この先が修練場だよ」


どうやら話している間に着いたらしい。開けた場所でトレーニングをしている男どもの中に、一人栗色の髪を振り乱しながら大声で駆け回っている女性がいた。


「ラシャ!」


アンジェの大声で場内の騎士たちの視線が集まる。

駆け寄ってきたアンジェはラシャークに抱き着くと、後ろに居たオルたちに気づいた。


「あ!あの時の!」


「よ、数日ぶり」

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