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俺は帰りたいんですが。  作者: 来島ぎれ
第一章 個人召喚
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へんか来たれり

「という事なんですよ」


いや端折りすぎで全然解らないです。

ワンモアプリーズ。


屋台街の隅の方のオープン席の長椅子とテーブルで魔族二人と犬一匹がヒソヒソと相談をしていた。魔狼は聞いているだけなのだが、ラズは話を続ける。


「世界は多軸だという仮説をご存知で?生まれ変わりや世界渡り、記憶が残る転生など聞いた事ありますか。此度の魔王様は異世界からの記憶が少しばかり残っている様で時々話が通じないのです。この世人だと自覚はあれど、ふとした事に執着しましてね。感情で力の制御が甘くなり、その結果のこの事態でして」


俺みたいな完全記憶保持者じゃないって事?


「金目の魔獣は数千年生きるとも言われてます。長命ゆえ、転生者とも遭遇した事があるのでは?魔王様の話を聞いて貰い、共感や理解を示せれば心の安定にもなりましょう。私達では全く理解出来ない事が少しでも解決すれば大きな成長と前進なのです」

「………」


俺って、数千年も生きる?す、数千年・・?

いや時計もなく時間感覚の乏しい獣だから今まで呑気に喰って寝て来れたわけで、既に数百年。多分あっという間だ。多分。うん。

えーと、森に引きこもりで獣を満喫してた俺が転生者です。言わないけどな。


「赤目の魔獣なら地上の町再生に魔力添えを頼もうと思ったんだが。その格上の金目の魔獣となれば話は別になるな。悪いな」


ロズゴはまた苦笑した。


そう言えば魔物にもランクがあったな。知性ある赤目の魔力が強い魔物は魔獣と呼ばれ、魔力が上級冒険者より上だとか。その更に上が俺みたいな希少古代種の金目だ。

もうここは上から目線でいこう。だってそうだろ。変に協力して貧乏くじは避けたい。


「対価次第だ」

「おお、やはり話せるのですね。失礼乍ら呼び名は何と」

「人名は黒鉄魔狼ブラロ。呼び名はループス」

「まさかのブラロですか!光栄な事で。して、ループス殿の望みとは?」


ラズは少しばかり心配そうに構えた。

魔狼は今までの自分への反応を鑑みてラズの薄い反応は新鮮だと目を細めた。伝説とか信仰とかじゃない、ただの魔物の魔狼としての対応に何か期待の様な感覚を感じた。


「帰郷。住処に帰ることだ」

「はい?」

「グルガナの霧の森に帰りたい。阿呆な魔術師の召喚で帰れず困っている。どうだ」

「召喚とはまた珍しい。契約済みですか」

「俺には効かん」


失敗は黙っといてやるぞクロウ。


「グルガナとは何処だ。ラズ殿は知ってるか」

「この大陸ではないですね」


ロズゴはラズに聞いたが、ラズも場所は知らないようだ。


「阿呆な魔術師はマーカーが無いと転移が無理だという。お前達もか」

「マーカーいりませんよ?」

「本当か!!」


俺は口をハッハッと開け興奮してテーブルに前脚を置いた。


「ええ。魔族だけ出来る術ですね。人は魔術師になれますが魔力幅が違うのでマーカーが必要です」


か、神よ…。ゴッドファーザー…。

もう俺は信者でも無いが祈りたくなった。

あれだよ。先の見えない道に光が見えた。

天を仰いでもここは地下。土の天井だがもう気分は最高じゃないか。

魔狼は耳をピンと立てて上を向いて感動に浸っていた。


「やりますか、やりませんか、ループス殿」


一気に安っぽくなる聞き方はやめてくれ。

取り敢えず詳細後の確約だ。見積もり書がほしい所だ。


「魔王の情報も聞いてない今は即答し兼る。もう一歩詳細を聞いてからだ」

「そうですか。これは失礼を」

「それに連れに話を付けてくる必要がある」


連れという言葉に首を傾げたラズ。ロズゴも同様だった。


「ああ、それで許可証が首に。誰かと来たってことか。連れはどんな奴だ?」


ロズゴは首紐を見て納得した。


「確か魔族と知り合いといっていたぞ。魔術師シャズナルとクルフェルだが」


その名を聞いた途端、ラズにロズゴ、二人は顔を見合わせて笑い始めた。


は?


「はははっ!あいつらか!」

「世の中は狭いですねえ!その魔術師はうちの家の門下生でしたよ。私の弟子です。あはは!ここに来てるんですか?」

「え。あ、来てるが、弟子か。あんた達魔族も見た目は若いが長命か?」


二人はどう見てもクロウと同年二十代にしか見えなかった。


「それでも人の倍程度ですよ。好きに姿を変えてるだけで、私は年寄りです」

「ラズ殿はジジイだが俺はこのままだ。クロウと大体同じだな」

「そうか。じゃあ取り敢えず連れてくるぞ」

「頼みますよ。町の再生手伝いしてもらおうかな。あははは!」


ラズは楽しそうに笑っていた。


ふ、ふふふ。

もう俺もつられて鼻皺をよせ牙を見せほくそ笑んだ。


その間にも魔狼の頭に光球虫が数匹乗っていたのを見てロズゴは苦笑した。




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