ていさつできるもん
次の町までは海岸線の道を進む。片側は山裾の斜面と丘があり、もう片側は断崖絶壁にして直ぐ下が海だ。静かな広大な景色は久しく見てなかった。たまにはいいもんだ。
行き違う商業馬車や客馬車が目立つようになり、歩みが遅い馬車が先頭で間隔をおいて集団が出来ていた。
青毛に荷を付け乗馬するのはクロウ。銀髪がさらさらと流れ貴族然としている。
愛馬だと連れて来た栗毛にのるクルフェルは、見た目四〜五歳の獣人。パピヨンが人型で乗馬している。シュールだ。
その後ろから、首にバンダナを巻いた黒犬になった俺がついていく。
ぜんっぜん距離が稼げない。
これもあの阿呆なクロウの所為だ。
視線だけで殺気が送れるかと眼力と魔力を乗せてクロウの背を睨み続けた。
瞬間クロウの体が馬上で跳ねた。
なんか感じたか。顔だけ左右か。探してるな。もっと感じさせてやろうではないか。
さっきより魔力を鼻先に集中する気で睨んでみた。
バチッ
「っ」
・・・なんか出た。静電気の音は一瞬の極小花火だった。
こいつ普段から結界張ってんだな。
「??」
首を傾げるクロウに向かい、さっきと同じように鼻先に集中してみる。
バチッ
「…!?」
「あははっ」
「え?」
クルフェルが見てたようで笑いながら視線を俺に向けた。目を見開いてクロウは俺を見る。バレた。
「…なにするんですか」
「…わん」
「人で遊ばないで貰えます?」
「……」
見た感じ、風魔法のような小さな鎌の形の刃が飛んだ。
自分が魔法使えるなんて数百年気がつかなかったぞ。森じゃ脚の早さと脚力あれば負け無しだ。
転生して魔獣で狼で普通に獣っぽく生きて来たけど・・・魔法かあ。折角の魔力も使い道なさそうだ。俺は森に帰るだけだしな。
それに一応、ここに魔術師が二人いる。
魔術師。
自称大陸で五本指に入る術師の頂点、魔導士候補。それが二人。
・・・なんだっけ。
なんか引っかかっただけど忘れた。
その時、人の悲鳴が聞こえた。
まだ遠い位置で馬のいななきや怒声、そして悲鳴と衝撃音。
見える範囲で先頭の方の馬が落ち着きを無くしているのを確認した。
あー、どうするかな・・・。
俺はチラリと馬上のクロウとクルフェルを、前後他の人の距離を見て声をだした。
「盗賊が出たぞ」
「え?」
「見えないだろうが、あの崖の先曲がったとこだ。こっちに人が逃げて来てるだろうが」
「見れるよー」
「俺もできますよ」
まだ三キロ以上先だな。見えたら凄い。
「先見」
「遠見」
直ぐさまクロウに続きクルフェルも唱えた。
古語詠唱か。魔獣の俺も聞き取れた。なんだちゃんと魔術師じゃないか。
耳で喧噪を聴きながら、鼻で血の香りを嗅いだ。
「ああ、これは中規模ですね。怪我人も見えますが、どうしますか魔狼様」
脳裏に浮かぶのか眼前に見えてるのかわからないが、遠い目をしてクロウは問う。
「俺は知らん。犬だからな」
「まあ、そうですね…怪我人は放って置けないですね。クルフェルはどうします」
「わたし?攻撃、するー?」
「…その話し方何とかなりませんか。実年齢知ってるから腹立つんですが」
「じゅそ反動!しばらく、これー!」
「……チッ」
クロウは本当に嫌そうな顔をした。
実年齢?
そういや女って言ってたな。成人以上ってことか?
・・・おばさんが幼女。
脳内で高速テロップになって流れた。体毛がぶわあと逆立つ気がした。
鳥肌が立つってヤツ?これは深く考えない方がいいぞ。
「強奪してる、いってくるー、よっ」
「はぁ…。魔狼様はここにいますか」
「いや、行こう。適当にする」
「そうですか。いきましょう」
二人は馬を蹴り駆けだした。
周りに盗賊だ、進むな、など声を掛けながら進んで行く二人の後をついて行くのだった。




