まりもの怒り
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
遅くなってしまった仕事の帰り道だった。
街灯の間が、いつもより長く感じる。最近、森や山に近づくと、見えないものがこちらを見ているような気配が濃くなる。はっきりとは掴みきれない。ただ、空気の質が変わったような違和感だけが残る。
角を曲がったところで、背中が沈んだ。
重たいものが、肩から胸へ回り込む。冷たい。知ってはいけない気配だ。名前も形もない。寄ってきやすい体を狙っているモノ。見えない力に膝が折れ、アスファルトに手がつく。そのまま息が浅くなって、声は出ない。
黒く冷たい、気持ちの悪い空気。次の瞬間、温かな香りが降ってきた。
「——離せ」
守り神だった。
いつもずっと強い顔で守り続けている、でもどこか愛らしい守り神。
けれどいつものまりもの声ではなかった。低く、裂ける。抑制も、間も、ない。
視界の端に、淡い緑の長い髪が広がる。濃い緑の葉模様が、街灯を受けて強く光っている。白い気配が肩から溢れ、路面を焼くように走る。耳が立ち、尻尾が根元から膨らむ。緑の瞳は細く、相手だけを捉えている。それは守り神の顔ではなかった。どこか後悔したような顔。
「この者に触れるなと言ったはずだ。 ——消え失せろ」
言葉が棘になり、質の低い霊は形を失う。散る音もない。残ったのは、焦げた空気と、まりものの荒い呼吸だけだった。しかし力が収まらない。葉模様が脈打ち、指先から光が零れ続ける。怒りは霊へ向いているようで、根は自分にある。ここに届くのが遅れたこと、捕まるまで気づかなかったこと。その弱さを、熱のまま吐き出しているようだ。
「……まりも」
震える私の声に、まりもが顔を上げる。私の目はたぶん怯えていた。零れた力と、裂ける声に、後ずさりしているのが分かった。彼女はそこで止まり、ハッとしたように、光を握りつぶす。
「すまない……驚かせたな」
声が、いつもの低さへ戻る。棘が抜けていく。
「……怖くない。もういない。ぼくがいる」
短い言葉だった。普段より角がない。礼を封じる言い方でもない。怯えた顔を見て、先に置く言葉を変えたらしい。
「……びっくりした」
「……ああ。すまない……」
まりもはただ、謝るだけ。
「でも、まりもが守ってくれたんだよね」
「……だが守るのが遅れた。次は、気をつける」
「気にしないで。ありがとう。助かったよ」
まりもは視線を外した。弱さを認めたあとのほうが、言葉が短い。
まりもに腕を取られ、立ち上がるのを支えられる。歩く速度は優しく隣に張りついている。歩幅が合っている。
「戻ろう」
「うん」
街灯の間を、並んで抜ける。後ろを一度見るのはまりものほうだ。もういないことを確認してから、歩を進める。
玄関まで来て、鍵を回す。まりもは先に入らず、こちらと同時に上がる。
「……まりも、ありがとう」
「……まりもって呼ぶな」
低い声が返る。
その声には、守りきれなかった熱と、隣にいる確認が、まだ残っていた。




