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サーヴァント・ネスト〜神の気まぐれを打ち破り、死神の鎌を折り続ける人たち  作者: 渡辺金太郎
Case-1x06 「復讐するは我にあり」~ L’homme est un roseau pensant
26/26

1x06 Part 4 / 4

(警告)

この回には著しく残酷な表現があります。十分ご注意ください。

高田馬場。


血色だけはやたら良さそうな男が、買ったばかりと思われる服と靴で、これまた買ったばかりと思われるリュックを背負っている。東西線の高田馬場駅を降り、諏訪公園の方に向かう途中、10階建てマンションの前で足を止める。

男はリュックを肩からおろし、リュックの中を確認する。


新品のサバイバルナイフと、どこから仕入れたのかわからないがマチェーテを持っている。

左手でリュックを持ち、その中に右手を突っ込んでマチェーテをケースから出して握る。マチェーテを持った手は、リュックの中に隠している。

入り口のオートロックを、よくわからない基板と7セグメントの液晶が付いた機械であっさりと解除し、一切の迷い無くエレヴェータホールに入る。

エレヴェータに乗り込み、3と書かれているボタンを押す。

エレヴェータが3階に着く。ドアが開くのももどかしく、男が速足で内廊下を303号室へ歩いていく。


女はエントランスのロックが外されたことを、秋葉原で買い込んだ特殊な機材で知るとすぐに寝室に行き、クローゼットの一番下の引き出しからシグザウエルP230を取り出す。スライドを引き、初弾をチャンバーに入れセイフティを掛ける。銃の横には8発の32口径弾が入ったマガジンが3本置いてあった。最初は1本だけを取り出したが、思いとどまり3本すべてを取り出し、ジーンズの前ポケットに突っ込む。

P230を右手に持つ。女は左利きだったので、右手で撃てるよう射撃場で徹底的に練習を重ねた。この時代は銃所持が解禁されているため、町の中にかつてのパチンコ屋を再利用した射撃場がいくつもある。


オートロックなので本来は必要無いのだが、予備のインタホンがある。男はインタホンの呼び出しボタンを押す。室内からピンポーンという音が聞こえる。


女はリビングにあるインタホンの親機を確認する。

来た。あの男だ。モニタの向こうの男はリュックから大きな刃物を取り出そうとしている。


女はそのまま玄関に歩いていく。P230を右手に持ち替え親指でセイフティを外す。

表情は、無い。



翡翠橋警察署のパトカーが赤色灯を点けサイレンを鳴らして明治通りを北上する。

胡桃くるみちゃんごめん、そっち側のベルクロ止めてくれない?」築城がボディーアーマーをパトカーの後席で着ているが、狭い。岩国が手伝っている。この時代の日本の警察は、防刃チョッキではなくボディーアーマーを制服組の警邏けいら時と交番勤務時には義務付けている。9mm弾程度なら、十分に止められる性能を持っている。

が、築城のような私服刑事の場合はその限りではない。


「…築城さん」

「ん?何?」

「意外とあるっすね」

「そ、意外とね」よくぞ言ってくれた!とばかりに即答する築城。

「あー…乳の話はやめてくれ 自慢したいのかキミら」三沢が吐き捨てるように言う。

「え…凛ちゃんもあるでしょ?」

「別にぶちょーが無いわけではないと思うんですけど…」

「あーそうかいそうかい、ありがとよ」

「しかし…間に合うっすかねえ…」岩国が気の抜けた声で話す。

「さあ…わかんないね…もうちょっと早ければね…詩織ちゃん…」三沢が続けて後席の築城に喋りかける。

「そうは言ってもねえ…証拠もないし、これも独断専行と言えるし…勝手に地域課のボディーアーマー使ってるし…」築城も困っている。

「どのマンションでしたっけ?」と岩国が言った瞬間、パンパンパン!と銃声が聞こえた。



女はドア越しに3発撃つ。なるべく下半身に当てて足を止められるように、ドアの下の部分を撃つ。あらかじめドアは調べてあり、鉄骨など弾丸をはじく可能性のあるものが入っていない部分を白いマジックで四角に囲ってあった。そこを撃ち扉を貫通させる。


