まりもと写真
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苦手な方はご注意くださいませ。
暑さも変わらない日の午後、ソファに座っていると、まりもがこちらを見ていた。
淡い緑の長い髪が肩に流れ、濃い緑の葉模様が部屋の明かりを受けて静かに揺れている。視線の先は、私の手にあるスマートフォンだ。小さな四角い物体を操作しているのを、不思議そうに眺めている。
「……それは何をしている」
「写真、撮ってるんだ」
「写真?」
「景色とか、気になったものを残しておくやつ。ほら」
画面を見せると、まりもは「ふぅん」と行って少し顔を近づける。警戒するでもなく、ただ物珍しそうに、写っているものを一緒に見ている。隣で同じ画面を覗き込んでいる姿が、なんだか嬉しかった。
ふと、気になった。
私には猫耳も尻尾も見える。でも他の人には普通の少女に見えているはずだ。写真には、どっちの姿で写るのだろう。
「記念に一枚、どう?」
私は笑って、スマホを彼女に向けた。まりもはすぐに手で視線を遮る。
「撮るな」
「一枚だけ。変な写真にはしないから」
「約束できるのか」
「うん」
少し沈黙がある。まりもは面倒そうに息を吐き、結局、手を下ろした。
「……一度だけだ。すぐに消せよ」
「わかった」
シャッターを切る。画面に、まりもの姿が残る。猫耳も尻尾もちゃんと写っている。私にだけ見えているはずの姿が、写真の中ではっきりとそこにあった。どうやら、写真にも私が見ているのと同じように写るらしい。
まりもは画面を覗き込み、小さく眉を寄せた。
「……消せ」
「もう少しだけ見せて」
「すぐに消せと言っている」
「でも、かわいい」
「言うな」
まりもはそう言いながらも、画面から目を離さない。消すように促す声は強いのに、手を出して奪おうとはしない。結局、写真は消されないまま、スマートフォンの中に残った。
少し間を置いて、まりもは不機嫌そうに低く言った。
「ぼくの写真なんか持ってて、どうするんだ」
本気で怒っている様子ではない。ただ、撮られたことが気になって、少しだけ棘を含ませているだけだ。
「……次はないからな」
「うん」
まりもは窓の方へ視線を戻す。耳が、わずかに赤い。撮られたことが、思ったより気になっているらしい。
「今度は一緒に撮ろっか、まりも」
すぐに低い声が返ってくる。
「まりもって呼ぶな」
その声は、午後の陽だまりのように、わずかに温かく聞こえた。




