ふあんが募るばかりです
魔物とバレているのならと魔狼はピタと脚を止めた。
さて魔物に何の用だか。この異世界で魔物の位置は害獣で討伐対象だとクロウに聞いた。こればかりは相手の出方次第だ。
「稀なる力の強い魔物、その魔力を少し貸しませんか」
「犬で忍んでいるやも知れんが、魔族には魔力が筒抜けだ。礼は弾もう」
魔族だと。魔術師をも育てる魔族が魔物に頼み事?それにコレって魔王繋がりか?
あっ、駄目だ。ダメダメ。
これ生理的に無理。
振り向いて無い今ならセーフだ。
ここはカットして編集し直して貰おうか。
よし。何も無かった。
魔狼はまた歩き始めた。
「あっ、まさか。これをバイブス下がるというのではないか、ラズ殿」
「エモいとか、かまちょな気もしますよ、ロズゴ」
「魔王様の御言葉は理解し難いな」
「それよりも魔王様の尻拭いが先ですよ」
「そうだなラズ殿。あっ、犬もどき!」
「ああ、私が捕獲しますね」
これはマズイ。かなり危険だ。尻拭いも魔王の名も聞き覚えのある単語もヤバイ。絶対、魔王転生者確定だろ!
魔狼は聞こえた会話に耳を前後しながら自然とスタスタ早脚で歩き去っていた。
それも元俺の同世代高校生あたりじゃないのか。魔王で町を消し飛ばし、アクの強い魔術師二人が嫌がるというブラック条件満たす危険人物。ああぁ嫌だ嫌だ。恐ろしい。まさしく魔王。逃げるが勝ちだ。
シュッ
うお!
ぐんっと何かが絡まり脚が止まった。魔狼はギギギと音がしそうな動きで脚を見降ろす。
なめし紐?鞭か?
「さあ、魔物の犬、っんおぉっ!?」
魔狼の脚は魔力がのる。早々負けるはずがあるまいと、ぐいと脚に力を込めると余裕で前に進めた。魔法や魔術では無いから大丈夫だろうと進む。ひたすら進む。
「お、おおぉ、これは素晴らしい力!」
何故か感心して、ベアフットの如く引き摺られる男。立ったまま踏ん張り脚から土煙を上げて黒犬に引かれていた。魔狼はピタとまた止まる。
落ち着け俺。脚のやつ外そうか。
「魔物、話だけでも聞いていけ」
「そうですよ、聞いて損はないですよ」
「言葉わかってるだろ」
「今ならひとつの所、礼をふたつに!」
どこかの安い通販の様に聞こえたが、魔狼は魔族、魔王、魔力が強いでピンと来た。
これはもしかして魔術師より使えて住処にすぐ帰れる可能性があるのでは。打算的だろうが構わない。収支マイナスにならなければ良しだと考え、ここでやっと振り向いた。
二人とも肌は少し褐色で、目立つ特徴は耳上が尖っていた。目は赤茶で、
えーと面倒臭いな。
俺から見た感じ、服は普通にモスグリーンに金糸がキレイな軍服の様だった。見た目はどちらも髪は黒で、クロークを羽織った短髪の細マッチョがラズ、熊マッチョがロズゴだ。
「金の目とは!名のある魔獣殿ですね。これは御無礼を。私は魔王側近ラズ、足元を失礼します」
細マッチョは脚に絡まったなめし紐を外しに跪いた。俺は変な事されるまいと警戒して見た。
「俺はロズゴだ。側近という名の世話係だ」
熊マッチョは正直な様だ。
「では魔獣殿、少しばかりお時間を。近くのあちらの屋台街で。行きましょう」
「……」
細マッチョのラズは紐を解き先導し始めた。
いや待て。俺はまだウンともすんとも言ってない。これで俺がただの犬だったらどうする気なんだ。まあ魔力でバレてるのか。
横に熊マッチョが居た。見上げると苦笑して向こうへ行こうとばかりに指差し一言。既に退路を塞がれていた。
「すまんな」
ロズゴとやらはクソいい印象だ。
仕方無しにラズのいる方へ歩き始める魔狼。それに続く熊マッチョだった。




