まて。俺の話を聞け!
ここは先程のオープン席。
魔王は聞いた話では子供。
成長中の新魔王。
転生記憶も不完全で、自分の発言が理解半分だと言う。話を聞くけだ。俺が出来る事なんて知れている。
儲け話だと思いクロウを嫌々乍らも連れて話を聞くという事で再来。
向かいにはラズとロズゴ、そして美女が座っていた。
俺は横のクロウにヒソヒソと耳打ちする。
「おい。話が違う。れっきとした成人じゃないか。魔王は三歳程なんだろ」
「クルフェルです」
「は?」
「あれはクルフェルです」
横に座るげんなりした顔のクロウを上目遣いで困惑して見た。
そしてそのクルフェルだという女を見ると、同様にげんなりした顔になっていた。
栗毛の先だけ巻いた胸まであるロングの髪で歳も二十代後半。白い術衣に臙脂色のウプランドを羽織っている。
薄緑の目には確かに見覚えがあるが、何だこの美人。これがクルフェルだと??パピヨンおばさんが美女?!
「魔王様が呪詛を解いたかと」
「万能か!」
思わず突っ込みを入れてしまう魔狼。
「魔王様はある意味万能です。クロウは黙ってなさい。さてループス殿宜しいですか」
「は?」
聞こえていたようでラズはクロウに冷たい視線を投げ話始めた。
「クロウとクルフェルは、私と共に町の最構築術に協力しなさい」
「めんどくさー」
「…う」
「色々遊んでる噂を聞いてますよ。研鑽を積んでいる成果を見せて欲しいものですね。魔狼に求婚したとも聞きました。あははは!」
「えっ?」
「…下僕でしょ」
魔術師二人はニヤリと笑むラズに顔も向けずガックリ項垂れた。
「魔王様が早速ループス殿を気に入ったようですので、お相手していただけますか?」
「は?」
求婚?気に入った?首を傾げる俺。
というか何もう勝手に決済されてるんだ。ビジネスは見積、発注→納品→請求書→領収書の流れくらい知っている。俺はルールは守りたい派なんだ。
流れをすっ飛ばした事に疑問と苛立を覚え、尻尾でバンバン長椅子を叩いていた。
「どういうことだ」
「ですから魔王様が既に…困りましたねえ」
ラズとロズゴの苦笑した視線を追う。
俺の隣に、くりくりの薄い茶髪の天然パーマをまとめ頭頂で結び、くりっとしたコーヒーブラウンの目に長い睫毛。これは将来かなりの美女だろうと思える子供がいた。
「……」
「?」
噂の三歳魔王様だった。
目が合った。
にかっ
満面の笑顔。
しかし中身は魔族年齢を人間換算にして多感な十代半ばらしい。
魔力も匂いも気配もない事に、魔狼はゾワリと毛が逆立った。
「犬、お前毛がいいね。気に入った。あれだ…えーと?…某クソゲーのフェ?、リル?に似てるね。フェンリル?あっ!そうだ!確か頂上戦ギルマスが速度チートだ云々線も空も繋がらなくて!あぁもう!」
突然くりくりちみっ子が、鬼の様な表情にチェンジアップをしたと思いきや暴風が吹き荒れ始めた。
ゴオオオオオッ!
「ま、魔王様!結界」
「結界〜」
「…結界」
「ダメですよ。魔王様。結界。魔族アイドルになれそうなジャニ系でしたか?これ見て落ち着いて下さい」
「月イチイベ、あ、あれ?」
「はいコレですよ、これ。魔王様」
結界四重奏で、このオープン席を囲んだ。
俺は瞬時に魔力を足先に載せ重りとしたところで、皆も同じ重力術でも使ったのか位置は変わらず、強風で髪を逆立て乍ら魔王様を見た。
ラズは人相書きとでもいうのか手のひらサイズの肖像画を数枚、バタバタと風に煽られ乍ら魔王様に差し出した。
「ぐうかわ〜!」
その一言で暴風はやみ静寂となった結界内。魔王様は肖像画に満足され、くりくりちみっ子にお戻り遊ばれたようです。にこにこと笑みを浮かべ、チラッと俺を見た。
なんだ魔族アイドルって。
「犬、名前なんだ。お前も凄い魔力だね。ちょっと遊ぼ?」
「は?」
おい。俺の話は?
「という感じです。時々何が切っ掛けでスイッチが入るか今ひとつ掴めないのです。先程の発言も私達には全く理解不能でして。魔族より長命のループス殿なら翻訳も可能ではないかと。町の構築術の間だけでいいんです。ロズゴを付けますので、お相手お願いしますね!では行きますよクロウ、クルル」
「はいはい。魔狼、頑張れよー」
「…行ってきます。はあぁ…」
「外門」
「え、ええっ?ちょ!」
ま、待て!俺の話!言い分は!
俺の話を聞けよ!!