ギャアー!という見苦しいまでのダミ声が聞こえる。女はドアを開ける。

そこには恐怖の表情が貼りついた男が足をガクガクさせながら立っていた。1発が腰に当たったようだ。マチェーテは落としている。

「ま…待って…」と男が懇願する。

女は全く無表情のまま続けざまに5発撃つ。主に足と膝を狙う。撃ってる途中で男は振り返って逃げようとしたが、1発が左のくるぶし、1発が左の膝を砕き、物理的に立っていることが無理になる。男が足をもつれさせて倒れる。32口径は貫通力が弱いため、それだけで動きを止めることはできても、無力化させることはできないことを女は知っていた。

だから女は慣れた手つきでマガジンを交換する。

スライドストップのロックを外すと同時に鼻で笑いながら、今度は下腹部を中心に後ろからゆっくりと8発撃つ。何発当たったかはわからないが、すくなくとも1発が男の睾丸を潰したようだ。獣のようなとてつもない絶叫を上げる。



「何階?何階ですか?」岩国が慌てている。

「3階…だけどこれオートロックよ!」三沢がパネルをガチャガチャやっているが、当然開かない。

そうやっている間にも銃声がどんどんしている。銃撃戦でもやっているように聞こえるが、銃声は一種類しかしない。

恐れていた通り、処刑だ。

「ちっ……二人とも下がって」築城がヒップホルスターからグロック26を抜き、自動ドアのガラスに向けて9mm弾10発すべてを叩き込む。ガラスが粉々に砕ける。


挿絵(By みてみん)


「凛ちゃん、一本貸して」と手を三沢に出す。マガジンを貸せというのだ。制服組はグロック19のマガジンを3本携行しているが、築城のような刑事は通常は予備のマガジンは持っていない。

グロック19とグロック26は、マガジンに共通性がある。この時代の警察の合理的な考え方である。

「まったく…むちゃするなあ…はい」三沢は腰のポーチからマガジン一本を抜き取り、築城に手渡す。

「ありがと」築城がマガジンを交換し、短いグロック26のグリップに長いグロック19用のマガジンを差し、スライドストップを外す。

粉々になった自動ドアのガラスの破片を超え、三人がエレヴェータではなく、非常階段を駆け上がっていく。



男は口から血の混じった泡を吹いてうつ伏せに倒れている。激痛に顔をこれでもかとゆがめる。

女は無言で男を足で転がして仰向けにさせる。

下からは銃声とガラスの割れる音がする。警察だろう。

女はそれは気にも止めず次のマガジンに替えて無慈悲に撃ち続ける。容易に当てられる位置まで近づき、心臓を狙わずわざと腹を狙って全弾をブチ込む。


もう男はほとんど動かなくなったが、女はすぐに最後のマガジンに替えてゆっくりと1発ずつ男の股間に撃ち込んでいく。組織がボロボロになるまで撃ち続けており、血ではなく肉片が飛び散る。


