ちょっとまた変なヤツ確定
「まあ!クルルさんお帰りなさい!夜は小さい子は危ないから心配してたのよ」
宿のおかみさんが入り口まで来た時、丁度ドアが開いた。
くあぁあ。
俺は欠伸をして玄関ロビーで寝る姿勢になった。すっかり昼夜逆転で夜は寝る。
「ああ、わんこさんも飼い主さんが心配してたわ」
ちょっと声かけてくる、と言って二階に向かった。クルルはまだ魔狼をじと目で見ていた。
「……魔獣、やろう」
魔獣野郎?お前こそ二重人格か?フンッと鼻息で返事をして目を閉じた。
飼い主って誰だ。あ、阿保のクロウか。
俺は縄張りの住処から出ることがあまり無かった。出る必要がなかったからだ。
昔一緒だった兄弟は縄張り争いになるからバラバラになるのが生態だし、魔獣としての能力は少し親兄弟に聞いたが、必要ないからか耐性なんて知らなかった。
今わかってるのは魔力による健脚と、身体の縮小。毛が撥水。属性雷と火はレジストというか、全く効いてなかった。
それに、ふ、ふふ、森の神様だと。
黒鉄魔狼の俺ってなんなんだろう。
「ああっ魔狼様、帰って来たんですね!良かったー」
阿呆の声がした。耳だけパタパタして反応しておく。
「……まろう?」
まだクルルの声がする。正体不明の魔術師の上、呪詛で獣人になるなんてクロウより阿保だ。早くどっか行って欲しい。
足音が近づいて音とにおいでクロウが前に来たのがわかる。それにこれ肉のにおい。
「夕飯買ったんで探してたんですよ。食べます?」
包み紙のガサガサする音と目の前に置いたのかニオイが凄い。そういえば食べてなかっと思い出し、のそりと黒い身体を起こす。
ふん、また熊肉かと思いつつガツガツと食べ始めた。
「あ、あ、あああ!」
クルルが驚きの表情でクロウを指差して叫んだ。うるさい。もう終いには襟を咥えてつまみ出したい。
「なんですか?」
獣人に知り合いはいないとばかりに首を捻るクロウ。
「お前、しゃずなる、何で、いる!」
小さい身体をぴょんぴょん跳ねさせては訴えるクルル。
「何でって、えーと。どなたでしょうね?」
「わたし!くるふぇる!」
「………ちっ」
名前を聞いた途端に銀華の君らしからぬ嫌悪の表情を浮かべ、すぐさま無表情になった。
「お前、したうち、ムカつく!」
「何でそんな姿なってんですか」
「くろいの、攻撃して、じゅそ。きた!」
「……呪詛?若返って良かったですね」
「お前、じゅそ、解け!」
「は?専門外です。他を当たって下さい。では」
スッと立ち上がり部屋へ戻ろうとするクロウ。食べながら知り合いと思しき二人を視線だけで伺う。
何だ。魔術師同士仲良しかと思ったぞ。
「何だと!つ、使えない、やつ!」
握り拳を作りワナワナ震え出すクルルことクルフェルの目は涙目になっていた。
・・・使えないやつに関しては同意しよう。
「う、ろっどは、どこだ!」
「は?知りません。あんな鉱石マニア山行けば何処かで逢えるでしょう。自分で解呪できないならさっさと探しに行けばいいんじゃ」
「……うう」
・・・げふ。これじゃまたうるさくて寝れないな。やっぱ外かと足をドアに向けた。
「魔狼様、外で休むんですか」
側に来てはドアを開けてくれるクロウ。気が利くじゃないか。
「……ま、ろう?魔獣…魔狼!」
あ。気付いた。
俺とクロウの目が合ったが、険しい顔してるな。困った顔になってるということは相性悪いか嫌いなのか、ヤバい魔術師って事だろう。
チラリとクルフェルをみると頬を赤らめハァハァと肩で息をして、鼻血を出していた。
・・・ヤバい魔術師だ。
俺はドアから飛び出した。




