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俺は帰りたいんですが。  作者: 来島ぎれ
第一章 個人召喚
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けつをまくるときの定番の台詞

俺は疲れた。疲れたぞ。

昼間は犬として街道を歩き、夜は路沿いの森で自分の飯を狩り夜に寝る。元々夜型だけにこう長引くと昼夜逆転。慣れないことは身体にも精神にも堪えんだ。

まったくもってテンションが上がらない。

元来あげあげ系でもないけどな。

今日も項垂れて歩く犬やってる。

全っ然距離が稼げねえ。


「魔狼様、魔狼様、もうすぐ次の町ラノンですよ」


素敵な微笑みで犬に話しかけるクロウ。


そうだ、こいつの所為だ。城界隈から出た事が無いから、行った事の無い土地に転移も出来ない。ただの魔法使いだ。


・・・はあぁぁ


俺は考えた。

地図の精度は不明だ。あれが正しく、この世界も地球と同じ球体惑星だとして考えよう。

海がまだ小さく描かれてた反対側から渡り陸地を移動した方が近い。近いはずだ。

地図ってのは自国中心に描くもんだろ。

中世だか近世だか異世界で航海なんぞ速度は知れてる。沈没もイヤだ。

今の俺は海も走れるが程度ってもんがある。


だから反対側の太平洋半分以下の海峡に向け進路変更したわけだ。


「魔狼様は賢いですね!」ってな。


褒められたって嬉しくもないわ。

お前が元凶だ。しっかりしてくれ。

おかげでコース真逆リスタート。

召喚されて全く知らない土地で、俺一人疾走して帰れる自信が正直無くなった。

地図を奪ってとも考えたが、俺はもう人じゃない。持ち運びはくわえても涎べっとべとで破れるだろ。無理だ。

そしてやる気無く歩幅も小さく歩いてるわけで。



ラノンの町は中規模だという。領主がいるが城はない。旅の経路の休憩にいい場所だとかで人も物流も割と賑やからしい。

出入りの多い所は色々あるわけで、門番は身分だけは確認していた。


「止まれ」


門番の声がかかる。


「俺は旅の魔術師です」


クロウは魔術師協会の身分証をみせた。

この世界の身分証は名前と職だけかいている小さな何かの金属版だ。職で色が違う上に、発行された町で偽造防止魔法がかかってるとか。魔物の俺には関係ないから適当に聞いといた。


多少名が知れているのだろう。

えっ?と顔をみる門番。


「ど、どうぞ」

「どうも」


にこりと笑み通過するクロウ。

すたすたとついて行く俺。


「待てこら犬」

「!」


尻尾をむんずり引っ張られた。思わず反射で噛み付く体勢になった。止まった所で門番は長い警棒仕様の棒で小突き始めた。

な、なんて扱いだ。お前は敵だ敵。


グルルルルヴッ


姿勢を低く身構えた。やんのかコラ。


「野良は入れねぇんだよ、しっしっ」

「あああ!うちの子に何をするんですか!」


気がついたクロウは慌てて割って入った。


「は?」

「俺の連れです」

「はい?」

「犬じゃなくて魔獣です。使い魔ですが知能が高くて怒らせるとかなり危険です」


クロウはそれは魔獣だ、と再度強調して門番に真剣な顔をして言った。

周りにいた商人や旅人だかも騒めく。


なんだその設定。聞いてないぞ。

目を細めて視線を投げた。


「ま、魔獣?え…犬じゃないんですか?は、初めて見ましたよ。もう獣魔師とかテイマーは殆どいませんし。犬じゃなくて?えーと、一応届け出と、あと、野良じゃないとわかるように首輪でもつけてください」

「首輪…ああ、そうですね。では」


なんとか通してもらい、俺を見るクロウ。

ゾワっと来た。なんだそのいやらしい目は。

喋る訳にもいかず、俺は半目で見返した。


旅するにあたって、俺自体は町に用はない。魔獣で元来野暮らしだからな。

町にはクロウの所持品不足を補いにきたのだ。俺は犬だ。あちこちと買い物に付き合う趣味も無い。


「首輪を!チョーカーを!つけて下さい!」


と何故か興奮してハァハァする気持ち悪いクロウを前脚で押しとどめ、結局木綿らしいハンカチ布をみつけて首にバンダナとして巻いて貰ったのだが。

それでも「可愛らしいですね魔狼様!」と興奮するクロウ。


あいつちょっと変態じゃないか?


連日の昼移動で疲れた俺はココで待つという意思表示で動くのをやめた。冒険者組合の厩前で久々の昼寝タイムを確保した。


くあぁぁあ・・・


もう伏せて寝る姿勢で大欠伸だ。

ああ、畜生、いい天気じゃないか。霧の森が懐かしい。

俺は町の喧噪の中うとうとし始めた。




ガラスの割れる音がした。



何だ騒々しい。響きすぎる物音に耳が後ろを向き、微睡んでいた目が半開きになった。


「テメーいい加減にしやがれ!この守銭奴が!」

「なんだと、このケチケチケチ!」

「お前なんざ、俺の腕っ節に適うわけねーだろ!大人しく取り分納得しやがれ!」

「はっ?誰が負けるかっての。やれるもんならやってみれば〜?」

「チッ、表出やがれ」

「はぁ?やるってんの?」


・・・うるさい


連日のストレスで鬱憤が貯まっていた俺は、イライラゲージが危険レベルに達した。






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