最後に男を見下ろす距離まで近づき目を狙う…が、スライドストップしている。トリガーを引いてもカチリと音がするだけだ。すべての弾を撃ち尽くした。


警察官3人が非常階段から3階に出る。

すぐに女と血の海に沈んでいる男が見えた。


「動くな!警察だ!銃を捨てろ!!」築城が叫び姿勢を低くしグロック26を構える。後ろでは三沢と岩国がバックアップで、こちらもグロック19を抜いている。


女は満足したような溜息をついて無言で両手を上げ、全弾撃ち尽くしたP230をだらりと捨てる。

血の海に32口径の薬莢が散らばっている。


築城には、女は笑っているように見えた。そして一言だけ女がつぶやく。


「はい、死刑執行」



聖路都国際病院ER 外傷4号。


【ツピ!撮影情報、メインディスプレイに表示します】


ヴン!と、今度はX線の撮影映像が出る。明らかに白い異物が10個程度見つかる。


「あー、これが破片ね…」高嶺がつぶやく。

「ルナ、素材はわかりますカ?先ほどのディープスキャン結果と照合してくださイ!」


【ツピ!アルミニウム85%、タングステン15%と推定】


「タングステンってなんで?」高嶺がヴィルクに聞く。

「…タングステンは劣化ウラン弾のような重くて弾丸の中心に使われるものの代わりとして使われまス」

「なんてものを…これロシア製のドローンだったのかな…あ、ヴィルク先生ごめんなさい」安藤が即座に謝る。

「…いいのですヨ朱音ちゃん…兵器なんてどこの国もそんなものでス」


「よし、引き続き腹膜のデブリに入る まずはこの釣り糸をなんとかしましょう ルナ、だいたいでいいから、絡んでる部分をマークしてちょうだい」


【ツピ!了解しました 表示します】


「…そんなにないから…まあ余裕ね」高嶺があっさり言う。

「でもアルミもタングステンも磁力には反応しないかラ…くっつけられませんネ…ピンセットで取るのもちょっト…」

「よし「千日手」使いましょう ルナ、シヴァームに千日手装着して展開、目的はすべての金属片の除去 ファーストからセブンスアームまですべて破片除去用のアームを装着」


【ツピ!シヴァームに千日手ユニット、7本すべてのアームに破片除去用アームを装着 10秒で展開】

ウォームアップ代わりに、高嶺がワキワキと左手の指を動かし始める。

「シミュレータでさんざん練習したからね…私の技術はここで魅せる!」少し危ない顔をして微笑む高嶺。

「私はゲームでこういうのは慣れていますガ…もし自信が無かったら私がやりますヨ?」

「おっとスヴェータ、それは心配いらないわ 私の操作は原田さんも褒めてたし!」


ITディレクターの原田のお墨付きなら大丈夫だろう…とヴィルクだけでなく安藤も考える。…本当に褒めていたのならの話だが。


千日手のマイクロアームは、空間上に架空のコンソールがあり、それを操作するというイメージだと考えていい。

外傷4号内にあるカメラ数台がモーショントラッカーとして機能し、ルナによって正確にトレースされて確実に操作者の動きを模倣する。実操作からアームが動くまでのディレイはコンマ数秒というレベルではなく、マイクロ秒のレベルでしかない。


高嶺が豪語した通り、空中で指を絶妙にワキワキと動かしつつ、7本のマイクロアームを腹膜と小腸の間に通していく。

「ルナ、タングステンは教えてね 多分重いから摘まむときに微妙にアームを強くしないと…」

【ツピ!素材の違いはすべて織り込み済みです 高嶺先生はピックアップに集中できます】

「やるぅ………今度ゲーセンのクレーンで遊ぶときにシヴァーム持って行きたいわね…」高嶺の軽口が出始める。

「一発デ出禁になりそうですネ」


「よし…全部除去したわ…安藤ちゃん、温めた生食で全部フラッシュしよう」

「了解、既に準備してた」安藤が手際よく術野すべてを洗い吸引していく。


次に釣り糸による縫合をいったんすべて外しにかかる。ここは高嶺自身がピンセットと剝離鉗子、モスキートで行う。

「あやとりは…得意だったんだけど……石灰化してるところは…千日手でやろう…」

ヴィルクは必要に応じて術野の妨げにならないように開いた皮膚を一時的に動かすためにリトラクターを動かす。

千日手で組織に張り付いたナイロン製の釣り糸を慎重にほどいていく。


「ルナ、すべて解いたので、シヴァームにディープスキャナを付けてもう一回全チェックして」


【ツピ!シヴァームにディープスキャナ装着 展開まで15秒】



高田馬場。


「私は女を拘束する 凛ちゃんは救急に連絡 胡桃ちゃんは現場保持、お願い!」やや築城が慌てている。

岩国が現場保持のために動き、応援を無線で呼ぶ。

三沢が救急を最優先で呼んでいる…が、どう見てももう助からないだろう。驚くべきことに、男はまだ動いてはいるが。


築城が銃を向けたまま女に近づく。

「膝を床に付けろ!両手は見せたままだ!」

拘束時の手順に従い築城が女に命令する。

やや乱暴に後ろを向かせ、手錠を後ろ手で掛ける。


「…あなた…なんで…ここまで」築城が女に聞いてみるが、まともな答えは期待していない。ところが女はとても冷静に築城につぶやく。

「言ったでしょう、これは裁判なの 警察は捕まえてくれたわ でも裁判官は判例が…の一辺倒でどうでもいいと思っている 私に目もくれなかったわあの裁判官 だから私が自らこの男を裁いたの それだけ」

