おかえり
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
珍しく、かなり遅い帰宅だった。
終電間際の電車を降り、暗い道を歩く。鍵を袋から出す指先が少し重い。会議が長く、頭の中に残った言葉がまだ整理しきれていない。玄関の前で一度息を整えてから、ドアを開けた。
中は暗い。消灯まではしていないが、リビングの明かりだけが薄く残っている。
玄関に、まりもがいた。
「……おかえり。遅いな」
短い言葉だった。いつもの低い声なのに、玄関の空気がわずかに動いた。
「ごめん。仕事が長引いて」
「分かっている。顔に出てる」
靴を脱ぐあいだ、まりもは扉の近くで動かない。邪魔もしない。なのに、距離が近い。いつもならリビングで待っているか、すでに目を閉じている時間だ。今夜は、迎えに出ている。
「起きてたの?」
「たまたま起きただけだ」
短い答えだった。追及する隙を与えない言い方なのに、この時間に玄関まで来ている事実が、言葉ほど軽いようには見えなかった。
リビングへ入ると、白湯の入ったカップが手元に置かれた。香りも、甘いものも入っていない。それでも、持った瞬間に肩の力が少し落ちた。
「飲め。無理はするな」
「……ありがとう」
「礼はいい」
いつものぶっきらぼうなのに、今夜の声は角が少ない。無理に柔らかくしようとしているわけでもない。ただ、疲れを見越した対応の速度が、普段より早い。
「たまたま起きただけなのに」
「……何だ」
「なんか、今夜はいつもと違う」
「何がだ。気のせいだ。人間は疲れたら、余計なことを考えるからな」
そう言って、まりもは窓辺へ戻っていく。途中で一度だけ、こちらを見た。顔色を確認するような目だった。問題ないと判断したのか、再び席につく。淡い緑の長い髪が肩に流れ、濃い緑の葉模様が部屋の明かりを鈍く返した。
カップを両手で包む。熱が掌から上がってくる。隣で、まりもの気配が一定の距離を保ったままそこにある。遅く帰った夜にしては、部屋の空気が妙に安定していた。
「……なんだか、助かったよ。まりも」
「まりもって呼ぶな」
低い声が返る。
その声は、夜の部屋の底で静かに滲み、あとには沈黙だけが残った。




