プロローグ:人間がいるギルド
この世界において、ダンジョンにエロトラップが存在するのは自然な事であり、雨が降る、風が吹く、当たり前の自然現象である。
そんな世界で生まれたひとつの命――ヒカリは柔らかく白い指先でいびつで大きな金塊を握りしめ、その柔らかい手の形が崩れないように、慎重にギルドに向かっていた。
「すみません、この金塊をお金に換えたいです…」
受付の女性はヒカリを見るなりほんの一瞬だけ目を細めた。
すぐに笑顔に戻ったけど、その前に、なにかを量るような間があった。
「ええ、わかったわ、ちょっと待っていてね」
優しい表情を向け、金塊を受け取る受付の女性。
初めての取引であったが、秘密はバレずに済みそうだ。
受付の女性がカウンターの下から大きな袋を取り出し、ジャラリと音を鳴らしながらカウンターに置く。
(早く終わって…)
指先を重ね、動かない様にする。
形が崩れてないか、確かめるように。
一枚、また一枚と数えられていく、重さの揃った金色の貨幣。
カウンターの上に並べる動き、その一つ一つが遅く感じられる。
迷いのない、一定のリズムだ。
「………ところで――」
貨幣を数え終えるか、手を止めた受付の女性の口が開く。
「これ、ダンジョンの深層の物よね?」
ヒカリは静かに答える。
「はい」
「パパの金塊です」
それ以上、受付の女性が効いてくることは無かった。
ヒカリは重たい貨幣を布の袋に入れ、肩にかける。
静かにギルドを後にすると、ようやく息を吐いた。