「っ…それはわかる 私も警察官やってて裁判官はムカつく でもこういう復讐はダメだろ」

「復讐するは我にあり…って言葉、刑事さん知ってる?」

「ええ、誤解されがちだけど、復讐は神がやるから人間は何もするな、ってやつよね」

「そう……でもね、神なんかいなかったのよ だから私が神になって復讐した それだけよ」狂気を含んだ笑みを浮かべる女。

築城には理解できる部分と理解できない部分があった。築城も少し混乱している。


女の膝に、ストーカー男の血だまりが広がってくる。

「…ねえ刑事さん、これ汚いから私動いてもいい?」



外傷4号では、事態に終わりが見え始める。

ヴィルクが虫垂動脈をクランプしたのちにバイポーラで焼き切る。

さらに虫垂の基部を特定する。

「よシ、これですネ……」

「そう、そこを2-0のシルクで二重に縛る…縛るのは私がやるね」高嶺がサポートする。

高嶺が縛った虫垂の根元を、ヴィルクが15番のメスで切断する。

「切除…完了でス…Дасвидания(さようなら)」ピンセットでつまみ、安藤が差し出しているステンレスのバットに離す。

ピト…という音がする。

「お見事、ヴィルク先生」安藤がサムアップする。

「ふぅ…あとはイソジンで焼いて、巾着縫合して切断個所を盲腸に戻せば終了ね」高嶺が切断個所を目視でチェックしている。

「あとは腹膜をもう一回縫合するけど、ここもスヴェータやってみる?」

「…はイ!やりまス!」


かなり手際よくヴィルクが1号のPDSで縫合していく。

最後に皮膚を閉じるが…

「これだけの長さだからステープラーだと…「継ぎはぎ」になるわね…3-0のナイロンにしましょう どうせ入院が必要だし」

丁寧にヴィルクが皮膚を閉じていく。すべての手技が終了する。


「よし…処置終了…ルナ、時刻を記録して」


【ツピ!14時40分手技終了】


「じゃあ…上に運びましょう…私はシャワーを浴びてくるわ…どうか髪に入っていませんように…」高嶺は、血で汚れたかもしれない髪を洗いに行く。



ヴィルクが受付エリアに戻ってきてミネラルウォーターを飲み始めると、バーンとERの入り口ドアが開く。

ストーカー男が搬送されてきた。安蒜も下に降りてくる。

「くっ…間に合わんかったんかい…」


「23歳男性、全身に銃弾を浴び意識不明 血圧測定不能 心拍微弱 グラスゴースケールは…言うまでもありませんね…3です」救急隊員の山本が半ばあきらめ気味に安蒜に申し送りをする。


「…とりあえず2号に入れようや…そこでDOA宣言する」


2号にストレッチャーが入る。安蒜がざっと確認する。

「…なんやこれ…何発撃ち込まれとるんや…」百戦錬磨の安蒜ですら絶句する。

「小口径ですガ、これだけ撃たれるト…難しいですネ…」ヴィルクも確認する。

「一応モニタには繋ぎましたが…」安藤もあきらめている。


【ツピ!心拍確認不能、血圧測定不能、自発呼吸停止】

「…DOA(到着時死亡)や…ルナ、現時刻は?」


【ツピ!14時58分です】

「死亡時刻、14時58分」


髪を洗った高嶺が外傷2号に入ってくる。

「高嶺ちゃん、ワシらへの復讐者はこんななっとるで」

「な…なんですかこれ…ボロボロじゃないですか…」

「せやな…見や、会陰部分の撃たれ具合」

「……もう陰茎も睾丸も見当たりません…憎しみしか感じられない撃たれ方です…」

「内臓も撃たれ過ぎてボロボロや…」

「でモ心臓と肺は撃たれていませんネ どうしてでしょウ?」

「…復讐…やな…一発で殺さんとじわじわ苦しめたれ…って思ったんやろうな………女はどこにおるのかな?」

「あっ、既に拘束して翡翠橋署に連行していますが…逮捕されるでしょうね…」三沢が答える。

「男は刃物を持って玄関前に立ったところを撃たれたのよね…正当防衛?」一応高嶺が三沢に聞いてみる。

「過剰防衛としか取られませんね…文字通り処刑ですから…」首を振りながら三沢が答える。

「…ホンマ、どうにもならんな…復讐なんか…アホくさいわ…」安蒜はそう吐き捨てて2号を出ていく。



外科病棟。

コンドラチュークが麻酔から覚める。ヴィルクが枕元にいる。


「<…ようスヴェトラーナ…終わったのか?>」コンドラチュークがロシア語で話す。

「<!あなたロシア語出来るのね…良かったわ…私のウクライナ語は冷や汗ものだったわ>」

「<いや…そんなことないぜ?よくわかった 発音は硬かったがね>」コンドラチュークがウィンクするが…顔色はまだ術後だけに真っ青だ。

「<…今回は虫垂切除のほかに、ヘルソンで受けた傷を閉じたところを再びキレイにしました>」

「<そうか…手間かけて悪いな…保険でカバーできるから、思う存分むしり取ってくれ…>」

「<ふふっ…わかりました>」

「<こうしてさ、俺たちは…普通にロシアにいる人間とビジネスして普通にロシア語使ってたんだよ ある日突然戦争になって、それが全部メチャクチャになった…ロシアには良い奴が多いのにな…本当にいい迷惑だな…>」

「<そうね……私の知人の息子もね、高い報酬に釣られて戦地に行ったの…マリウポリにね 2日目で戦死したわ…>」

「<だから言いたいことが私にもあると言ったのか…それは気の毒だったな>」

「<………でもこれはあなたには関係がない、責任もない だからもうオレグに言うつもりはないわ>」

「<復讐は…さらなる復讐しか生まない…それを知らないから上の連中は勝手に戦争を始める>」

「<そうね…うちは上の連中がアレになったから…有耶無耶になってしまったのよね>」

「<それはもういい…俺はスヴェトラーナのことを口汚く罵ってしまった…それは謝らないといけない…すまなかった>」


挿絵(By みてみん)


「<…もういいわ、術後だからあまり喋らないで………><…戦争っていやよね>」ロシア語で気を使った後に、ポツリとヴィルクがウクライナ語でこぼす。


「<…そうだな…まっぴらさ…>」コンドラチュークもそれに返す。



安蒜にとっては大した仕事はしていない日だったが、精神的には結構疲れる一日だった。

(あーもうホンマしんどいで…しかしな、ヴェンジェンスがもう家に着いとるのや…それだけでもう今日は勝利やな!)


自宅に戻ってくる。玄関に後付けされた置き配ボックスを開けてみる。

(っはああーーーーーヴェンジェンスや!!最高やな!見いやこのリヴェンジキャノンのえげつなさ!)


完全にハイになりドアを開けて中に入り、とりあえず電気をつけて中身を確認する。


「…………………………………は?」


中にはキットは入っておらず、安物のカラープリンタで印刷されたパンフレットだけが入っていた。


「はあああああああああああ?おいコラふざけんなボケえ!」絶叫しつつサイトを確認して見ると、そこにはごく小さな文字で


(パンフと外箱のみの配送となります)


と書いてあった。


「クソボケがああ!復讐したらああああ!!どこのガキじゃこのヴォゲがああ!!!」


しかし出品者のIDはすでに削除されている。

典型的なアレにひっかかってしまった安蒜。もう怒る気力も出てこない。


「……………もうヤクルト飲んで寝よ…ホンマ復讐なんかつまらんわ……」


安蒜は離婚時に深酒がたたり体調を崩したので、安静な睡眠に入るために呑む酒の代わりに、ヤクルトを飲むしかなかった。




TUNE INTO THE NEXT

SAME SERVANT NEST

SAME ST. ROAT EMERGENCY ROOM


挿絵(By みてみん)

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